外資規制の対象ではない事業「仲介・代理」

THAIBIZ No.148 2024年4月発行

THAIBIZ No.148 2024年4月発行タイで成功する日系企業デンソーのWin-Winな協創戦略

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外資規制の対象ではない事業「仲介・代理」

公開日 2024.04.10

タイ進出を新たに検討する企業だけでなく、進出済みの企業にとっても、タイでのビジネスにおけるもっとも重要なルールの一つが外資規制です。タイで自社が実施する事業は何か、その事業は外資規制をクリアできるのか、それによってタイ子会社の資本戦略や組織構造も大きく変わってきます。 本連載では、外資規制の基礎から応用までをご説明します。

コミッションビジネスの「仲介・代理」

外資企業が実施できる事業の類型の2つ目である「条件付きで実施可能な事業」とは、規制事業であることがリストに明記されているものの、同リストに例外規定が設けられ、一定の条件を満たせば外資企業であっても実施可能とされている事業です。代表例は、前回まで解説した「販売(小売・卸売)」ですが、他に「仲介・代理」もこの類型に該当します。

「販売」における「小売」と「卸売」と同様に、「仲介(タイ語で「ナーイナー」)」と「代理(タイ語で「トゥアテーン」)」についても、法律上で明確な定義がされているものではありません。しかし「小売」と「卸売」が別事業として規定され、解釈されているのに対して、「仲介」と「代理」は、単語は別に分けているものの、事業内容は同じものと理解されているようです。規制事業リストでも同じ項目(リスト3(11))に分類されていること、商務省の判断事例でもほとんどのケースで併記されていることから、解釈上の違いは感じられません。

「仲介・代理」は原則として外資規制に抵触するのに対して、4つの例外規定いずれかに該当するのであれば外資規制の対象外となり、外資企業であっても実施可能とされます。例外の1つ目は、外資規制とは別の(かつ往々にして、より厳しい)規制が適用されていることを意味し、例外の4つ目は、今のところ該当がありませんので、検討余地があるのは2つ目と3つ目となります。これらを簡略化して言えば、「同一グループ内」であるか、または「資本金1億バーツ以上で、国際事業の形態をもつ」ものであれば、外資企業であっても「仲介・代理」を実施できる可能性がある、ということになります。

いずれにしても「仲介・代理」はコミッションフィー(手数料)を徴収するビジネスである点が、「小売」や「卸売」とは根本的に異なる点です。同じ相手と同じ商品を取引したとしても、ビジネスの形態によっては「小売」「卸売」だけでなく、「仲介・代理」に該当する可能性も出てくる、ということになります。

また、「輸出」との関係では、以前も取り上げた「三国間貿易(仲介貿易)」の事例のように、取引金額の全てを商品代金として行えば、外資規制対象外の「輸出」となり、外資企業も資本金200万バーツで実施できます。しかし「コミッションフィー」として徴収する「仲介・代理」になると、外資企業は資本金1億バーツ以上でなければ実施できない、という整理になります。

ただし、この例外規定で、具体的にどこまでの事業が認められるか、という点について商務省の判断事例は乏しく、また法律上の文章も必ずしも明確とは言えない部分もあります。例えば最近の解釈事例(2021年7月No.1)では、「仲介には、商品の販売促進サービスを含まない。これ(商品の販売促進サービス)は『その他サービス業』に該当し、外資規制に抵触する」としています。たとえ資本金1億バーツにより国際事業における「仲介・代理」が行える企業であっても、その事業内容に「販売促進」を含むとみなされると、別途の許認可が必要、との判断です。現時点では、「仲介・代理」はあくまで事務的な支援に限定されるとの解釈がされているのかもしれません。この例外規定を基とする「仲介・代理」の実施には、判断事例が蓄積されるまで、もう少し慎重になっても良さそうです。

「条件付きで実施可能な事業」のまとめ

タイにおいて「外資企業」が実施可能な事業
出所:タイ商務省資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

ここまでの復習として「条件付きで実施可能な事業」の整理をします。この類型に該当する主な事業は「小売」「卸売」と「仲介・代理」です。規制事業であることがリストに明記されているものの、一定の条件(主に最低資本金1億バーツ)を満たせば外資企業であっても実施可能であるとされる事業です。

ここでの留意点の1つ目は、法律で規定された条件が「最低資本金1億バーツ」といっても、1億バーツの資本金があれば必ずしも条件を満たすわけではない、という点です。1億バーツの資本金で「小売」または「卸売」ができるのは、それ以外の事業を全く行っていない企業に限られます。実際には、「小売」と「卸売」が併存したり、「製造」がメインでありながら一部「卸売」をしていたりと、商務省から見て複数事業を同時に実施しているケースは多いと考えられます。そうした場合、必要となる最低資本金は、原則として事業ごとに積み重なっていきますので、最低資本金は1億バーツでは不足します。特に、投資委員会(BOI)の認可を得て行っている製造事業の場合、多額の最低資本金がBOIから条件として設定されていることを日本人が知らないケースもありますので、BOIの奨励証書(原文タイ語)は、翻訳して内容をよく把握しておく必要があります。税制優遇の期限切れなど、BOIの恩典が不要となった場合には、恩典を返上することも手段として考えられます。

留意点の2つ目は、多少のビジネスモデルの変化によって、分類が変わってしまう可能性があるという点です。「小売」「卸売」「仲介・代理」、及び類型1で説明した「輸出」の4事業は、一見するとまったく別の事業ですが、実際には相互に紙一重の違いしかありません。ある事業は外資企業として実施可能、ある事業は実施不可、といった状況において、実施不可の事業について「全体に占める割合はごくわずかしかない」「一時的で例外的な取引にすぎない」という主張は正当化されません。実施できるとした場合に、何を根拠として実施できるのか、その根拠は他事業にも適用されるのか、顧客との契約内容はどうなっているのか、詳細を正しく把握し、説明できる状態にしておくことが必要です。

次回からは、外資企業が実施できる事業の類型の3つ目、「省令によって実施可能とされたサービス事業」について解説していきます。

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MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director

池上 一希 氏

日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に入社、2018年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等に取り組む。

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Head of Consulting Division

吉田 崇 氏

東京大学大学院修了、タマサート大学交換留学。ジェトロの海外調査部で東南アジアを担当後、チュラロンコン大学客員研究員、メガバンクを経て、大手コンサルで海外子会社管理などのPMを多数務めた。

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三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、 民間企業向けの各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援など幅広い事業を展開しています。

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E-mail:kazuki.ikegami@murc.jp(池上)
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