「タイ企業との協業」が成長を加速させる 名刺交換で終わらせない意識付け

「タイ企業との協業」が成長を加速させる 名刺交換で終わらせない意識付け

公開日 2024.09.17

既存事業の拡大、新規事業の創出、環境への配慮、組織改革-タイでのミッションを幾多も抱える駐在員が、成果を出すためには何が必要なのでしょうか。泰国岩谷の大島寛社長は「事業成長のためにはタイ企業との協業が欠かせない」と明かし、新規事業担当の大塚将太氏は「タイ企業との名刺交換後は、翌日までに必ず自ら連絡し次に繋げる」と積極的な姿勢を見せます。同社の事業戦略と展望について、大島社長と大塚氏に話を伺いました。

泰国岩谷会社
岩谷産業株式会社の海外拠点として1990年にタイで設立。主に東南アジアにおいて、カートリッジガス事業、産業ガス事業、機械事業、マテリアル事業の4つの事業を展開している。

戦略方針は「3E+タイカンパニー」

Q. タイでの事業展開と事業方針についてお聞かせください。

大島社長:イワタニグループでは、総合エネルギーや産業ガス、マテリアルなど幅広い事業を展開しています。タイでは2020年頃までマテリアル事業が主力でしたが、近年ではヘリウム充填工場や冷媒用ガス充填・回収再生工場などの産業ガス事業への注力、カセットこんろの現地製造を開始するなど、事業成長を加速させています。

現在の事業方針については、「3E+タイカンパニー」というスローガンを掲げ、“E” から始まる3つの言葉に集約しています。

一つ目は、“Environment”。水素を究極の「クリーンエネルギー」として捉え、日本の水素技術のパイオニアとして数々のプロジェクトを推進してきたイワタニグループの一員として、まず欠かせないキーワードです。

二つ目は、“EV & Electronics”。当社はこれまで日本の二輪、四輪、エアコンメーカーに関連するお仕事を幅広くさせていただいており、当社の大きな強みともなっています。タイにおけるEV & Electronics分野の動きは未知な部分も大きいですが、当社として常にアンテナを張り、貢献できる体制を整えたいと考えています。

三つ目は、“Evacuate from China”。生産拠点を中国から東南アジアにシフトする企業も増えており、最近は特に「中国からの脱却」の流れを肌で感じています。この流れを当社の力でも加速させることが、事業成長において欠かせない要素の一つだと捉えています。「+タイカンパニー」は、文字通り「タイ企業との協業」を意味します。実現のためにはタイ人社員の活躍が重要なファクターになると考えており、現在人事制度の改訂にも取り組んでいます。

名刺交換後は、必ず自ら連絡し次に繋げる

Q. TJRIご利用のきっかけ、活用方法について教えてください

大島社長:前任から「有意義なサービスがある」と引継ぎを受け、TJRIを知りました。着任早々に受講したTJRIビジネスコースや、PTT社訪問イベントへの参加は、「3E」のスローガン策定や人事改革の土台ともなりました。その後も、タイ企業の経営幹部が課題やニーズを解説するオープン・イノベーション・トークなどに複数回参加し、タイのビジネスに関する情報収集に役立てています。

大塚氏:「3E」の中でも、私は特に“EV & Electronics”の分野で新規ビジネスの機会を模索していますが、これまで当社が十分にカバーできていなかった領域のため、何のツテもない状況からのスタートでした。TJRIのタイ企業訪問イベント等に積極参加したところ、上記関連分野のタイ企業の担当者との名刺交換が叶い、商談と引き合いに繋がっています。

TJRIのイベント参加時は、事前に「この企業の方と名刺交換をする」と決めておきます。当日、目星を付けた方と名刺交換が出来たら、必ずその後に自分から連絡します。すぐに返信をいただけない場合でも、メールか電話でフォローアップすることで、次に繋がりやすくなります。イベント後に名刺を引き出しの中で眠らせることは、まずありません。

2023年6月に開催したPTT 社訪問イベント

Q. 特に、タイ企業と協業の必要性を感じる分野は

大島社長:脱炭素の分野です。当社は従来より、タイの大手PET樹脂メーカーであるインドラマ・ベンチャーズ社と手を組んで、植物由来の原料を使用したPET樹脂(バイオマスPET)をアジア各国で販売しています。バイオマスPETは、PET樹脂の粗原料である石化由来のモノエチレングリコール(MEG)を植物由来のMEGに置き換えたものです。インドラマ・ベンチャーズ社は環境への意識が高く、互いに有意義な協業関係を築けています。このように、今後も価値観のマッチするタイ企業との協業機会を積極的に模索したいと思っています。

主力事業の一つである産業ガスの領域では、環境に悪影響をもたらすフロンガスの適正な回収・再生スキーム構築を目指して動いています。フロンガスはCO2の数千倍にあたる地球温暖化ガスであり、エアコンの廃棄やメンテナンス時に大気放出されてしまうと、深刻な環境汚染に繋がってしまいます。

日本では「家電リサイクル法」で取り締まられていますが、タイには該当する法律がないため、現在法制化のためのネットワーキングにも尽力しています。現在は日系エアコンメーカー等と連携が進んでいますが、大手流通財閥などタイ企業も巻き込みたいと思っており、TJRIも積極活用していく予定です。

大塚氏:「新規事業」という括りでは、分野に関わらず協業の必要性は高いと思います。タイ企業へのアプローチにおいてはタイ人社員の力が必須なので、最近は彼らに積極的に新規案件を任せるようにしています。育成の観点からも、TJRIの交流会やイベントへの参加促進、THAIBIZ記事の共有などを意識的に行っています。

タイ人社員やタイ企業と共に、さらなる事業発展を目指す

Q. 最後に、タイでの事業展望についてお聞かせください

大島社長:イワタニグループは、多岐にわたる事業内容から「商社」「メーカー」「ガス会社」など複数の顔があると言われていますが、中でも当社のオリジナルブランドであるカセットこんろの製造を、2023年からサムットサコーンにある当社のグループ会社であるバンコクアイ・トーアで開始しました。

カセットこんろの東南アジアにおける普及は、当社の知名度と信頼度につながり、他事業におけるタイ企業との協業の幅を広げられる可能性があると考えています。日本の鍋文化の伝承という意味でも、飲食店だけでなくタイの方々の家庭内でも使用いただけたら嬉しいです。

今後も、当社が大切にする「脱炭素社会の実現」に向けたマインドをベースに、タイ人社員やタイ企業と共にさらなる事業発展に努めます。

THAIBIZ編集部

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