カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.06.13
タイ中央銀行が発表した2015年3月の重要な経済指標によると、多くの経済部門には、脆弱性が残っています。個人消費では引き続き慎重な姿勢が見られるほか、民間の生産と投資は減速しました。しかしながら、政府支出は改善し始めたと見られます。また、観光業は、成長が持続し、国内経済をけん引しています。
タイの景気回復の兆しは依然として不透明
・政府支出と観光業の改善は3月のタイ経済にプラス影響を与えたものの、2015年3月の他の主要経済指標は前年同月と比べ減少しました。特に、民間消費は明らかに減少しました。2015年第1四半期通期の輸出が下落したことが、民間の収入および雇用に悪影響を与えたためです。
また、国内外の購買力も鈍化したため、一部の企業は生産・投資計画の実施を遅らせました。
・2015年第1四半期のタイ経済成長率は、前年同期比3.0%増となり、予想より下回りました。その主な理由は、輸出と他の国内経済指標が予想より弱くなったことです。
今後の景気回復は、これまで以上に政府支出に依存することが考えられます。
・全体的な輸出は減少しましたが、CLM諸国との貿易額は引続き増加していたことが示されました。今後のCLM諸国との貿易も引続き拡大する傾向です。貿易額の拡大はCLM諸国の経済成長に牽引されており、物品の構成を見ると国境を越えたサプライチェーンの発展状況が反映されています。
3月の民間消費は前年同月比で1.9%下落しました。農産物の生産減と価格下落による農家収入の減少や、家計債務負担の高水準、輸出関連企業での雇用縮小などが背景にあります。燃料を除く非耐久財への消費は縮小し、耐久財の消費も低迷を続けました。
一方、民間投資は2月の前年同月比0.5%増から同0.5%減となり、プラス成長からややマイナス成長に転じました。国内外の経済の回復が遅れていることで、過剰設備の状況が発生しています。また、機械・設備への投資が減少したことに加え、不動産分野の明確な回復を待つ動きが広まったことで、建設投資も横ばいとなりました。
3月の輸出は、前年同月比4.3%減の187億6600万米ドルとなり、前月から引き続き収縮しました。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の景気減速に加え、欧州諸国および日本の経済回復の勢いが依然として弱まっています。また、石油、プラスチック、ゴム製品などの価格が低い水準で推移したことも一因となりました。
商務省が発表した2015年4月の貿易統計によると、タイの輸出額(約169億40万米ドル)は前年同月と比べ、3月の4.4%減から1.7%減になり、4ヵ月連続でマイナス成長となっています。主要輸出先国の経済回復が予想より遅れたことや、石油や天然ゴムなど農産物の価格が低迷していることなどが、タイの輸出低迷につながっています。
品目別に見ると、農産物・加工品では、天然ゴムが前年同月比25.9%減、コメが同2.9%減となりました。主要工業製品では、自動車・部品が同9.0%増、コンピュータ・部品が2.3%増と、電子回路が同20.0%増となりました。日・欧・中向けの輸出は引き続きマイナス成長となっています。しかしながら、米国向けの輸出は同6.3%増となり、9ヵ月連続で増加しました。
工業生産に関しては、2月の前年同月比3.6%増から同1.8%減となり、プラス成長からマイナス成長に転じました。国内外の需要が低下した結果、企業は生産と投資を減らしています。生産品目別では、ハードディスク駆動装置(HDD)が前年同月比12.9%の下落となったのをはじめ、繊維、セメント・建材、ゴム・プラスチック製品などの生産が落ち込みました。
3月にタイを訪れた外国人観光客は253万3000人で、前年同月と比べ25.5%増加し、6ヵ月連続でプラス成長となりました。中国とマレーシアからの観光客の増加により、順調に拡大しています。前月からやや伸びが鈍化したものの、2桁のプラス成長を維持しました。
2015年第1四半期のタイ経済成長率は、前年同期比3.0%増となり、予想より下回りました。その主な理由は、輸出と他の国内経済指標が予想より弱くなったことです。今後の景気回復は、これまで以上に政府支出に依存することが考えられます。
商務省が発表した2015年4月のヘッドライン・インフレ率は、2015年3月の前年同月比0.57%減から同1.04%減となり、4ヵ月連続で減少し、過去5年8ヵ月で最も低い水準となりました。その主な原因は、依然として原油価格の下落です。しかしながら、石油価格は下落したものの、干ばつの影響を受けた野菜・果物・肉の価格が上昇しました。
品目別にみると、食品・飲料は全体で前年同月比0.6%増となり、5ヵ月連続で鈍化しました。卵・乳製品がマイナス2.02%となったほか、肉・魚もマイナス0.55%と前年同月を下回りました。非食品では運輸・通信のうち石油燃料がマイナス22.69%となりました。
一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比1.02%増となり前月の同1.31%増を下回りました。バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年4月末には1ドル=32.95バーツの終値をつけ、2015年3月末の終値1ドル=32.54バーツから軟化する傾向を見せました。さらに、タイ中央銀行が4月29日、政策金利(翌日物レポ金利)を0.25%引き下げ、年1.50%にすると決定したことにより、5月第2週の週初のタイバーツは1ドル=33.70バーツとなり、5年ぶりの安値圏でした。一方で、バーツの対円為替レートも同様に軟化傾向にあり、2015年5月12日に100円=28.13バーツまで軟化しました。
THAIBIZ編集部
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