トヨタ、タイで燃料電池車生産 ハイラックス、年産能力3千台

最新記事やイベント情報はメールマガジンで毎日配信中

トヨタ、タイで燃料電池車生産 ハイラックス、年産能力3千台

公開日 2026.11.06

【NNA掲載:2026年10月20日】

トヨタ自動車はタイで燃料電池車(FCV)の生産に乗り出す。対象車種はピックアップトラック「ハイラックス」で、既存工場の生産ラインを改修して年産3,000台の能力を整え、2027年12月から生産を開始する計画だ。当面は全車両を海外市場へ輸出する。タイでFCVが量産されるのは初となり、主要部品は国外からの調達が中心になるとみられる。トヨタの投資を通じてサプライチェーン(供給網)の構築が進むかが焦点となる。

2025年11月にタイで披露した新型「ハイラックストラボ」のBEVモデル(NNA撮影)

タイ投資委員会(BOI)が19日、トヨタ自動車のタイ法人タイ国トヨタ自動車(TMT)によるFCV版ハイラックスの生産に向けた14億9,000万バーツ(約70億円)の投資を承認したと発表した。28年以降、欧州、オーストラリア、ニュージーランドへ輸出するとみられる。

BOIによると、東部チャチュンサオ県のバンポー工場で生産する。ハイラックスの既存生産ラインを活用し、水素貯蔵タンクや燃料電池、バッテリーパック、電動モーター、エネルギー制御ユニットなどの主要部品を組み立てる。生産と車両試験に向けて工場内に水素充塡(じゅうてん)ステーションを設置する計画もある。

BOIは自動車生産サプライチェーンの拡充に期待を寄せる。トヨタは空調・冷却システム、シート、ホイール、タイヤ、ワイヤーハーネス、内装部品など、年に約6億4,000万バーツ相当の原材料と部品を現地調達する計画だ。

タイ資本の企業を中心に、現地サプライヤーの能力構築も支援する。製造や品質管理、安全、環境管理、人材育成などの分野を対象に、技術やノウハウを移転するという。

BOIのナリット長官は発表資料を通じて「タイの部品メーカーが次世代自動車のサプライチェーンに参画する機会が広がる」とトヨタの投資を歓迎した。

欧州・豪州の需要に対応

トヨタは「マルチパスウェイ(全方位戦略)」の取り組みの下、バッテリー式電気自動車(BEV)やFCVなど、多様なパワートレインを世界展開する方針を打ち出している。

FCV版のハイラックスを巡っては、23年に英国で試作車を発表。昨年11月に初のBEV仕様のハイラックスをタイで披露した際は、FCV版を開発し、28年以降に欧州やオセアニアに投入する意向を示していた。

MUリサーチ&コンサルティング(タイランド)の池内勇人コンサルタントは、「トヨタのFCV完成車の量産拠点となるのは、日本に次いでタイが2カ国目」と解説する。「タイはトヨタにとってハイラックスなどIMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)シリーズの世界的な生産基地。既存の生産ラインや現地サプライヤー網を活用してFCV化を図ることが最もコスト効率・品質面で理にかなっている」と分析する。

タイの自動車業界に詳しい経営コンサルティング会社のアーサー・ディ・リトルの徳田有亮氏(シニアマネジャー)も、ピックアップトラックの既存サプライチェーンの存在が土台にあると説明した上で、「輸出先の欧州・豪州では、タイで生産したBEVのピックアップトラックを投入しているが、航続距離・充電時間・積載量の観点で制約が大きく、建設・鉱山などのB2B用途では市場ニーズを満たしきれていない可能性がある。その解決策としてFCV版を投入することが想定される」とトヨタが投資に動いた背景を読み解く。

現地調達の拡大が焦点

タイ政府と方針が一致したことも投資の決め手になったようだ。タイ政府は電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、FCVなど、多様なパワートレイン技術に対応する世界的な自動車生産拠点となることを目指している。BOIは26年9月時点で電気自動車関連産業で203件の投資促進事業を承認し、投資総額は1,410億バーツを超える。

池内氏は「BOIによる政策整備が今回の投資の強い呼び水になったと考えられる」とみる。

今後は、トヨタの生産開始によってタイでFCVサプライチェーンの構築が進むかが焦点になりそうだ。

徳田氏は「FCVはタイだけでなく先進国でも未だ黎明期の状況で、需要が立ち上がるかが課題。トヨタによる投資も組付設備が対象となっており、需要が拡大するまではコンポーネントは輸入対応することが想定される」と生産面での課題を指摘した。

池内氏は「サプライチェーンについては初期段階では日本などからコア部品を輸入して組み立てる作業が中心になる」と予想しつつ、生産量の拡大に伴い熱管理システム、配管、高圧バルブ、水素センサーなどの周辺部品から現地調達が進むとみる。「中国系メーカーが後追いする可能性は十分にある」との認識だ。

トヨタはバンポー工場を含めタイに3カ所の工場を構える。BOIによると累計投資額は2,000億バーツ超。年間の生産能力は77万台を超え、100カ国・地域以上に輸出している。

>>本連載「タイビジネスインサイト」の記事一覧はこちら

NNA ASIA

12カ国・地域から1日300本のアジア発のビジネスニュースを発信。累計100万本以上の圧倒的な情報量で日系企業のビジネス拡大に貢献します。

NNAの購読について詳細はこちら

Recommend オススメ記事

Recent 新着記事

Ranking ランキング

TOP