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カテゴリー: ニュース
公開日 2026.07.10
東急は、国内の鉄道沿線開発の経験やノウハウを集積した「多摩田園都市開発」の街づくり事業を、2035年以降に海外でも一層強化する方向で取り組んでいることを明らかにした。既に進出した東南アジアのベトナムやタイなどで今後事業を拡大するとともに、インドシナ半島全域も視野に新たな事業展開の可能性を探る構想を描く。インドシナ地域は今後も高い経済成長が期待でき、現地の提携企業と協力して腰を据えた長期の都市開発を模索する。【飛世良範】

2億5,000万人の巨大市場
東急の国際事業を統括する藤原裕久専務執行役員がNNAのインタビューで語った。「多摩田園都市開発」構想は1953年に東急グループの事実上の創業者とされる故五島慶太氏が提唱し、民間企業主体の開発としては国内最大規模となる。
グループは構想に基づき、鉄道、バスの交通網整備に加え、住宅、商業ビルなどの不動産開発、百貨店、スーパーといった小売業やホテルの運営、学校や娯楽施設の誘致など街づくりを総合的に進め、沿線地域の価値や魅力を高める事業を続けてきた。
藤原氏は「国内外で広大な地域を連続性を持って50年、100年と長期間開発していく理念や手法は、かつての構想を受け継いでいる」と述べた。その上でベトナム、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーのインドシナ半島5カ国は「人口が計約2億5,000万人に上る巨大市場」と指摘。従来大規模な街づくりや住宅開発などの事業を推進してきたベトナムやタイを中心に今後も開発を推進する考えを示した。
ラオス、カンボジア、ミャンマーの3カ国は日本との良好な関係が長く続き、概して親日的な上に、経済が急速に発展する可能性は高いと予測。「市場として非常に魅力的だ」と述べ、新たな事業展開の候補地として注目していることを示唆した。
ベトナムからミャンマーに続くインドシナ半島幹線道路の「東西回廊」や「南部回廊」といった交通インフラの整備が一段と進めば、5カ国では日本の製造業企業などの進出や集積が進み、経済発展の潜在力が格段に高まることが期待される。この地域の政情がさらに安定すれば経済の一体性も強まると予想される。東急の構想はこうした情勢を踏まえたものとみられる。
人材供給、資金調達に対応
一方、国内の大型不動産開発は人口減、少子高齢化を背景に今後余地が限られる。「100年に1度」の巨大事業とされる東京・渋谷駅周辺の再開発計画は「2035年ごろには主要案件がほぼ完成し、不動産賃貸などの事業も安定する」と展望した。このため、35年以降の業務としては「海外事業が大きな核になる」と語り、渋谷再開発で知識を身に付け、経験を積んだ人材も活用し、アジアなどの海外事業の一段の高度化が図れるとの見方を示した。
難点としては資金調達を挙げた。「経済が急成長している分、金利も高い」とした上で、シンガポールに設立した拠点でアジアに展開する東急グループ企業の余裕資金を融通し合う仕組みをつくった。今後の事業資金需要への対応策の一助とする。
海外では現地の提携企業や従業員と利益を分け合いながら、長期にわたって持続可能な街づくりや不動産開発を推進することが事業の基本と強調。開発地域の住みやすさやイメージを向上させ、定住人口の増加を図り、地域経済を発展させる「多摩田園都市開発」の方式を信条としているという。
藤原氏は海外開発事業の重点分野の1つに「デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)」を挙げた。「現地の方々の導入意欲が強い。われわれも学びながら長期的に開発と運営に取り入れたい」と抱負を述べた。

ホーチミン郊外で街づくり

東急グループは五島慶太氏の長男でグループ中興の祖とされる故五島昇氏が「環太平洋構想」を掲げ、1970年代に海外の街づくり事業に乗り出した。だが、バブル経済の崩壊で90年代以降は海外事業を縮小し、グループの負債削減や「事業の選択と集中」による経営の立て直しを優先した。
現在の野本弘文東急会長が東京急行電鉄(現東急)社長に就任した翌年の2012年に海外開発事業を本格的に再開。ベトナム最大都市のホーチミン郊外で巨大な街づくり事業に着手した。
この「ビンズン新都市開発事業」では、地元資本と設立した合弁会社が約1,000ヘクタールの用地を鉄道の代わりにバス路線で結び、多くのマンションや一戸建て住宅、商業施設などを一体的に整備する計画が進んでいる。東急はさらに他にもホーチミン周辺で個別のオフィスビルや街づくりの事業も展開している。
藤原氏はこうした実績がベトナムの中央、地方政府に評価され「首都ハノイや北部の主要都市ハイフォンでも同様の開発事業を持ちかけられることもあるが、事業に着手するには十分な検討と時間を要する」と語った。当面は既存事業の推進に全力を挙げる考えだ。
次の100年の看板事業に
東急グループはタイでも地元の需要に応え、分譲や賃貸の住宅開発に力を入れている。首都バンコクではマンションや一戸建て住宅の分譲事業を展開。日本の多くの製造業企業が進出するタイ東部シラチャーでは日系企業駐在員の家族や単身者向けの賃貸住宅を整備し、運営している。
約50年前から土地を保有しているオーストラリア西部のパース郊外では地元資本と合弁で約4,000ヘクタールの用地を開発している。宅地分譲と並行してオフィス・教育・研究の拠点となるシティーセンターや専門学校を運営し、技術革新を促進する学園都市の街づくりを続けている。ベトナム、タイ、オーストラリア3カ国のこれまでの投資額は約1,300億円に上る。
東急は2022年に創業100周年を迎えた。次の100年を展望するに当たり、これまで70年以上にわたって同社の経営を支えてきた「多摩田園都市開発」のビジネスモデルを海外に移植し、大規模に展開する必要に迫られている。アジアを中心とした「田園都市開発」は今後の看板事業の1つになりそうだ。
<メモ>多摩田園都市開発 日本の戦後復興が進む1953年、東京への人口集中と過密が社会問題となる中、当時の東京急行電鉄(現東急)の五島慶太会長が自然と調和し、都市機能も完備した新たな街づくりを提唱する趣意書を発表したのが契機となった。東京都心から西南の多摩丘陵を中心とする地域に、鉄道などの交通網を整備し、沿線のさまざまな施設を総合的に開発する方式を推進した。東京都と神奈川県にまたがる開発地域の総面積は約5,000ヘクタール。

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