ArayZ No.130 2022年10月発行始める前に確認したい M&Aタイ最前線
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カテゴリー: ビジネス・経済
連載: SBCS - タイ経済概況
公開日 2022.10.10
日本入国の際に求められていたPCR検査が一定の条件下ではあるが9月7日から撤廃された。タイ国内の行動制限はほとんどなくなっているため、タイにいる日本人としては、いよいよ新型コロナウイルス(以下コロナ)後に向かって動き始めた感がある。
タイの経済活動の正常化に伴い、2021年に2%前後に達していたタイの失業率が徐々に低下し、22年第2四半期には1.37%となった。コロナ前は1.0%前後だったので、もう少しで元に戻りそうだ。また、タイで働くサラリーマンを対象とする社会保険法33条に基づく社会保険加入者数は、コロナ前の1,169万人から一時1,100万人を切るまでに減少していたが、22年6月には1,131万人まで回復してきた。特に、21年はほぼ一貫して減少したホテル・飲食業の就業者数が22年に入ってから増加に転じ、6月には最も雇用者数を増やした業界となった。これらの数字からタイの経済状況が改善してきたことが窺える。
一方で、レストランに行くとオーダーを取りに来てくれる従業員がいなかったり、ホテルではチェックインのために長蛇の列という状況に遭遇する。これらの業種は不特定多数へサービスを提供することから、感染リスクが比較的高いという理由でタイ人が就業を敬遠している可能性はある。それに加えてミャンマーやカンボジア、ラオスからの出稼ぎ労働者がコロナ禍で帰国した後、まだ元に戻っていないことも大きい。彼らは建設現場や工場の他に、レストラン等のサービス業でも働いていた。コロナ前に270万人を超えていた出稼ぎ労働者は、一時期200万人近くまで落ち込んだ後、22年8月時点で217万人まで回復している。しかし、それでも2割程度減った状態だ。
そんな折、10月からは法定最低賃金が平均で5〜8%程度引上げられる。通常は1月改訂だが、インフレ率が前年同月比で7%を超える急激な物価高騰を受け、10月に改訂・施行となった。今後、コロナ規制の緩和に呼応して外国人観光客が戻ってくることは予想できるが、質の高いホスピタリティを提供するためにも、タイ人の労働参加意欲の上昇に繋がればいいと思う。
このように拡大傾向にあるタイの雇用状況において、コロナ前に戻る兆しがまだ見えない数字がある。日本人のワークパーミット取得者数だ。20年2月に32,828人だったのがコロナ禍で減少し、22年8月までの1年間は27,000人程度で推移。そして、まだ上昇傾向になっていない。
2年以上にわたってオンラインで業務を行ってみた結果、コロナ後もオンラインで対応可能と判断し、駐在員を減らした会社が多数あることが原因だろう。在タイ日本人という視点から見ると仲間が減ることは残念なので、9月の日本側の入国規制の緩和が赴任者の増加に繋がることを祈念している。
SBCS Co., Ltd.
Manager, Business Promotion Division
長谷場 純一郎
奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、10年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。12年から18年までジェトロ・バンコク勤務。19年5月より現職。
SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。
タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の8月15日の発表によると、2022年第2四半期の経済成長率は前年同期比+2.5%だった。この成長率は東南アジアの主要6ヵ国の中で最も低く、観光客の大幅増加に伴うサービス業の拡大が見られたが、工業部門の縮小やインフレによる影響が大きかったと示唆している。
タイ投資委員会(BOI)の8月17日の発表によると、2022年上半期の投資申請は、件数が前年同期比+4%の784件、金額が同▲42%の2,197.1億バーツだった。そのうち、ターゲット産業への申請が70%を占め、件数と金額はそれぞれ同▲10%の358件、同▲23%の1,534.8億バーツだった。
ターゲット産業で顕著な成長を見せたのが自動車部門とデジタル部門で、それぞれ同+212%の424.1億バーツと同+202%の14.5億バーツだった。全申請のうち外国直接投資(FDI)は1,301億バーツ(395件)、国別では台湾が385.8億バーツ(19件)で首位、日本が169.3億バーツ(97件)、中国が154.8億バーツ(45件)、米国112.9億バーツ(17件)、シンガポール86.6億バーツ(77件)、スイス45.5億バーツ(5件)が続いた。また、新たな恩典として高精度の機械、設備、部品の製造・修理(8年間の法人税免除)、3D造形(同5年間)および微細技術を使用した電子部品の製造(同8年間)を追加した。
タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が8月15日に発表した速報値によれば、2022年第2四半期の経済成長率は前年同期比+2.5%だった(部門別では農業が前年同期比+4.4%、非農業が+2.3%。サービス業が+4.6%、鉱業が▲22.4%)。この成長率は東南アジアの主要6ヵ国の中では最も低く、NESDCによると観光客の大幅増加に伴うサービス業の拡大が見られたが、工業部門の縮小や、インフレによる影響が大きかったと示唆。同時に22年通年の成長率予測については、5月発表の+2.5%~+3.5%から+2.7~+3.2%とレンジを狭め修正した。
一方、タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB)は8月4日、22年の経済成長率予測を+2.75~+3.5%と発表し、NESDCは同月26日、22年第2四半期の失業率を1.37%と発表した。新型コロナウイルス流行以降で最も改善した。
盤谷日本人商工会議所(JCC)は9月1日、2022年上期日系企業景気動向調査の結果を発表した。21年5月10日~6月8日にかけて会員企業1,627社を対象に調査を行い、548社(回答率33.7%)から回答を得た。同調査によれば、22年上期の業況感(DI値:業況が「上向いた」と回答した数から「悪化した」と回答した数を差し引いた値)は21年下期と22年上期が26、同年下期見通しは29だった。新型コロナ期から回復にあるものの、半導体不足やコスト上昇がDI値の下押し要因となった。同年下期は、それら課題の解消などの期待からやや上向くと見込まれている。
タイ空港公社(AOT)が発表した2022年6月の国内主要6空港の利用者数は、前年同月比+590%の477万2,000人だった。前月の460万8,000人からは+3.6%だった。入国手続きの簡素化や国内の行動制限が緩和されたことで、国際線・国内線共に回復が続いている。 国際線の利用者は前年同月比+2,130%の179万人。国内線は+390%の298万3,000人。空港別では、首都バンコク近郊のスワンナプーム国際空港が+770%の225万人。バンコクのドンムアン国際空港は+410%の119万人。2022年上半期累計の利用者数は前年同期比+170%の2,240万2,000人となった。
タイ憲法裁判所は8月24日、プラユット首相の職務一時停止を命令した。首相代行はプラウィット副首相が務める。2017年制定の現行憲法では首相の任期は8年だが、プラユット氏の任期にはいくつかの解釈があり、 ①クーデター後に首相に就任した14年8月25日から ②現行憲法公布の17年4月から ③総選挙後に再任の19年6月からと意見が分かれる。今回は野党が主張する①の22年8月24日で任期満了との訴えが受理された形となった。
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Executive Vice President and Advisor
長谷場 純一郎 氏
奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。
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SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。
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