中国の「ドリアン外交」とは、今なぜBRICS加盟か

中国の「ドリアン外交」とは、今なぜBRICS加盟か

公開日 2024.06.24

英エコノミスト誌6月15日号は「中国人はドリアンに夢中」というタイトルの記事を掲載している。タイでも中国人のドリアン好きは有名だが、この記事はタイ同様にドリアン生産大国のマレーシア・クアラルンプール発だ。同記事は「エリック・チャン氏はドリアンを長年、東南アジア人向けに売ってきた。今、彼はより大きな市場を見ている。彼が栽培しているムサンキング(猫山王)品種は中国の消費者に愛されている」と話を始める。そして中国人は生(鮮)ドリアンを求めているが、マレーシア政府は現在、中国向け輸出は冷凍ドリアンしか認めていないと説明。一方、中国の生ドリアンの輸入額は2019年が16億ドル、2022年が40億ドル、そして2023年には67億ドルと急増し続けていると報告した。

そして中国でのドリアン需要が増えている理由は2つあり、1つは中国で中産階級が増え、安くはないドリアンを買えることができる人が増えているだめだとする。ドリアンは現在、中国向け供給の大半を占めるタイ産の1個あたり平均価格は150人民元(20ドル)で、マレーシアのムサンキング種は1個500元で、より高価なものだという。チャン氏によると、ドリアンは高級ワインのようなステータスシンボルとなり、特にムサンキング種は「ドリアンのエルメス」と呼ばれ、しばしば誕生日や結婚式のギフトにも選ばれるという。そしてもう1つの理由は最近、中国が市場開放したことだ。2022年までは生ドリアンの輸入はタイ産のみ認められ、他の国からは冷凍ドリアンのみ輸入できたが、中国が植物検疫で合意し、ベトナム産とフィリピン産の輸入を認めるなど市場を開放したことで、マレーシアも次は自国だと期待しているという。

一方で、一部関係筋は中国には「ドリアン外交」で東南アジアとの関係を強化するという戦略があるとの見方を示している。中国は「一帯一路」戦略で東南アジアのインフラ整備に資金提供しているが、ドリアンはその入口になるという。かつて中国がフィリピン産バナナ輸入を制限した時には南シナ海での領海紛争があったことから、ベトナムでは中国がドリアン貿易を制裁の道具に使うという同様の事態を懸念する向きもあるという。ちなみに中国でも海南省でドリアン栽培が始まっており、今年の生産量は200トンになる見込みという。中国の昨年のドリアン輸入量は140万トンだった。外交問題まで言及され、多くの国の関心を集める果物は、現代ではドリアン以外にもあるのだろうか。


タイ、そしてマレーシアが新興国グループ「BRICS」への加盟を表明した。タイのタイのセター政権は5月28日の閣議で、BRICSへの加盟申請を承認したが、6月21日付バンコク・ポスト(9面)は「タイのBRICS加盟は間違った方向だ」というオピニオン記事を掲載している。2009年にインド、ロシア、ブラジル、中国でスタートし、2011年に南アフリカが加わってBRICSと呼ばれるようになり、その後、エジプト、サウジアラビアなども参加し10カ国となった。しかし発足当初こそ注目を集めたものの、BRICSの地政学的意義とは何か、今回、東南アジアの2カ国がなぜ参加意向を表明したのか分かりにくい。同記事は、タイがBRICSへの加盟申請した理由は主に2つあり、1つは現政権の政策上の成果がほとんどない中で、すぐにアピールできる政策だからだという。2つ目は政権与党であるタイ貢献党の実質リーダーであるタクシン元首相とロシアのプーチン大統領との個人的関係をめぐる思惑だと指摘。その上で、「タイのBRICS参加意向は間違った方向であり、タイの国際標準と信頼性への責任が問われることになる」と批判している。

そして、BRICSが発足した2009年当時は、西欧民主国家が金融危機でどん底期となる一方、新興国が台頭してきた時期でもあり、BRICSはこれら5つの主要新興国の連携を促進するると考えられていたと指摘。しかしBRICSはその後、「西欧」と「その他地域」との紛争を激化させ、新興国の「地理経済」的なプラットフォームから地政学的構造に変容してきたとの認識を示している。そして発足から15年が経ち、新興国市場の成長見通しはもはや輝かしいものではなくなり、一方で先進国は10年におよぶ技術革新に基づく経済ダイナミズムを回復したと分析。ロシアと中国というBRICSの中核国と欧米との紛争が激化、地政学的問題がより深刻になってきたと強調した。


6月18日付バンコク・ポスト(ビジネス3面)によると、タイ工業連盟(FTI)のイサレス副会長は、地場の自動車部品メーカーに対し、電気自動車(EV)シフトに伴う技術の途絶に対応するとともに、今後成長が期待される医療機器生産への移行を急ぐよう呼びかけた。同副会長は、内燃機関(ICE)車に慣れている自動車部品メーカーはEV技術への対応に苦戦しており、彼らの多くの製品がもはやEVメーカーからは求められていないと指摘。その上で、「われわれはこの変化について政府と協議する予定で、医療分野で新たな大手メーカーが創出されることを期待している」と述べた。

THAIBIZ編集部

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