自社販売スキームの確立などで、売上が2倍以上に ~湖池屋タイランド小峯剛社長インタビュー

自社販売スキームの確立などで、売上が2倍以上に ~湖池屋タイランド小峯剛社長インタビュー

公開日 2024.11.04

タイでスナック菓子を販売するKOIKEYA (Thailand) CO., LTD.(以下、「KOIKEYAタイランド」)は、この3〜4年で売上を2倍以上伸ばした。売上増に大きく貢献している商品が、日本のみならずタイでも圧倒的な認知度を誇る「カラムーチョ」だ。KOIKEYAタイランドの小峯 剛社長に、タイでの事業展開やカラムーチョのマーケティング、地場企業との連携などについて話を聞いた。

<聞き手=mediator ガンタトーン、THAIBIZ編集部>

湖池屋タイランド小峯剛社長インタビュー01
湖池屋タイランド小峯剛社長(左)とmediator ガンタトーンCEO(右)

現法立上げを機に、自社販売スキームを確立

Q. KOIKEYAタイランドの歴史と事業概要について

小峯社長:株式会社湖池屋は1953年に創業し、主に菓子・スナック事業を展開しています。海外には、台湾、ベトナム、タイ、ベルギーに拠点があります。タイでは、現地法人設立前の2007年からスナック商品のテスト販売を行っていましたが、製造と販売をそれぞれ別のタイ企業に委託していた関係で需給バランスが困難になるなどの理由で、一度撤退しています。

次なる挑戦として2012年、原料であるじゃがいもの現地安定調達もできる、タイの大手財閥Berli Jucker Public Company Limited(BJC)と契約し、生産と販売を委託しました。セブンイレブンなどで販売され、ある程度の売上は達成できたものの、さらなる売上の拡大に向け、2018年に現地法人を登記し、2019年5月から事業をスタートしました。現在タイ市場に出ている主なカラムーチョは引き続きBJCグループで生産しており、またベトナムで生産したものも輸入しています。

Q. 自社販売切り替え後の、販路開拓について

小峯社長:事業開始から数年はセブンイレブンなどの既存販路はそのまま継続し、新規販路については当社で開拓してきました。但し、「取引できればどこでも良い」というわけではありません。返品不可などの条件を明確に提示し、条件が合わない場合には潔く身を引くなど、「互いにとってWin-Winとなる関係性」を常に重要視しています。

セブンイレブンでは、2023年は沢山の新商品を採用していただけました。要因としては、自社による直接販売の強みに加え、お客様との関係構築を大切している点が挙げられると思います。特に、実務担当者同士の関係性を重要視しており、社員には「どんなに小さい用事でも、オンラインで済ませず、その機会を活かして直接会うように」と伝えています。やはり直接面と向かって会うことが、一番有効な関係構築方法だと考えています。

湖池屋タイランド小峯剛社長インタビュー04

売上の大半を占める「カラムーチョ」が人気な理由

Q. カラムーチョはなぜタイで売れているのか

小峯社長:エッジが効いた商品で、かつ日本で人気度が高いことから、海外拠点ではカラムーチョの展開から事業をスタートするケースが多く、タイも例外ではありません。ただ、日本でのカラムーチョをそのまま海外市場で販売するわけではなく、国によって味は少し変えています。「辛味」にはさまざまなタイプがありますが、カラムーチョが大切にしているのは「うまみ」です。ローカルの嗜好に合わせた「うまみ」こそが、タイの人たちにも「美味しい」と思っていただいている所以だと考えています。例えば、カラムーチョの中で一番辛い「カラムーチョSTRONG」でも、妥協のない「うまみ」をベースとした辛さを楽しんでいただけるよう工夫しています。

新規のフレーバーについても、タイ人社員を中心に試行錯誤しながら、「辛いだけではない」味の開発を心がけています。ローカライズした味の開発については、一部商品を除いて、基本的には当社がイニシアチブをとっています。

Q. タイでのマーケティングについて

小峯社長:FacebookなどSNSでの発信にも取り組んでいますが、より効率的に売上に直結させるために、最近では試食サンプリングに注力しています。これまでの経験から、一口食べていただければ「美味しい」と思ってもらえると自負しているため、最初のきっかけづくりとして、試食サンプリングは当社の現状を鑑みて最適なマーケティングだと考えています。

私も、試食サンプリング用に生産している小分けパックをゴルフのキャディさんなどに渡し、認知度を確認したり、食べた時の反応を見たり、感想を聞いたりしています。

サンプリング用の小パックカラムーチョ
サンプリング用の小分けパック

Q. タイでの売上の推移は

小峯社長:現地法人立上げ時の2019年は2億バーツ弱だった売上が、2023年には2倍以上の4億バーツ強まで伸びました。帳合取引から自社による直販売への切り替えや、味のローカライズ、マーケティング、そして何よりもタイ人社員が率先して頑張ってくれている結果が表れているのだと思います。

タイ人への権限移譲では「あえて失敗を経験してもらう」ことも

Q. 日本や他国で実施していないタイの取り組みは

小峯社長:私は2019年にタイ法人立上げと同時に入社しましたが、当時は一人だったタイ人社員も現在では16人まで増えました。ユニークな取り組みとして挙げられることは、食品業界経験者に拘らない人材採用をしていることです。経験がなければ、先入観にとらわれない自由な発想で仕事に取り組めると考えているからです。

社員の平均年齢が27歳と非常に若いことも特徴の一つです。当社製品のターゲット層に近い彼らを中心に販売やマーケティングを実施することが、何より効果的だと思っています。入社当時から育ててきた右腕的な社員も、今では非常に心強い存在です。

Q. 業界未経験の若手で固めた組織が、成果を出すには

小峯社長:積極的に権限移譲することです。私は具体的指示は出さず、ゴールのみ示して、その後は社員自らで考えてもらっています。彼らが出した提案には、私の経験上「難しいだろうな」と思える場合でも、基本的にNoとは言いません。自分たちの提案で実行し、失敗を経験することで、彼ら自身が深く学べる場としています。同時に、同じ失敗は認めないということも伝えます。実際にこの方法で経験値が上がり事業も拡大しているので、社員一人一人の力を高く評価しており、同時に心から感謝しています。

湖池屋タイランド小峯剛社長インタビュー03

ベトナム拠点とも連携し、ASEAN市場を攻める

Q. 現職に着任後、苦労したことや失敗したことは

小峯社長:計画通りに進まない事態でも前向きに捉える性格なので、特にありません。失敗があるからこそ学びがあり、その次に繋がっていきます。ある目的があって、大きな取引に挑み損失を出してしまったことはあります。ただ、その経験が糧になり、目的達成のための「次の一手」を打つことができたため、結果的には良い方向に向かっています。前職での米国駐在経験なども踏まえながら、何事も前向きに捉えて挑戦を続けています。

Q. 今後の展望について

小峯社長:タイだけではなくベトナムの拠点とも連携し、カラムーチョのような尖った商品を中心に、相乗効果を生み出しながらASEAN市場を攻めていきたいという野望があります。タイ人社員と一丸となって、今後もタイおよびASEAN市場に「湖池屋品質」を届けてまいります。

THAIBIZ編集部

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