茶人気が急上昇、消費3割増 転換期迎えるタイの茶産業(上)

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茶人気が急上昇、消費3割増 転換期迎えるタイの茶産業(上)

公開日 2026.08.07

NNA掲載:2026年7月17日

タイの茶産業が転換期を迎えている。若年層を中心に、本物志向や個性的な味を求める動きが広がり、国内の茶消費量は過去10年で3割拡大したと専門家は指摘する。一方、北部を中心とする国内生産は需要を十分に賄うには至っていない。中国やベトナムなどからの輸入が大部分を占める中、国内の茶産業には農業研究の強化に加え、加工技術を生かした高付加価値化、海外市場への展開が求められている。

抹茶専門カフェMTCHでは日本産の抹茶や抹茶系ドリンクを提供する。価格は1杯120バーツから=2025年5月、バンコク(NNA撮影)

タイでは従来、茶は文化的な作法に基づいて味わう飲み物というより、のどを潤す身近な飲料として親しまれてきた。代表的なのが、鮮やかなオレンジ色と甘く濃厚な味わいが特徴の「タイ・アイスティー」だ。

国立メーファールアン大学で茶・コーヒー研究所茶部門長を務めるピヤポーン・チュアムチャイトラクン氏はNNAに対し、「約10年前、タイの1人当たり年間茶消費量は1キログラム未満だったが、近年では約1.3キロまで増えた」と指摘する。消費量の増加に加え、茶を選び、味わう際の消費者の意識も変わった。香りや味、健康効果を引き出すため、抽出方法に関心を持つ人も増えているという。「消費者の好みは非常に洗練されてきた。以前は単にのどを潤すため、あるいは味を楽しむために茶を飲んでいたが、今は本物らしさやオリジナリティーを求めている」。

若者が市場を押し上げ

かつては高齢層向けの伝統的な飲み物という印象が強かった茶は、若者の間にも急速に浸透している。外資系の茶飲料チェーンが手軽に飲める商品や、ミルク・フルーツ・花の香りを組み合わせた新しい茶飲料を相次いで投入したことが市場の拡大を後押しした。

代表例が、中国の大衆向けフルーツ・ミルクティーブランド「ミーシュエ(MIXUE、蜜雪氷城)」だ。2022年にタイ市場へ参入し、1杯25バーツ(約121円)からという低価格と積極的なフランチャイズ展開を武器に、25年2月までに全国272店へ拡大した。

一方、高価格帯の市場では、茶に含まれる機能性成分への理解が広がっている。ピヤポーン氏によると、抗酸化作用のあるカテキンなどに注目する消費者が増え、専門店で1杯100~300バーツを支払うことにも抵抗が薄れている。専門店は深い商品知識に加え、明確なブランド設定やストーリー発信で、価格に見合った価値があることを消費者に伝えている。

大型複合施設「ワン・バンコク」では、抹茶製品を集めたフェスティバル「So Much-a MATCHA Market」が6月24日から開催された=2日、バンコク(NNA撮影)

茶輸入量は中国、輸入額は日本が最大

高まる需要を背景に、タイは年間2万トン前後の茶を輸入している。タイ商務省の貿易統計によると、最大の輸入元は中国で、25年の茶輸入量は6,897トン。これに続いてベトナム、インドネシアとなった。3カ国からの輸入量は全体の8割を超え、低価格の茶製品や、レディー・トゥー・ドリンク(RTD)飲料などの加工原料に使われている。

一方、金額ベースとなると日本が最大となる。25年の日本からの茶輸入額は5億5,080万バーツで、2位の中国の3倍近い。日本産茶は高付加価値品が中心で、1トン当たりの平均輸入価格は中国産の約24倍に上る。

関税制度も輸入動向に影響する。タイは茶を関税割当制度(TRQ)の対象品目として管理しているためだ。輸入枠は年間625トンで、枠内には30%、枠外には90%の関税が課されるのが原則。日本産茶は日タイ経済連携協定(JTEPA)に基づき、輸入業者が割当枠を確保し、必要な証明要件を満たせば無税となるが、枠外では90%となる。中国産は枠内が30%、枠外が90%。一方、ベトナムやインドネシアなど東南アジア諸国連合(ASEAN)自由貿易地域(AFTA)の対象国からの輸入は、割当枠にかかわらず無税となる。

北部高地で生産

タイ国内でも、北部高地のチェンマイ、チェンライ、メーホンソンを中心に茶を生産している。農業・協同組合省農業経済事務局(OAE)の統計によると、タイの生葉収穫量は25年に15年比で約2倍となったものの、19年以降はおおむね横ばいで推移している。足元の生葉収穫量は10万トン程度で、乾燥茶葉に換算すると2万5,000トンほどにとどまる。中国やベトナム、インドネシアといったアジアの主要産地と比べると生産は小規模だ。生産量の約9割を、在来種で丈夫なアッサム種が占めている。国内産は業務用原料として流通する一方、カフェや専門店が求める品種・品質の茶は輸入への依存度が高い。

国内加工技術に強み

ピヤポーン氏によると、タイの茶産業は過去10年、主に4分野の技術革新が進んできた。農家教育を通じた茶園管理の改善、温度・湿度管理技術による加工品質の安定化、食品・飲料・化粧品産業向けの国産茶抽出物の開発、カフェや茶園ツアーを通じた茶観光の振興だ。茶観光は農家の追加収入の手段としても期待されている。

中でもタイの強みは加工技術にある。地場生産者は茶葉から複雑な香りや味を引き出す技術に優れ、フレーバーティーやブレンド茶、茶抽出物などの商品化が進んでいる。一方で、農業研究の不足が産業としての弱みだ。主要な茶生産国に比べて、独自の特徴を持つ品種や病害虫に強い品種などの開発が十分に進んでいないという。

ピヤポーン氏は、タイ茶の競争力をさらに引き上げるためには国際的な認知度向上が必要だと指摘する。「国内市場での支持に頼るだけではなく、海外市場との関わりを強めることが不可欠だ」と話した。

チュイフォン・ティーでは広大な茶畑にカフェを併設する。観光地としても人気=1月、チェンライ県(NNA撮影)

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