公開日 2024.03.19
TJRIでは2月6日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会『Open Innovation Talk』の第23回として、サイアム・セメント・グループ(SCG)で、総合パッケージング・ソリューションを提供するSCGパッケージング(SCGP)に登場いただいた。同社は現在、製品開発や生産・排水・廃棄物管理システムの改善技術などのパートナーを探しており、今回はテクノロジーとデジタルプラットフォーム担当ディレクターのスラサック・アマワット氏が事業概要や日本企業との提携の可能性などについて説明した。
目次
スラサック氏:SCGグループは、①セメント建材事業②石油化学事業「SCGケミカル(SCGC)」③総合パッケージング(包装)事業「SCGパッケージング(SCGP)」④再生エネルギー事業「SCG Cleanergy」そして、⑤パートナーと出資して事業展開している投資事業−の5つが中核事業だ。
このうちSCGCは高付加価値のプラスチックペレットなどを大量生産する川上のポリマー生産会社だ。一方、SCGPはこれらのプラスチックペレットなどを原料として包装容器などを製造する事業を行っている。
スラサック氏:SCGPは1975年設立で、製紙事業から始まり、パッケージング事業に進化した。株式時価総額は約1340億バーツ(2024年1月23日時点)で、2023年度のタイとベトナム、フィリピンにおけるパッケージング用紙と、タイとベトナムにおける紙などの「ファイバー・パッケージ」市場でマーケットシェアが1位となった。
SCGPは現在、総合パッケージング事業、パルプ・紙製品などのファイバー事業、リサイクル事業の3つが主要事業だ。顧客へのデザイン立案や、ファイバーやポリマー包装のカスタマイズなど、パッケージングの総合ソリューションを提供している。パッケージングはブランドのイメージを象徴するものなので、素材の制約があってはいけない。顧客ニーズを十分に反映できるような事業を展開していきたい。
スラサック氏:現在アジアと欧州、米国の10カ国で事業を展開しており、65の生産設備を持っている。主要事業の内容は次の通りだ。
(1)総合パッケージング事業
売上高の75%を占める。主要製品は、①ファイバーベースのパッケージング:タイとベトナム、インドネシアに合計32の工場がある②パッケージング用紙製造:タイとベトナム、インドネシア、フィリピンに合計8の工場がある③パフォーマンス・ポリマーパッケージング:タイとベトナム、ヨーロッパの3カ国で展開し、合計16の工場がある−の3つだ。M&P(Merge&Partnership)戦略で事業拡大を図っている。
(2)パルプ・紙製品などのファイバー事業
売上高の19%を占める。コピー用紙や食品用の包装容器などを製造する事業。タイとベトナム、マレーシア、イギリスに合計8工場を持っている。
(3)リサイクル事業
売上高の6%を占める。包装容器をリサイクルする新規事業。古紙を集めて工場に原料として供給する。また、トレーディングで古紙の売買も行っている。
スラサック氏:ファイバー・パッケージングではまず、古紙を回収して圧縮し、リサイクルペーパーとして製紙工場に供給する。国内で集めた古紙と、日本や米国、ヨーロッパから輸入した古紙も使用する。再生されたリサイクルペーパーは社内の32の包装工場に送るほか、外部の包装容器工場にも売っている。また、一部は中国や韓国、インド、欧州にも輸出販売も行っている。
また、ポリマー・パッケージング事業も始めた。SCGPは石油化学メーカーから原料を仕入れ、包装容器を生産し、ブランド企業に納入する。硬質タイプと軟質タイプの包装容器を生産している。将来的にリサイクル可能なものまで視野に入れて展開していきたいので、リサイクル関連の技術を探している。
スラサック氏:SCGPが求めている日本企業との提携事業は、次の5つの分野だ。
(1)生産ラインと倉庫における自動化ソリューション
デジタル「リーン」管理システムやロボットアプリケーション、自動化倉庫のためのナビゲーションと識別技術などを求めている。
製造工程の無駄をなくす「LEAN(リーン)生産方式」を導入し、プロセスの改善を図る。コストと成果に関する検査を実施し、有効性を最大化する。特に川下の変換工程ではまだ労働集約的な作業が残っている。さらに、異なるメーカーや異なる世代の機械を統合的に利用するために、大規模なカスタマイズが必要だ。また、異なった事業を行う倉庫間のデータをよりタイムリーに取得することで倉庫の運用効率を最適化したい。
(2)デジタルソリューションとデータ分析
デジタル技術を活用し、コスト削減が可能な箇所の特定、リソースの効率的配分、製品品質の向上、正確な生産予測や戦略的プランニングなど、より良い意思決定のための「データ駆動型インサイト(Data-driven Insights)」を提供したい。
現在、製造工場が60以上あり、生産計画やマーケティング計画など、さまざまな計画は個々の工場で判断して実施しているため、一元化したい。興味を持っているデジタルソリューションの例としては、競争力強化のための営業・マーケティング用の生成AIや原材料価格予測などだ。
(3)廃棄物管理技術
効率性向上と操業コスト削減のためのポリマー包装事業におけるスマートな廃棄物管理技術と排水処理技術を求める。さらに、特定のリサイクル技術、特に「ポリ・アル(連続式熱分解装置)」のリサイクル技術も探求していきたい。
(4)持続可能でスマートなポリマーからパッケージを製造する技術
日本企業は包装の分野で新しい技術やイノベーション、ソリューションをたくさん持っているので、タイでの市場開拓には多くのチャンスがある。
リサイクル可能な代替素材やコーティングのイノベーション、天然繊維添加剤など、持続可能なスマート技術に興味がある。特に現時点では、人手が必要となる廃棄物回収・分別技術を優先する。共同開発、技術提携、JV投資、幅広い協業を歓迎したい。
(5)ヘルス&ウェルネス事業
メディカル・ラボウエア・テクノロジー、ビタミン・サプリメント、代替タンパク質など、さまざまな商品を開発している。例としては、「almind」というブランドで手指消毒スプレーや日焼け止めローションなどの商品を販売している。さらに、プロバイオティクスや免疫力を高めるサプリメントなどを商品化し「Holis」というブランドで販売している。また、ヨーロッパの医療関係のポリマー容器を生産する会社を買収しており、今後アジア地域にも展開していきたい。
TJRI編集部
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