タイ人の死因の推移

THAIBIZ No.154 2024年10月発行

THAIBIZ No.154 2024年10月発行なぜタイ人は日系企業を選ぶのか

この記事の掲載号をPDFでダウンロード

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

タイ人の死因の推移

公開日 2024.10.10

タイ人の死因の推移

世界銀行のデータによるとタイ人の平均寿命は2000年の72歳から2022年には80歳にまで伸びている。日本は同期間に81歳から84歳になっており3歳しか伸びていないので差は縮小している。医学の進歩や公衆衛生環境の改善が寄与していると考えられるが、実際のところどうなのだろうか。

そこで、世界保健機関(WHO)のデータから取得した1990年以降のタイ人の死亡原因トップ5を調べてみたところ、非常に興味深い推移が見て取れた(図表1)。

出所:WHOのデータをもとにSBCS作成。
※下気道感染症:気管支炎、肺炎など/虚血性心疾患:狭心症、心筋梗塞など/内分泌障害:糖尿病、甲状腺疾患、副腎疾患など

1990年、2000年共に死亡原因のトップは交通事故だった。それが徐々に低下し、2019年には5位になっている。今でも大変危険だと思うことが多いタイの交通事情であるが、以前はさらに恐ろしい状況だったことが分かる。

なお、交通事故の減少傾向は日本も同様だ。近年では衝突安全機能が付いた車が増えてきた影響もあり、日本の交通事故死者数は1990年には1万人を超えていたのが、ここ数年2,000人台で推移している。タイでも最近は同機能が付いた車の販売が増えてきているので、同様の傾向になるだろう。近いうちに交通事故がランキングから外れるのではないかと期待している。

驚いたのは1990年の死因4位が「暴力」となっていることだ。最初、データを読み間違えたのかと思って見直してみたが英語で「Violence」とされており、間違いではなかった。そこで、クーデターや騒乱を疑ったが、そのような事案は1990年には発生していなかった。さらに調べると1985年の死因1位が暴力となっていた。

どうやらタイ人にとって暴力で死亡することが、交通事故で命を落とすのと同程度に起こりえる時代があったようだ。タイ人は「熱しやすく冷めやすい人が多い」と言われるが、うまく立ち回らないと文字通り命が危ない。2000年以降暴力という死因がトップ5に入っていないのは朗報といえるだろう。

注目してもらいたいのは2000年に5位だったHIV/AIDSが2002年に1位になっていることだ。当時のタイはエイズの蔓延が社会問題化しており、タイ政府はエイズ治療薬を配布することでこの状況を抑え込んだ。こういった努力の結果、死因の上位からHIV/AIDSが姿を消している。しかし、HIV/AIDSが無くなったわけではなく、薬のお陰で死者が減少した、ということでもあるので、HIV/AIDSは身近に存在するという前提で気を付けたほうがいいだろう。

さて、WHOは長期のデータを公表しているので傾向を見るのに有用だが、タイの保健省が直近約10年分の詳細な死因を公表している。それによると2024年の死因1位は老衰。病気ではないので、天寿を全うして亡くなる方が最も多いようだ。病気としての死因の1位は心不全となっている。日本では癌が1位だが、タイでは癌は9位(老衰を除く)となっている。

日タイで大きく異なる死因から、社会構造の違いを学ぶことができる。

2024年7〜8月の経済・政治関連トピック

タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)の8月19日発表(図表2)によると、2024年第2四半期の経済成長率は前年同期比+2.3%であり、第1四半期の同+1.6%から加速したが、東南アジア主要国の中では依然最も低い伸び率である。物品輸出は同+1.9%、工業は同+1.8%とプラスに転じた。宿泊・飲食サービスは観光需要の回復で同+7.8%となったが、前期の同+11.8%から減速。一方、農業は同▲1.1%で2023年第4四半期からマイナスである。2024年上半期の経済成長率は同+1.9%だった。通年の成長率見通しは、今年5月発表の同+2.0〜3.0%から+2.3〜2.8%に範囲を絞った。

出所:SBCS作成。(*)はタイ中央銀行より引用

経済

タイ商務省の7月26日の発表によれば、2024年上半期の輸出額は前年同期比+2.0%の1,452.9億米ドル、輸入額は同+3.0%の1,505.3億米ドルで、貿易赤字は52.4億米ドル。品目別では、自動車・同部品が同▲3.4%(197.0億米ドル)、電子製品・同部品が同+11.7%(248.4億米ドル)、農産物・加工品は同+3.3%(265.2億米ドル)。国別では、首位が米国で前年同期比+11.2%の257.7億米ドル、次いで中国が同▲1.2%の176.0億米ドル、日本が同▲7.5%の115.7億米ドルだった。

・・・・

FTIが9月18日に発表した2024年8月の産業景況感指数(TISI)は、前月比▲1.6ポイントの87.7だった。政府機関の支出で7月に4ヵ月ぶりに上昇したが、家計債務の拡大の影響でまた下落した。業種別では46業種中22業種が上昇。企業規模別では、小規模企業が前月比▲0.7ポイントの80.7、中堅企業が同▲3.2ポイントの85.2、大企業が同▲1.2ポイントの95.8。


政治

憲法裁判所は8月7日、最大野党であった前進党の解党および党幹部11名に10年間の政治活動禁止を命じた。不敬罪改正を2023年総選挙の公約に掲げたことが理由だ。ピター氏ら5名の元比例代表は補欠なしに解任され、元小選挙区代表1名は解任後、9月15日に再選挙が行われ、タイ貢献党の候補者が当選。元前進党の残りの議員143名は60日以内に、他党へ転籍が必要で、8月9日に新政党「国民党」を立ち上げ、党首には前進党の元副幹事長ナタポン氏が就任。

・・・・

憲法裁判所は8月14日、タイ貢献党のセター首相の解任を命じた。判決理由は、同氏が2024年4月の内閣改造時に犯罪歴のある人物を閣僚に任命し、憲法の倫理規定に違反したため。8月16日下院はタクシン元首相の次女ペートンタン氏を首相に選出し、8月18日にワチラロンコン国王の承認を得て正式に第31代首相に就任した。新閣僚名簿は9月4日に国王に承認され、民主党が連立与党に入り、国民国家の力党がプラウィット党首の派閥とタマナット前幹事長の派閥に分けられ、タマナット氏の派閥は連立与党に残り、プラウィット氏の派閥は野党になった。ペートンタン内閣の所信表明は9月12〜13日に行われた。

THAIBIZ No.154 2024年10月発行

THAIBIZ No.154 2024年10月発行なぜタイ人は日系企業を選ぶのか

ダウンロードページへ

掲載号のページにて会員ログイン後、ダウンロードが可能になります。ダウンロードができない場合は、お手数ですが、[email protected] までご連絡ください。

SBCS Co., Ltd.
Executive Vice President and Advisor

長谷場 純一郎 氏

奈良県出身。2000年東京理科大学(物理学科)卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。山形事務所などに勤務した後、2010年チュラロンコン大学留学(タイ語研修)。2012年から2018年までジェトロ・バンコク勤務。2019年5月SBCS入社。2023年4月より現職。

SBCS Co., Ltd

Mail : [email protected]
URL : www.sbcs.co.th
SBCSは三井住友フィナンシャルグループが出資する、SMBCグループ企業です。1989年の設立以来、日系企業のお客さまのタイ事業を支援しております。

Website : https://www.sbcs.co.th/

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP

SHARE