カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2014.12.28
2013年に日本からASEAN地域に流入した海外直接投資(FDI)の金額は、236億米ドルという歴史的な金額に達しました。過去10年間、日本企業にとって最も重要な投資先であり続けてきた中国への同年における日本からのFDI金額を上回りました。日本から中国へのFDI金額は、2012年の135億米ドルから2013年は91億米ドルまで減少しました。その主な理由は、中国国内の労働コスト上昇、歴史的な要因、東シナ海の小群島を巡る紛争も原因の一部をなすと思われます。また、2015年末のASEAN経済共同体(AEC)の発足がもたらす恩恵もASEAN向け投資の支援材料の一つになっていると考えられます。カシコンリサーチセンターは、これから先の時期においても日本からASEANへのFDIインフローの流れは、AECにより継続すると予測します。
日本企業による投資のインフローの受け入れ面では、インドネシアとベトナムがタイを追い上げつつあります。日本企業がインドネシアとベトナムへの投資に関心を寄せる大きな要因は、人口がそれぞれ2億5000万人、9000万人であり、国内の消費市場の規模が大きいことに加えて、中間層が増加しつつあることから、耐久品その他各種消費財の購入に向けた潜在力を持つ市場だと考えられる点にあります。
しかしながら、日本企業の経営者は、依然としてタイをASEAN域内の投資センターとして重視し続けています。日本企業は、長年に渡りタイ国内に拠点を構えてきており、タイ企業との間に緊密な提携関係を築いています。
ちなみに、タイ、インドネシア、ベトナムに投資する日本企業の主要産業別の2013年末における累積投資額の全体比は、下記の通りです。
・タイ:輸送機械・同部品工23.3%、金融・保険業23.2%、電機工業12.3%、金属工業9.7%
•インドネシア:輸送機械・同部品工業27.6%、金融・保険業24.8%、化学・医薬品工業8.4%、工作機械工業4.2%
•ベトナム:金融・保険業29.1%、輸送機械・同部品工業11.2%、電機工業9.5%
このような日本企業の投資動向から、輸送機械工業と工作機械工業が日本企業にとってASEAN地域への投資を選択する2大主要産業であることがわかります。輸送機械工業では日本の企業は、ASEANが規模の大きい市場であり、消費者の購買力が上昇しつつある国に注目しています。工作機械・同部品工業に関しては、日本企業は、労働者のスキルが比較的高く、労働人口も多い国、さらには賃金が依然として低レベルにとどまっている国に注目しており、主に輸出向け生産に力を入れています。
近年、タイでは労働賃金コストが大幅に上昇し、競争力に影響を及ぼし始めました。このため、日本企業の経営者は、AECの枠組みに基づく域内の共同生産拠点化から得られる恩恵に依拠して、タイ+1戦略を採用するようになっています。タイ+1戦略とは、タイを高度な労働技能を必要とする製品の組立拠点および地域の研究開発拠点として利用する一方で、労働集約型で複雑でない技術しか必要としない部品の生産拠点は近隣諸国に移転し、近隣諸国で製造された部品をタイに輸入して、完成品に組み立てて輸出するという戦略です。すなわち、AECの枠組みに基づき、国境を越えた産業クラスターを作り出していると考えられます。
タイの企業はASEAN地域に関する知識と専門性を有しているため、タイ国内および域内で活動する日本企業と知識を共有し、共同で投資を行なっていくことが可能です。現在、投資対象としてはカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(CLMV)諸国に重点が置かれています。その主な理由は、タイがインドシナ半島の中央部に位置しており、陸・海・空の様々な交通・運輸手段で近隣諸国と結ばれている、という特徴のためです。このため、メコン川流域サブリージョンの輸送ネットワーク開発を活用することで、サブリージョン内の輸送コストを圧縮することが可能です。現在までに日本企業の一部は、部品生産拠点のタイ隣国への移転を進めており、ラオス国内にはカメラ・レンズ部品工場、カンボジア国内には自動車の電線配線網の組立工場などが設置されています。
■タイ経済最新情報 11月号
2014/11/28 (No.105)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン
THAIBIZ編集部
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