連載: 日系スタートアップ
公開日 2023.02.14
昨年11月16日に開催されたスタートアップイベント「ロック・タイランド#4」で、ピッチイベントに登壇した日本のスタートアップ企業紹介の最終回となる第9回は、独自開発のAIカメラを用い人の行動などを可視化し、スマートシティーの実現を目指すNeural Group (Thailand)(ニューラルグループ)だ。同社の竹中一真最高経営責任者(CEO)兼マネージングディレクターのプレゼンテーションを紹介する。
目次
ニューラルグループは、2018年に創業したAI(人工知能)のスタートアップです。2020年に東京証券取引所に上場しました。
我々のコア技術は、独自のAIによる画像認識です。カメラで撮影した映像を、速やかに、精度高く解析し、世の中の情報を可視化します。我々の技術は、日本各地のスマートシティーで活用されています。
行政、地下鉄、デベロッパー、テーマパーク、物流事業者、商店街、多くの方々に利用して頂き、これまでにない体験をお届けしてきました。こちらの事例の多くはPoC(概念実証)ではなく、継続的なサービスとしての導入事例です。高温多湿、夏は4月のタイと同じくらい暑い日本で安定稼働を実現し、タイでも安心してご利用頂けるノウハウを蓄積してきました。
これまでの国内での実績を基に、このたび初の本格的な海外展開の拠点として、ここタイの地を選びました。11月4日に法人を設立し、まずは5人用の小さなオフィスで、タイ人、日本人のジョイントチームで立ち上げ作業を行っています。今後、エンジニアを含めて、タイでの採用を行い、事業を拡大させていく予定です。
我々の技術を、どうタイで活かしていくか、いくつか活用方法をご紹介します。スクンビット通りを撮影した映像です。カメラ1つで、交差点に行き交う車、バス、バイク、そしてトゥクトゥクの数、進行方向、通行時間を計測できます。駐車場にカメラを1台設置すれば、そのカメラから見えている駐車マスに車が停まっているのか、空いているのか、リアルタイムで一瞬に把握することができます。
こちらは商業施設内を撮影した映像です。各フロアにどれくらい人が通っているか、エスカレーターで3階に上がってきた人はどれくらいか、グループで来ているのか、1人で来ているのか、人流のデータを取得することができます。
こうした精度の高い技術を、どう活用していくのか、そこが一番重要なポイントです。単に世の中の動きを可視化するだけではなく、そのデータを使ってどう人々の生活を便利にしていくか、どうアップリフトしていくかが肝心です。
我々は、AIによる解析を通して、これまでにない新しい体験を届ける、ニューカスタマージャーニーを提供しています。例えば、駐車場を例にご紹介します。
いつも混んでいるショッピングモールに向かう途中、信号待ちをしている時間にスマートフォンで確認すれば、混雑状況がリアルタイムで分かります。「いつも停めているところは混んでいるんだな。それなら今日は空いている少し離れたところにしておこう」と事前に作戦を立てることが可能です。
また、駐車場に着けば、LEDビジョンが空いているスペースまで誘導してくれます。どこが空いているのか、車から覗きこまなくても、スムーズに駐車が完了します。駐車場でイライラしていた時間を施設で楽しむ時間に変えることで、人々の生活に便利さ、楽しさを提供することができます。
商業施設のなかに入ると、どこも混んでいるように見えます。ただ、サイネージを見ると、ボーリング場のクーポンが出ています。ボーリング場にいくと、お得に、そして待ち時間なく楽しむことができました。こうした施設の中の混雑状況をAI解析し、空いているフロアに誘客するために、リアルタイムでクーポンを発行することができます。
それだけではありません。サイネージに内蔵されたカメラによってこの広告を見ている方の視聴率を取ることができ、どれだけの人が表示されたクーポンを見たか、どんな年齢の人がクーポンに興味を示したのかという効果分析まで行えます。届けたい情報を、欲しいと思う人に届けることで、新たな体験価値が生まれます。
こうした新たな体験はあらゆる産業で活用ができます。物流施設の入口と出口のカメラでナンバープレートを読み取れば、トラックの滞在時間を計測できるだけなく、システムと連携して自動チェックイン・自動チェックアウトが可能です。ドライバーはストレスフリーに、ビジョンの案内に従って、荷物をピックアップするバースに向かえます。
また、監視カメラを活用して、危険エリアに入った瞬間にアラートを鳴らすことや、高価な商品が置いているゾーンに人が入ると担当者にメールが届くといった連携も可能です。
こうしたAIサービスの導入には、大規模な投資が必要だと思われがちです。しかし、あらゆる街中のシーンで活用頂くには、ミニマムな機器であることが重要です。
我々のサービスは、既存のカメラに、小さなエッジAI機器を取り付けるだけで準備は完了します。我々のAIは、独自の技術によりAIを小型化し、このエッジAI機器の中で全ての解析が完了します。解析結果は軽いテキストでクラウドに格納されます。そのため、大規模なサーバールームやクラウド、頑強なネットワークは必要ありません。
このエッジ機器は年々小型化しており、今やスマートフォンのように、ポケットから取り出せるような大きさです。またエッジAIの良さは、小規模な設備投資、早い解析スピードだけではありません。
従来のクラウドで解析するAIは、カメラの映像を一度クラウドまで送る必要がありました。個人情報がクラウドに移管されることで情報の厳格な管理が必要となり、もちろんハッキングのリスクに備える必要もあります。しかし、我々のAIは、映像の不要な情報をすぐにエッジ機器内で削除し、解析が終わった個人を特定されないテキストデータのみクラウドに送信します。
このような技術は、6月に施行され、多くの事業者が頭を悩ましているタイの個人情報保護法(PDPA)にも対応しています。最低限の設備投資で個人情報を守りながら、最新の技術を使って人々に新たな体験を届ける。これが、ニューラルグループが実現していくAIスマートシティーです。
ここタイの地で、本日会場にお越しの皆様と一緒に、ニューエクスペリエンスジャーニーを広げていくことを楽しみにしています。
TJRI編集部
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