カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2015.09.21
タイ中央銀行が発表した2015年6月の重要な経済指標によると、タイ経済は引き続きゆっくりとした回復基調にあります。経済のけん引役は観光と公共投資でした。
中国と東南アジア諸国連合における需要の低迷を背景とした輸出の落ち込みで景況感が悪化し、個人消費を押し下げました。
タイ経済は引き続き穏やかな回復基調
6月の民間消費は前年同月比で0.6%下落したものの、前月比では0.9%上昇しました。通信など非耐久財の支出が改善した一方、耐久財への消費は引き続き低調でした。農家収入の低迷が影響しました。非農家収入は横ばいでしたが、経済回復の遅れや干ばつで消費者信頼感が悪化し、高価格商品の購入を延期する傾向が出ました。
一方、民間投資は前月比で0.2%、前年同月比で0.9%それぞれ上昇しました。国内の機械販売増が指数を押し上げました。建設投資は既存の生産設備の効率化への投資が大半を占め、新規投資は少数でした。経済の回復や政府のインフラ投資計画が明らかになるのを様子見している事業者が多いと見られます。
6月の輸出は、前年同月比8.9%減の176億8000万米ドルとなり、前月から引き続き収縮しました。中国経済の減速で化学製品やハードディスク駆動装置(HDD)の輸出が減少したほか、世界的に電気製品の需要が落ち込みました。自動車は、新モデルへの切り替え時期で中東向けが特に下落しました。
商務省が発表した2015年7月の貿易統計によると、タイの輸出額(約182億2000万米ドル)は前年同月と比べ、6月の7.9%減から3.56%減になり、収縮幅は前月に比べて減少しました。世界経済の低迷が、タイの輸出低迷につながっています。
品目別に見ると、農産物・加工品で天然ゴムが前年同月比18.5%増となり、2ヵ月連続で拡大傾向にあります。一方で、工業製品では、大手自動車メーカーがピックアップトラックの新モデルの輸出開始により、自動車・部品が同6.8%増となりました。ほかの主要工業製品では、コンピュータ・部品が8.4%減、電子回路が同9.7%増となりました。
中国経済の成長具合と、アメリカの政策金利の引き上げのタイミングは、世界の商品価格に下押し圧力がかかっているため、商品輸出に依存しているタイの輸出相手国の経済(アセアン、中東、アフリカなど)にマイナス影響を与えると考えられます。また、タイバーツ相場が軟化傾向にあるものの、タイの輸出競争相手国の通貨も同様な傾向にあり、バーツ相場の軟化による輸出へのプラス影響は、限定的だと見込まれます。従って、カシコンリサーチセンターは、2015年通年のタイ輸出額の見通しを従来予測である前年比1・7%減から、新たな予測の同4.0%減に下方修正しました。
工業生産に関しては、5月の前年同月比7.6%減から同8.0%減となり、4ヵ月連続でマイナス成長となりました。国内向け、輸出向けとも低調でした。工業製品需要の軟化を受け、一部の工場では在庫が減少しても生産を停止しています。
生産品目別ではHDDが21.7%減と2桁の落ち込みとなりました。
6月にタイを訪れた外国人観光客は53.1%増の228万3000人で、前月の38.2%増から伸び率が大幅に拡大しました。中国やマレーシアからの旅行者が堅調なうえ、ロシア人観光客の回復も続きました。
商務省が発表した7月のヘッドライン・インフレ率は、6月の前年同月比1.07%減から同1.05%減となり、7ヵ月連続で減少しました。品目別にみると、食品・飲料は前年同月比1.10%上昇しました。卵・乳製品と肉・魚がそれぞれ2.79%、1.03%下落した一方で、果物・野菜はプラス7.76%と急騰しました。食品・飲料は、干ばつの深刻化を背景に前月比でも0.41%上昇しました。非食品は2.22%下落しました。石油が22.53%と大きく落ち込んでいることで、運輸・通信が6.95%下落しました。また、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.94%上昇しました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年8月14日には1米ドル=35.22バーツの終値をつけ、6月末には1米ドル=33.78から軟化傾向を見せました。その原因は、タイ経済回復は予想より緩やかな数字で、タイバーツが軟化したことです。さらには中国の元安誘導政策により、ドル対元が上昇し、タイバーツの軟化の影響を与えました。一方で、バーツ対円の変動について、8月14日には100円=28.36バーツの終値をつけ、6月末の100円=27.59から軟化傾向を見せました。
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THAIBIZ編集部
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