現地組織が動いたとき、DXは加速する〜象印SEアジアが実現した年間140万バーツ削減の裏側

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現地組織が動いたとき、DXは加速する〜象印SEアジアが実現した年間140万バーツ削減の裏側

公開日 2026.01.30 Sponsored

タイで事業を展開する日系企業の多くが、部門間連携や紙ベースの業務フローに課題を抱えている。ZOJIRUSHI SE ASIA CORPORATION LTD.(以下、象印SEアジア)も例外ではなく、コロナ禍を機に業務プロセスの見直しが急務となった。同社が選んだ解決策が、業務アプリを作れるノーコード・ローコードツール「Kintone」の導入である。本稿では、日本人駐在員とタイ人スタッフが協働で改革を進めた同社の事例をもとに、日系企業がアナログ業務から脱却するためのヒントを探る。

コロナ禍で浮き彫りとなったアナログ業務の限界

象印マホービンのタイ法人である象印SEアジアは、ステンレスボトルをはじめ、炊飯器や電気ポット、しゃぶしゃぶ鍋など象印ブランドの調理家電をタイ国内で販売するとともに、東南アジアおよび香港に輸出販売を行っている。従業員数は約65名(うち日本人駐在員は3名)、タイ国内に約70店舗の販売網を持つ。

同社では休暇申請や経費精算、稟議書の承認など多くの業務が紙中心で運用されていた。既存の基幹システムは会計領域のみに対応しており、人事・総務、営業部門などその他のワークフローはカバーされていなかった。そのため、決裁者が出社しないと承認が進まない、必要書類を探すのに時間がかかるといった非効率な作業が常態化していた。

こうした非効率なワークフローを改善する転機となったのが、新型コロナウイルスのパンデミックだった。「外出制限のある中で、申請書を印刷して、それにサインをして、またスキャンして申請者にメールで返すといった作業に限界を感じていた」と同社のディレクター兼管理部門のゼネラルマネージャーである奥山雅史氏は語る。

象印SEアジアのディレクター兼管理部門ゼネラルマネージャー奥山氏

決め手は拡張性、専門ツールではなく育てられるプラットフォーム

「当初は勤怠管理の専門ツールも検討したが、決裁業務をはじめ他の業務にも課題があったため、業務を横断的にカバーできるKintoneが当社にフィットすると判断し、導入を決定した。拡張性の高さが決め手だった」と奥山氏は明かす。

多くの企業が直面するのが、「勤怠、経費精算などそれぞれに独立した専門システムを導入した結果、システムが乱立し管理が煩雑になる」という問題だ。象印SEアジアは将来的な拡張を見据え、一つのプラットフォームで複数の業務をカバーできるツールを選んだ。

しかし、拡張性が高くアプリテンプレートが多いがゆえに、どこから手をつけてよいかわからないというジレンマにも陥ったという。そこでまず状況を整理し、最も緊急度の高い決裁業務の運用を紙からKintoneに移行させた。

現地スタッフを巻き込む鍵は「理想の共有」

Kintoneを活用した改善の輪は、トップダウンではなく段階的に広がっていった。「まず日本人駐在員自身が簡単な申請アプリを試作し、一部の社員に使用してもらいフィードバックをもらった。狙いは、協力してくれる人を探すことだった。その過程でキーパーソン(協力者)となったのが、IT業務とは無縁の人事・総務部門のワンラパ・チャナチャイ(ナムタン)氏だった」(奥山氏)。

ここで重要なのは、現場の状況を理解しながら、小さく試し、反応を確かめていくプロセスを大切にした点だ。プロトタイプをもとに対話を重ねることで、現場との信頼関係を少しずつ築いていった。

ナムタン氏と進めるにあたり重視したのは、「理想(ありたい姿)を共に考え、 将来到達した時の感情を共有することだ」と奥山氏は強調する。例えば、Kintoneで作ったアプリを使うことで残業が減り、「家族と過ごす時間が増えて嬉しい」「他のスタッフからありがとうと言われた」など、具体的な感情だ。さらに同氏は「キーパーソンには目標を設定し、目標を達成した時にはきちんと評価することも重要だ」と付け加える。

このアプローチにより、ナムタン氏は現実とのギャップを考え、理想に近づけるように自ら考えて動き、周囲のメンバーを徐々に巻き込んでいった。

出所:象印SEアジアの提供資料をもとにTHAIBIZ編集部が作成

最大の壁「変化への不安」をどう乗り越えたか

一方、ナムタン氏は「私自身ITの知識はほとんどないので、最初は本当にできるのか、社員に説明して理解してもらえるのかという不安もあった」と語る。導入において最も大きな壁となったのは技術そのものではなく、社員の「変化に対する不安」だった。「なぜ変える必要があるのか」「スマートフォンさえ使いこなせないのに、どうやって操作すればいいのか」といった声も少なくなかった。

