最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中
公開日 2025.10.21
10月16日付のクルンテープ・トゥラキットによると、タイでは外国企業による生産拠点の移転を背景に、工業用不動産の需要が急増している。特に電気自動車(EV)や電子部品分野では、台湾・香港系を中心とした工場の賃貸ニーズが高まり、人気の工業団地では空きがほぼない状態だ。8月以降は建物の先行予約も活発化しているという。
これに伴い、工業団地の土地価格も上昇傾向にある。全国平均で1ライ(1ライ=1,600平方メートル)あたり804万バーツと、前四半期から2%上昇。なかでもラヨーンのプルアックデーン郡では1ライあたり550万から750万バーツへと20〜30%上がった。アユタヤで600万、サムットプラカーンやチャチューンサオ、チョンブリー北部では1,200〜1,400万と、地域ごとの上昇も目立つ。
さらに、バンコクおよび東部経済回廊(EEC)地域では、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やグーグル、マイクロソフト、バイトダンスなどによる88億米ドル規模の投資表明を受け、データセンター設備の能力が267%増加するとされている。
一方で、EC(電子商取引)ブーム期に建設された倉庫は供給過剰に直面。サムットプラカーンやチョンブリーでは空室率が30〜40%と高水準にあり、同じ不動産分野でも分野ごとの明暗が分かれている。
タイ飲料大手のタイビバレッジは9月30日、今年1〜9月の業績報告と今後の成長戦略を発表した。売上高は前年同期比ほぼ横ばいの2,586億バーツを確保。収益面ではブランド投資の増加によりEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が4.0%減の450億バーツとなったものの、主力4事業(酒類、ビール、ノンアル飲料、食品)はいずれも堅調に推移した。
なかでも注目されたのが、伝統酒を再解釈した次世代酒類によるプレミアム戦略である。代表的な例が、タイ初のプレミアム・シングルモルトウイスキー「PRAKAAN(プラカーン)」の国際展開だ。昨年末に国内発売された同ブランドは、わずか数カ月で複数の国際賞を獲得し、「PRAKAAN SELECT CASK」は英「ワールド・ウイスキー・アワード2025」でカテゴリー最優秀賞を受賞。現在は英国をはじめとした海外市場でも展開が進んでいる。
また、タイの伝統的な米酒「サトウ」を低カロリー缶入りRTD(Ready-to-Drink:栓を開けてすぐ飲めるドリンク)として再構成した「ZATO」も評価が高まっている。タイ国内での販売拡大に加え、世界的な酒類コンテストでも金・銀・銅の3賞を受賞し、短期間で国際的な認知を得ているという。
こうした製品群は、単なる商品開発にとどまらず、同社が進めるASEAN域内でのブランド統合と販路開拓の一環として位置づけられている。グループ傘下のF&N(シンガポール)、SABECO(ベトナム)、GRG(ミャンマー)などとの連携も進んでおり、各国の生産・販売ネットワークを活用した域内展開が加速している。
タイビバレッジは今後も、地域の伝統や味覚を活かしながら、高付加価値商品の開発とグローバル市場への展開を進める方針を示している。
10月15日付のバンコク・ポストによると、タイの新卒者の間で「フルタイム離れ」が進んでいるという。タイ貿易・産業雇用者連盟(ECONTHAI)のタニット副会長は、特に工場勤務などの固定的な雇用形態への関心が薄れ、フリーランスなど柔軟な働き方を志向する若者が増えていると指摘する。
一方、企業側も経験やスキルの不足、組織文化への適応に不安を抱き、若年層の採用に慎重な姿勢を見せている。タニット氏は「これは世界的な傾向」としたうえで、企業はライフスタイルの変化に対応し、大学も市場ニーズに応じたカリキュラムを整備する必要があると訴えている。
社会保障統計によれば、今年第2四半期の15〜24歳の若年層失業率は5.9%、うち学士号以上の高学歴層は18.9%に上り、第1四半期から2.8%上昇した。農村部や非正規層を含めれば、実態はさらに深刻とみられる。
世界銀行は、経済成長と質の高い雇用創出の乖離を「ジョブ・パラドックス」として警鐘を鳴らしており、東南アジアでは先進国と比較して雇用の喪失リスクが低いものの、新技術導入の波に乗り遅れるリスクもあると分析している。
タイのライブコマース市場では今、ECとエンタメを融合させた「ショッパーテインメント」が定着し、中国式モデルのように短時間で高額取引が成立する事例が増えている。10月16日付のバンコク・ポストが伝えた。
最近注目を集めたのは、歌手ラチャノック(Janey)氏によるTikTokでの6日間の配信で、1日最大31万件超、合計4億バーツの注文を記録したケースだ。セレブとの協業や親しみやすいトーク、手頃な価格帯(300〜400バーツ)の商品などが、消費者の高い反応を引き出したとされる。
マーケティング会社TellscoreのスウィターCEOは、従来の「1時間あたり何バーツ」という料金体系に代わり、「5分で1,000件=5万バーツ」といった成果報酬型のモデルが普及しつつあると指摘する。
一方で、インフルエンサー頼みの販促には、キャンセル率20%、手数料20%、模倣競争、アルゴリズムの変化といったリスクも伴う。実質利益率は5〜10%とされ、収益性には課題が残る。業界関係者によれば、タイには約900万人のインフルエンサーが存在し、収益を得ているのは300万人にとどまり、それだけで生計を立てているのはごく一部だという。
同紙は、ラチャノック氏の成功は「一夜にして得られたものではない」としたうえで、8年間にわたりファンとの信頼関係を築いてきたことが背景にあると紹介。「これは成功の方程式ではなく、むしろ注意すべき事例だ」との警鐘も伝えている。
THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック / タニダ・アリーガンラート / 和島美緒
「工場・データセンター需要で地価上昇」「タイビバレッジ、次世代酒類で市場開拓」
ビジネス・経済 ー 2025.10.21
医療・ヘルスケア分野での協業可能性を探る~バイオ医薬品大手インターファーマを視察
イベント ー 2025.10.15
廃タイヤが未来を動かす 〜 阪和タイランド×パイロエナジーの資源循環戦略
協創・進出Sponsered ー 2025.10.10
中国は脅威か、チャンスか?新フェーズに突入した国際構図、在タイ日本企業の次の一手は
対談・インタビュー ー 2025.10.10
AIで変わるタイの業務改善の未来 〜Kintone Day Bangkok開催レポート〜
DX・AISponsered ー 2025.10.10
タイの大麻産業に未来はあるか – 解禁から3年、揺れる制度
ビジネス・経済 ー 2025.10.10
SHARE