ArayZ No.97 2020年1月発行「善い」経営とは?経営の「美学」とは?
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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2020.01.01
アジアで本格的に事業展開するためには、製品、サービスだけでなく、組織においても現地化は避けられません。そこで必要不可欠なのが、現地のエグゼクティブ人材です。前回はエグゼクティブ人材へのアプローチ方法と留意点についてお話ししました。今回は視点を変え、東南アジアで彼らが日系企業に何を求めているのか、どんな点に魅力を感じて日系企業へ転職するのかについて、掘り下げていきたいと思います。
とても残念なことに、海外では日系企業の人気はあまり高くありません。背景には、日系企業特有のマネジメントスタイルと、報酬制度が主な理由として挙げられます。日本国内の日系企業で働いていると、企業文化やマネジメントスタイルが独特だと客観的に気付くことは難しいですが、海外ではその特殊性をしっかりと理解し、現地の文化とうまく適合させ、それぞれの良さを活かしていく必要があります。
まずは東南アジア、特にタイやベトナム、インドなど日系企業の企業文化が色濃くマネジメントされている国に着目してみましょう。多くの日系企業の組織は現地化がまだまだ実現していません。本社から派遣された日本人駐在員が組織を運営し、多くは3年~5年の任期で入れ替わります。
各国のエグゼクティブ人材の目に、日系企業の組織はどう見えているのでしょうか。起業精神も強い彼らは、将来的に会社のトップマネジメントを目指し、キャリアを積み結果を出そうと日々切磋琢磨しています。その企業が現地化をし、各国市場でシェアを伸ばそうというビジョンを掲げていても、実際の組織が日本人駐在員で固められていれば説得力がありません。どんなに頑張って結果を出しても、社長にはなれないと思うからです。
もちろん、タイやベトナム、インドなどはまだシンガポールほど人材が育っていない、本社が日本語でのコミュニケーションを必要としているなど、様々な課題があるのが実情です。だからこそ、本格的な現地化に向けてエグゼクティブ人材を採用するためには、何年後にはどんな組織にしていきたいのか、そこでどのような役割を担って、どんな結果を出してもらいたいのか、という具体的なビジョンをしっかりと示すことが必要です。
実例として、消費者向けの事業をタイで数十年展開されている日系企業についてお話しします。その社長は、タイ人市場でビジネスをしているのだから、ローカルのマネジメントを採用して会社を変えていかなければと、タイ人のエグゼクティブ人材を競合他社からヘッドハンティングすることに決めました。そして、面接の場で候補者であるエグゼクティブ人材に対して、いつまでには社長の座を譲りたいのか、なぜ自分の後任として適任なのかというビジョンと理由をしっかりと伝えました。
条件面では現職の方が良いと考えていた候補者も、最後は社長の熱意と会社の中での大きなチャレンジ、可能性に賭けることに決めました。そして入社後も存在感を示し、活躍されています。限られた任期の中で本社を巻き込み、現地化を実現するのは大変難しいことです。しかし、会社のトップがビジョンを伝えることで優秀なエグゼクティブ人材を採用し、熱意を持って組織を変えていくことは大きな一歩になります。
下川ゆう yu shimokawa
en world Recruitment (Thailand) Co., Ltd.
人材紹介コンサルタント
立教大学卒業後、大手人材紹介会社の東京本社へ入社。2009年にタイ支社へ転籍し、2014年にen worldタイの日系チームを立ち上げ、10年間、日系企業へのタイ人の人材紹介に従事。顧客企業の組織発展を採用の面から支援してきた。現在は退職し、スペインのビジネススクールで人事修士を学んでいる。
Email:[email protected]
URL:www.enworld.com/th
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THAIBIZ編集部
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