象印SEアジアの人事・総務部のナムタン氏

そこでナムタン氏は、初心者でも入力できるように操作マニュアルを作成し、基本操作研修を実施した。全員が使えるようになってきたら、次はアプリ作成のワークショップを通じて、部署ごとの業務を理解しながら現場と共に約1年かけて改善を進めていった。

社内ワークショップの様子(写真:象印SEアジア提供)

また、複雑なアプリ作成や操作説明については、Kintoneのオフィシャルパートナー企業であるFUJIFILM Business Innovation (Thailand) Co., Ltd. が大きな役割を果たした。「わからないことがあっても、すぐにサポートを受けられる安心感があった」とナムタン氏は当時を振り返る。

こうした積み重ねにより、導入当初に社員が抱いていた不安は徐々に薄れ、Kintoneは「使わされる仕組み」から「自分たちの仕事を楽にするツール」へと認識が変化した。現在では各部署のニーズに応じた60以上のアプリが現場主導で生まれている。

象印SEアジアが作成したKintoneのアプリ一覧(画像:象印SEアジア提供)

残業4分の1に削減、数字以外の波及効果も

Kintone導入の成果は、まず数字として明確に表れている。残業時間は導入前と比べ4分の1に大幅削減され、年間約140万バーツ相当の残業コスト削減を実現。経費精算や出張申請の処理スピードも向上し、紙の使用量も大きく減少。店舗スタッフが申請や確認のためにオフィスへ出社する必要はほぼなくなり、働き方そのものが変わりつつある。

現地組織が動いたとき、DXは加速する〜象印SEアジアが実現した年間140万バーツ削減の裏側
出所:象印SEアジアの提供資料をもとにTHAIBIZ編集部が作成

さらに注目すべきは定性的な変化だ。「業務が可視化され、改善のハードルが下がったことで、『私もこんなアプリを作ってみたい』という声が現場から自然と上がるようになった。また、上司から認められることで心理的安全性が高まり、結果としてエンゲージメントも向上している」と奥山氏は分析する。

このように業務の効率化にとどまらず「自走する改善文化」が芽生えたことも大きな成果の一つだ。駐在員が帰任した後も、現地スタッフが自主的に改善を続けられる組織体制を築くことは、日系企業の海外法人が持続可能な経営基盤を構築するという点においても重要な意味を持つ。

こうした成果は社内にとどまらず、日本国内および海外拠点を含む象印マホービングループ全体からも高く評価されている。Kintoneを活用したコスト削減の取り組みは、グループ内の好事例として共有され、2023年には表彰されたという。

次なるステージは自動化による工数削減とAI活用

同社は今後、Kintoneと基幹システムを連携させ、売上・在庫・費用などの集計・分析を自動化することを検討している。業績改善ツールとしての活用と日本本社への報告資料作成にかかる工数を大幅に減らすことが狙いだ。これにより現場はより付加価値の高い業務に時間を使えるようになる。

さらに、「Kintoneに蓄積されたデータを“資源”として捉え、AIと組み合わせることで、繁忙期の予測やセール時期の判断といった、より付加価値の高い活用につなげていきたい」と奥山氏は展望を語る。

タイでDXを成功させる3つのポイント

象印SEアジアの事例から、タイにおける業務DXの成功のポイントが3つ見えてくる。

1つ目は、初期段階から駐在員が現場に関わり、対話を重ねながら進めることだ。プロトタイプを通じて反応を確認していく中で、影響力のあるキーパーソンを発見し連携を深めていける。

2つ目は、タスクの指示ではなく、理想を共有すること。「残業が減って家族と過ごす時間が増えて嬉しい」といった具体的な感情レベルで理想を共有することで、現地スタッフの主体性を引き出せる。

3つ目は、小さく始めて、成功体験を積み重ねること。緊急度の高い業務から改善を始め、小さな成功体験を積み重ねることで、「使わされる仕組み」から「自分たちの仕事を楽にするツール」へと位置づけが変わる。

IT人材や潤沢な予算がなくても、現地スタッフと共に理想の未来を描き、小さな改善を積み重ねていくことで、業務改革は実現できる。同社の事例は、DXの成否を分けるのはツールそのものではなく、「人の巻き込み方」と「現場に根付くまでのプロセス」であることを示している。

Kintoneの導入や活用方法について、さらに詳しく知りたい方は、以下よりお問い合わせください。

Kintone (Thailand)Co., Ltd.
Kintone(Thailand)は、サイボウズ株式会社のタイ駐在員事務所として設立され、2024年に法人化。誰にでも使いやすいノーコードツール「Kintone」を通じて、煩雑でコストのかかる業務のデジタル化を支援します。日本語・タイ語対応でサポートも充実。信頼できるパートナーとともに、タイ全土で企業の業務プロセスの改善に貢献しています。

TEL:02-017-7134
E-mail:sales-th@kintone.com
Website:https://page.cybozu.co.jp/-/kintone-thailand

THAIBIZ編集部

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