食肉加工大手ベタグロが注力する次なる戦略 〜 代替タンパク質で日本市場へ進出を目指す

食肉加工大手ベタグロが注力する次なる戦略 〜 代替タンパク質で日本市場へ進出を目指す

公開日 2024.09.20

TJRIでは8月28日、タイ企業のニーズを日本企業向けに発信するオンライン説明会「Open Innovation Talk」の第29回として、食肉加工大手​​ベタグロのコマーシャル担当ヴォララン・テーパイシットポン氏に登壇いただき、2022年に参入した代替タンパク質事業含む同社の事業概要や日本企業との提携機会について話を聞いた。

食品から飼料まで幅広い事業を展開、34ヵ国に輸出

Q. ベタグロの歴史と事業概要は

ヴォララン氏:ベタグロは1967年に動物飼料製造会社として創業し、第1フェーズの最初の30年間は畜産・総合食品事業へと拡大した。第2フェーズとなる2004年からはB2C事業にさらに注力し、2017年からの第3フェーズではペットフードや運送会社のKerryと合弁で、冷蔵食品の配送プラットフォームの「Kerry Cool」を設立、代替タンパク質ブランド 「Meatly」を立ち上げるなど事業の多角化を図った。

現在は日本を含む約34ヵ国に輸出を行っている。主力商品は鶏肉で、日本への輸出品は主に鳥の揚げ物と炭火串焼きだ。当社は飼料や畜産から加工食品、小売り、物流など、川上から川下までカバーしており、代表的なブランドとしては、「S-Pure」や「ベタグロ」、「伊藤ハム」などだ。

食肉加工大手ベタグロが注力する次なる戦略 〜 代替タンパク質で日本市場へ進出を目指す
「多様な顧客層に対応するベタグロのブランド一覧」出所:Betagro PCL.

これまで味の素や三菱、伊藤ハムといった日本企業を含まむ、多数のグローバル企業と合弁事業を手掛けている。また、当社は品質管理には特に力を入れており、ベタグロ・クオリティ・マネジメント(BQM)やベタグロ・バイオセキュリティ・マネジメントなど、独自のマネジメントシステムを導入し、品質を保持している。

成長する代替タンパク質市場

Q. 世界的な代替タンパク質の今後のトレンドは

ヴォララン氏:2040年までに、世界の肉を食べる消費者の60%が代替タンパク質を食べるようになると予想されており、世界の代替タンパク質市場の年間成長率は2桁に達する見込みだ。これは従来の食肉市場の2~3%の成長率を大きく上回る。

また2030年までに、世界の食肉市場の10%が代替タンパク質に置き換われば、約27億本の木を守ることができ、ニューヨーク市の5年分の水使用量を節約できるという試算もある。

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「代替タンパク質の健康や環境面でのメリットと今後の市場予測」出所:Betagro PCL.

Q. タイ国内の代替タンパク質市場は

ヴォララン氏:タイ国内の植物性食品市場も拡大傾向にあり、豆乳のような従来の代替タンパク質と、植物性肉のような革新的な技術による代替タンパク質に分けられる。市場規模は2030年には2倍以上成長する見込みだ。

現在、タイには代替タンパク質食品の原材料を提供する企業は多くあるが、代替タンパク質の商品には、美味しさや食感、エネルギー補給などの課題もある。そのため、われわれは「長期的に代替タンパク質の消費を促進するために、ユニークで美味しく、食べること自体を楽しめる食体験をどのように作れば良いか」を研究し、調理済み食品(Ready to Eat)など幅広いラインナップの商品開発に力を入れている。

若い世代に植物由来のアジア料理を

Q. Meatlyブランドの特徴は

ヴォララン氏:Meatlyの製品は、非遺伝子組み換え(Non GMO)の大豆タンパク質と米油を使用しており、100gあたり約23gのタンパク質を含み、肉に比べて高繊維質かつ低脂肪なのが特徴だ。さらに、当社独自の「glumi」と呼ばれる革新的な技術で本物の肉のような食感を実現することができるようになった。商品ラインナップは、原材料の植物性の生肉と冷凍食品・調理済み食品(Ready to Cook & Ready to Eat)がある。タイカレーや肉まん、外国のベジタリアン料理など、さまざまながメニューがあり、代表的な商品は、カツとカツチーズ(植物性チーズ)、タイ料理だ。

食肉加工大手ベタグロが注力する次なる戦略 〜 代替タンパク質で日本市場へ進出を目指す
「さまざまなメニューをカバーするMeatlyの製品例」出所:Betagro PCL.

われわれのミッションは、「美味しい植物由来のアジア料理を若い世代に普及すること」であり、植物性の生肉を豚肉や鶏肉のような当たり前の選択肢にすることも実現したいと考えている。さらに、35歳以下の若手メンバーからなる小規模チームを結成しているため、迅速な商品開発やソリューションにより、多様な消費者ニーズに対応できるのも強みだ。

業務用商品から小売り、OEM生産まで柔軟に対応

Q. どのような形態で商品を提供しているか

ヴォララン氏:Meatlyは、主に以下の3つの形態で商品提供が可能である。

(1)バルクパック:飲食店・加工工場向けの業務用

(2)小売での販売:小売業者と提携し、Meatlyブランド商品を販売

(3)OEM:他社ブランドでさまざまな種類の冷凍食品を製造

Q. 今後の計画と目標は

ヴォララン氏:長期的なエコシステムを構築するために、技術パートナーを求めている。現在、われわれは植物由来の代替タンパク質を手がけているが、中期的には昆虫由来など他の代替タンパク質の展開も検討している。長期的な目標は、市場シェア2位の代替タンパク質ブランドになることを目指している。現在、Meatlyは国内モダン・トレードにおいてはシェア2位だ。

日本市場向けの植物由来製品の開発のパートナー、流通業者を募集

Q. どの分野でパートナーを求めているか

ヴォララン氏:日本市場での展開において、以下の2つの分野でパートナーを募集している。

(1)日本市場に適した植物由来のタンパク質製品を共同開発できる日本企業

(2)ヘルシーレストランチェーン、ヴィーガン、ベジタリアン市場、HORECA(ホテル・レストラン・カフェ)、小売店などの流通に強みをもつ現地の流通業者

Q&Aセッション

事業説明の後は、視聴者とのQ&Aセッションが行われ、多数の質問が寄せられた。今回はその一部を紹介する。

プラントベース商品の主要ターゲット層は?

バンコクやチェンマイ、プーケットなどの大都市に住んでいる「プレミアム・マス」グループだ。

今後、プラントベース食品が普及した場合、大豆の競合問題は発生するか? 

需要と供給によって変わるのは他の産業と同じだろう。もし畜産を減らすことができれば、土地に余裕ができ、その分を農地にすることができる。農地に必要な土地は畜産よりも少ない。

人口減少や高齢化社会が進む中、プラントベース食品の消費割合はどのように増えていくか?

健康を意識して食肉からプラントベース食品に切り替える人が増えることで、割合が増えていくと見込んでいる。

THAIBIZ編集部

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