2026年、在タイ日系企業は何に挑むのか〜アンケート結果で見えた「次の一手」

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2026年、在タイ日系企業は何に挑むのか〜アンケート結果で見えた「次の一手」

公開日 2026.02.19

THAIBIZは先月、新春特別企画として「2026年に取り組む挑戦・変革」に関する読者アンケートを実施した(有効回答数:44件)。今年の新たな取り組みとして最も多かったのは、「新商品・サービスの開発/投入」(66%)、次いで「新市場・新地域への進出」(55%)だった。その背景には、タイ市場やグローバル市場の変化、業界全体のトレンド・技術革新への対応があり、多くの企業が攻めの戦略を進めている。本記事では、アンケート結果をもとに、在タイ日系企業が直面している環境変化と課題、そして今年の取り組みの方向性を探る。

アンケート調査概要

実施時期:2026年1月
対象:在タイ日系企業/タイ現地法人で働く方、日本企業のタイ事業に関わる方
有効回答数:44件
回答者属性:経営層52%、マネジメント層25%、その他23%。業種別では製造業(自動車を含む)32%、専門サービス18%、情報・コミュニケーション技術11%など。

新商品開発と新市場開拓に活路

「2026年にタイで挑戦する新たな取り組み」(複数選択可)では、「新商品・サービスの開発/投入」が66%(29件)と最も多く、次いで「新市場・新地域への進出」が55%(24件)で続いた。

2026年にタイで挑戦する新たな取り組み

一方、「タイ市場への新規販路開拓」は0件だった。タイ市場における既存商品・サービス展開が成熟・飽和しつつあり、従来の延長線上では成長が描きにくくなっている現状から、各社は新たな付加価値を持つ商品・サービスの創出や、タイ国外を含む新市場への展開により、成長の軸そのものを見直している。

注目すべきは、こうした攻めの挑戦と並行して、「企業ブランディングの強化」32%(14件)、「組織・人材面での変革」27%(12件)、「生産・業務プロセスの改革」20%(9件)といった基盤づくりにも取り組んでいる点だ。

環境変化が主な要因―市場・競争・構造転換が同時に押し寄せる

新たな取り組みの背景として最も多かったのは、「タイ市場の変化への対応(消費者ニーズ/競合動向)」で70%(31件)を占めた。

新たな取り組みの背景として最も多かったのは、「タイ市場の変化への対応

ある企業は、「成長が鈍化しているバンコク中心部から郊外や地方マーケットへ注力をシフトし、一定の成果が見え始めた」
と回答。市場が縮小する中で、成長余地のあるセグメントを見極め直す動きが進んでいる。

次に多かったのが「グローバル市場の変化(サプライチェーン/貿易環境)」41%(18件)だった。特に目立ったのが、中国企業の動向を意識したコメントだ。

「中国の内需不況を背景に、中国プレーヤーのタイ進出が進んでいる。競争が本格化する前に自社の差別化要因を強化している」

「中国企業の進出増加に伴い、今後は日系企業の撤退や工場売却が増える可能性がある。自社にとっては新たなビジネスチャンスになりうる」

競争激化をリスクだけでなく機会と捉え、自社の立ち位置を再定義しようする姿勢がうかがえる。

また「業界全体のトレンド・技術革新への対応」は39%(17件)を占め、「経営者の感覚や経験に頼った体制から、仕組みで動く会社へ転換したい」
「生産管理システムやWebマーケティングを着実に導入していく」といった声が寄せられた。

価格競争の激化を背景に「限られた案件を奪い合う状況が続いており、差別化なしでは生き残れない」
とする回答もあり、事業構造そのものを見直す必要性を感じている企業は少なくない。

その他、「機器販売からメンテナンスを含むストック型ビジネスへの転換」「既存分野に依存しない他産業や海外市場(インド、ベトナム等)への展開」「タイローカル企業との協業による直接受注ルートの構築」など、中長期を見据えた取り組みに対するコメントも多く見られた。

在タイ日系企業を取り巻く複合的な経営課題

「タイ事業が直面している課題」では、「人件費の上昇」「新規顧客開拓の難しさ」「市場競争の激化(価格競争/シェア低下)」が、いずれも50%(22件)で最多となった。

