「ノミニー」行為の取り締まり強化、アジア中間層の停滞

「ノミニー」行為の取り締まり強化、アジア中間層の停滞

公開日 2024.12.02

11月28日付バンコク・ポスト(ビジネス1面)によると、タイ政府は外資規制を実質逃れている「ノミニー」と呼ばれる名義借り行為について、特に観光、不動産、ロジスティクス、倉庫、農産物貿易の高リスク5業種での取り締まりを強化する方針だ。

ナピントーン商務副大臣は、ノミニービジネスの防止・抑制に関する商務省の小委員会が25日に開催され、関係政府機関とともにノミニー利用が疑われる企業に対する調査と法的措置の実行について協議したことを明らかにした。

短期、中期、長期の対策が、ピチャイ商務大臣が委員長を務める「外国製品・事業コンプライアンスに関する委員会」に提出され、12月9日の承認を目指しているという。ナピントーン副大臣は、ノミニーに関する小委員会はタイ経済への悪影響を最小限に食い止めながら、違反者の資産の接収・凍結のベースとなるノミニー犯罪に関連する法律の修正作業で、資金洗浄防止事務局(AMLO)と協力していると述べた。


11月26日付バンコク・ポスト(ビジネス2面)によると、タイ投資委員会(BOI)は、米国のトランプ次期大統領が計画している中国製品の輸入に対する関税引き上げの影響が懸念される中で、中国企業が総額900億バーツのタイへの新規投資を予定していることを明らかにした。

電気自動車(EV)向けバッテリーや、データセンター向け設備、生分解性プラスチック包装容器などの生産に関心を示しているという。BOIのナリット長官は、「ハイテク分野に特化した企業からの大型投資プロジェクトを誘致する大きなチャンスだ」とした上で、「バッテリーとハイテク電子部品はさまざまな産業に利用されるため、彼らのタイへの投資はタイの産業の改善につながる可能性がある」と強調した。

BOIは11月19~21日に上海で中国企業向けにBOI投資恩典の説明会を開催。ナリット長官は、少なくとも6社がタイへの投資に関心を示し、このうち2社はEV向けバッテリーセル、蓄電、クリーンエネルギー分野での投資を希望していることを明らかにした。


11月29日付バンコク・ポスト(ビジネス5面)によると、タイ商務省のナピントーン副大臣は28日、安価で低品質の製品がタイに大量流入することを防ぐため、外国企業がタイ国内で展開するすべての電子商取引(EC)プラットフォームに対し事業登録と正式オフィスの開設を義務付ける方針を明らかにした。

中国の安価で低品質の輸入を抑制するための政府小委員会の委員長を務める同副大臣は、タイのECビジネスの主要プレーヤーで、議論の中心となっている中国の「Temu(テム)」は11月11日に法人登記を済ませたと報告。関連法制度の修正が完了すれば、すべての外国EC業者はテムのように法人登記が義務付けられると強調した。


日本経営グループ(NKG)とタイの病院大手プリンス・グループのリハビリテーション・介護サービスの合弁会社プリンシパルNKG(PNKG)は11月27日、脳卒中を中心とする回復期のリハビリテーション専用病棟のオープン記念式典を開催した。PNKGはタイ国内のリハビリテーション・介護市場の整備に向け「KAIGO-DO(介護道)」ブランドを展開しており、2022年からサムットプラカン県バンナーにあるプリンス・スワンナプーム病院内で、リハビリ・介護サービスを正式に開始していた。

PNKGの古屋友貴最高執行責任者(COO)は「タイでは年間20万人程度が脳卒中を発症し、5万人以上が亡くなっている。脳卒中の回復期のリハビリではOT(作業療法士)、PT(理学療法士)、看護師、介護士などの医師以外の職種の関わりと、受傷後の状態や麻痺の状態を踏まえたケアプランが非常に重要だ。回復期においてはセラピストがリハビリを行うだけではなく、自宅や社会復帰のための生活支援が必要であり、このようなサービスを提供するためにリハビリ病棟を立ち上げた」と説明。また回復期のサービスをタイで広げていくために来年に「回復期リハビリテーション&ケア協会」を立ち上げる予定で、今後タイでの普及を目指し、大学、リハビリセンターとも協力していくと訴えた。

PNKGの古屋友貴最高執行責任者(COO)
オープン記念イベントでは設備の説明も行われた

英エコノミスト誌11月23日号は、アジア面で「アジアの中間層の驚くべき停滞」と題する興味深い記事を掲載している。同記事は今年8月に、インドネシアで2021年から2024年の間に全人口に占める中間層(middle class)の比率が22%から17%に低下したとのニュースが波紋を呼んだと報告。

これに対し、当時のインドネシアのジョコ大統領は「この問題はほぼすべての国で存在する」と説明したという。そして同記事はジョコ大統領は間違っていないとし、アジアの中間層はかつてのように成長しておらず、同誌の分析ではアジアの中間層の人口の年間平均伸び率は1991~2014年の間は6%だったが、過去10年は2%まで鈍化していると指摘。中国を含む幾つかの国ではマイナスの伸び率となり、「インドを除くアジアの中間層は停滞している」とし、「アジアの途上国の人口の72%に相当する27億人の未来が危機に瀕している」と警告した。

そして同記事はアジアの中間層の成長鈍化の鈍化について、「未解決の構造問題が中間層の成長を抑えている」と強調。インドネシアなど幾つかの国では、1997年のアジア通貨危機や新型コロナウイルス流行期の非正規労働者の増加も原因だとする。そして、「タイでは高水準の家計債務が中間層の借り手を抑圧している」と分析。

さらに一部の国ではインフレによる実質所得の伸びの鈍化、特に消費における食費のシェアが米国などに比べ高いアジアでは食品価格も上昇の影響も大きいと強調した。また、中間層の停滞が政治に与える影響については、一部の国では政治家が補助金支給で対応しているとし、タイで実施されている国民への1万バーツの現金給付策を例に挙げた。

THAIBIZ編集部

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