ムサシ、コア技術でEV対応 〜選択と集中、中国系参入も視野〜

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ムサシ、コア技術でEV対応 〜選択と集中、中国系参入も視野〜

公開日 2026.06.05

NNA掲載:2026年5月20日

二輪・四輪車部品メーカーの武蔵精密工業(ムサシ)グループは、タイ事業をアジア戦略の中核拠点と位置付け、コア技術力を生かした電動化への商品対応を進めている。二輪・四輪双方に展開する生産体制を強みに、日系メーカーとの関係を維持しつつ中国系完成車メーカーへの供給参入も模索。限られた経営資源の中で事業の効率化を図り、市場停滞が続く中でも競争力の強化を目指す。

同社は1987年、タイ法人ムサシオートパーツを設立した。現在では、首都バンコク北郊パトゥムタニ県ナワナコンと東部プラチンブリ県の2工場体制を構築。工場の敷地面積はそれぞれ4万3,200平方メートルと12万平方メートル。二輪・四輪向け部品の主要生産拠点として東南アジア諸国連合(ASEAN)市場向けの供給を担う。

武蔵精密工業のタイ生産拠点ムサシオートパーツ(同社提供)

製品構成は二輪向けが約6~7割を占め、残りが四輪向けや汎用(はんよう)部品。主力製品はトランスミッションやギア、カムシャフトなど。供給先はホンダが約5割と、日系顧客との関係が事業基盤を支えている。

多様な戦略で電動化へ挑戦

こうした供給拠点としての役割を背景に、タイでは地域需要に応じた柔軟な生産体制を維持しながら、電動化シフトを見据えた事業展開を加速している。

ムサシのアジア地域統括拠点ムサシアジア(MAS)の津山誠二社長(肩書は取材当時)はNNAに対し、「多様な戦略オプションで、顧客の現調化ニーズに積極的に応えたい」と話した。ディファレンシャルや足回り部品などは内燃機関車(ICEV)でも電気自動車(EV)でも必要とされるため、主力事業として維持・強化する方針だ。同氏はまた、「電動化に伴う車両重量の増加で部品の軽量化ニーズが高まる中、技術力が競争力の鍵を握る」と強調した。

ハイブリッド車(HV)では、変速ギアやカムシャフトなど既存部品が引き続き必要とされるが、現調化できる企業は多くない。津山氏は「ムサシにとってはチャンスと捉え受注拡大へつなげていきたい」と自信を示した。

ムサシオートパーツのナワナコン工場(同社提供)
EV対応を進めるタイ事業の戦略について語った、ムサシアジアの津山誠二社長(左)とムサシオートパーツのペッチ社長=3月、バンコク(NNA撮影)

このほか、「電動化の潮流の中でもムサシのコア技術が生かせる領域は多く、むしろ新たな事業機会になる」(津山氏)とし、新領域を開拓する戦略を採る方針も示した。電動二輪向けには駆動ユニット「eアクスル」の需要開拓を進めている。タイのスタートアップ企業との協業を通じ、2027年の量産開始を目指す。

一方で、市場環境は厳しく、タイの自動車市場は家計債務の高止まりで低迷が続く。25年は前年からほぼ横ばいとなったが、津山氏は「26年も回復は不透明で、顧客の生産計画も慎重姿勢が強い」と指摘した。

ただ、中長期的には電動化の進展が需要を押し上げるとみる。電動二輪は普及率が1%台と低水準にとどまるが、都市部を中心に普及の兆しが出ており、インフラ整備や価格低下を背景に成長余地は大きいと判断している。

中国系・日系含め現調化チャンス拡大

ムサシは顧客基盤の拡大に向け、新規取引先の開拓を進める。中国で築いた関係を活用し、タイでも中国系完成車メーカーの供給網への参入を目指す。すでに中国系大手の監査を通過し、見積もり段階に入るなど、供給参入に向けた足場を固めつつある。

もっとも同社は「日系顧客を基盤としつつ新規顧客を取り込む」との方針を強調。リソースが限られる中で「選択と集中」を進め、重点顧客への対応力を高める。

同時に、第4次産業革命(インダストリー4.0)に基づき、タイ拠点でもスマートファクトリー化を推進する。人工知能(AI)を活用した設備異常の早期検知や予防保全、生産工程のデータ可視化による品質管理の高度化など、次世代生産モデルの構築に注力している。電動化製品に求められる高精度生産への対応力を高める狙いだ。

電動化がアジア全域で本格化する中、タイは政府主導でEV生産拠点化が進む。ムサシは既存の機能部品での強みを生かしつつ、電動化関連製品とスマートファクトリー技術の両面でタイ事業を進化させ、市場構造が大きく転換するASEANでの競争力強化を目指す。

<会社概要>

武蔵精密工業:

1938年創業。連結従業員数は2025年3月末時点で1万6,450人。25年3月期連結決算は売上高3,471億9,600万円。アジアのほか、欧州や北南米にも拠点を持つ。タイでは生産拠点2カ所と営業・購買拠点1カ所を展開。生産を担うムサシオートパーツは1987年設立。25年3月期決算の売上高は約53億バーツ(約256億円)だった。

>>本連載「タイビジネスインサイト」の記事一覧はこちら

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