タイ事業が直面している課題

市場成長の鈍化で競争が激化し価格競争に陥りやすい一方、人件費は上昇を続け、売上を伸ばしにくい環境下でコスト負担だけが重くなる構造が浮かび上がった。

対応策として「タイでの生産コスト上昇を受け、円安の日本からの輸入比率を高め利益率向上を図る。タイでは高付加価値品に生産を絞る」「製品コストの見える化を進め、価格競争に耐えられる体制を整える」など、事業構造そのものを見直す動きが見られる。

「売上・収益の伸び悩み」も48%(21件)と高かった。ただし、ある企業は「売上は最盛期の4分の1まで落ち込んだが、今は無理に売上を追わず、デジタル化や組織改革を優先する」とし、短期的な売上回復より将来の成長に向けた基盤づくりを重視する姿勢を示した。

人材・組織面の課題も依然として大きい。「組織マネジメント(現地化/権限委譲/世代交代など)」「人材採用・確保の困難/人材育成・定着の課題」はいずれも39%(17件)に達した。これに対し「人事評価制度の見直しによる優秀人材への待遇改善」「権限委譲や現地化を推進し、世代交代を見据えた組織体制を整備」など、人と組織に正面から向き合う取り組みが進んでいる。

さらに「企業・サービスの認知度拡大」「タイ企業とのコネクション」も36%(16件)と続いた。「AI活用やアフターサービス強化による顧客満足度向上」「ローカル企業との接点を増やし市場理解を深める」「代理店やパートナーとの連携を強化し、価格以外の判断軸で選ばれる体制を構築」といった声が挙がり、多くの企業が今年は短期成果を追う年ではなく、事業構造・組織・企業価値を組み替えるための「基盤固めの年」と位置づけていることが読み取れる。

現地化は次のフェーズへ

タイ事業の持続的な成長を左右する重要なテーマの一つが「現地化」だ。「タイ事業の『現地化』の現状」については、「進めており、順調に進んでいる」は27%(12件)にとどまった。最も多かったのは「進めているが、タイ人幹部候補の不足・育成に課題を抱えている」で41%(18件)。

タイ事業の『現地化』の現状

さらに「必要性は感じているが、適切な人材がいない」9%(4件)、「必要性は感じているが、どう進めればいいかわからない」5%(2件)といった声もあり、具体的な進め方や成功モデルを模索している企業も一定数存在する。

一方「現時点では必要性を感じていない」も9%(4件)あった。ただし、市場競争の激化、人件費の上昇、人材不足といった課題が重なる中、現地化を先送りできる余地は年々小さくなっている。多くの企業で現地化はすでに「やる・やらない」の議論を終え、「どう進めるか」「どこでつまずいているか」という次のフェーズに入っている。

在タイ日系企業の2026年の打ち手

先述の通り、多くの在タイ日系企業が新商品開発や新市場開拓といった攻めの挑戦を進める一方、2026年を将来の成長に耐えうる基盤づくりの年と位置づけている。デジタル化による可視化、価格競争からの脱却、人材育成や評価制度の見直しなど、中長期的に競争力を左右する重要な打ち手として、着手し始めている。

現地化に関する結果が象徴するように、在タイ日系企業は今、「任せたいが任せきれない」「権限を渡した後のマネジメントをどう維持するか」といった、現地化が一定段階まで進んだからこそ見えてきた次の課題に直面している。

こうした課題に向き合う企業に向けて、THAIBIZでは在タイ日本人経営者や駐在員、ビジネスパーソンを対象に、タイビジネスの基礎を学べる講座やセミナー、タイ企業とのネットワークづくりを目的とした交流会・イベントを開催している。

また、法人会員にご登録いただくと、同一法人内であれば何名でも各種有料イベントに無料(一部、特別価格)で参加いただける特典がある。チーム全体でナレッジを共有し、組織的な課題解決を進めたい企業は、ぜひ法人会員制度もご検討いただきたい。

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THAIBIZ編集部
岡部真由美

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