カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2016.12.24
目次
9月のタイ景気は引き続き拡大
タイ中央銀行が発表した2016年9月の重要な経済指標によると、前月に比べ速いペースで拡大しました。政府支出が引き続きけん引役で、輸出の増加も寄与しました。一方、民間消費は回復ペースに陰りが差し、民間投資は停滞が続きました。
9月の民間消費は前年同月 比2.5%上昇したものの、前月比0.1%増で横ばいとなりました。農業所得は引き続き改善していますが、天然ゴムや果物などの一部の農産物の価格しか上昇していないため、農家の消費には依然として慎重な動きが見られます。また、8月に発生した南部7県の連続爆弾事件でホテル・レストラン業が失速したことも一因です。
一方で、民間投資は前年同月比0.1%減となり、ほぼ横ばいとなっています。再生可能エネルギーなどの分野で投資が加速したものの、全体としては投資の回復は一部の産業に偏っています。製造業では集積回路やエアコンなどで設備投資が引き続き増加しました。建設投資は横ばいとなっています。
9月の輸出は、前年同月比3.5%増の193億米ドルとなりました。家電や電子製品などが2桁増と好調で、家電ではCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)や欧州、米国向けが伸びました。
商務省が発表した2016年10月の貿易統計によると、タイの輸出額(約178億 )は前年同月比4.2%減となり、前月のプラス成長からマイナス成長に転じました。タイの主要な貿易相手国・地域である欧州連合と米国向けの輸出は特に不振でした。また、中東・ラテンアメリカ諸国の購買力は、原油価格と商品価格がまだ低い水準で推移していることにより、低下傾向にあります。
品目別に見ると、10月の工業製品の輸出額は、同2.7%減となり、前月の同4.2%増から急落しました。とりわけ、コンピュータ・部品の輸出が同9.3%減、家電製品が同3.0%減、電子回路が同8.4%減となりました。一方で、農産物・加工品は、前年同月比6.5%減少しました。砂糖、コメ、キャッサバが2桁減となったことが響きました。
2016年9月の工業生産に関しては、前年同月比0.6%の上昇で、2ヵ月連続で前年同月からプラスとなりました。エアコンは、欧州と東南アジア向けの輸出が好調で生産が増加したほか、電子部品はスマートフォンの新型機種の発売が好材料で生産が伸びました。しかしながら、自動車は商用車の国内販売減と中東向け輸出の収縮の影響から生産が減少しました。
サービス・セクターは、特に、観光業の成長が前年同月比で引続き拡大しました。外国人旅行者数は前年同月比18.3%増の241万人と好調拡大を維持しました。しかしながら、中国人観光客のゼロダラーツアーの取締や、南部の爆弾事件で渡航を延期するケースも見られ、前月からの伸びが鈍化しました。
商務省が発表した10月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0.34%の上昇で、前月の同0.38%増を下回りました。食品・飲料部門の伸びが2ヵ月連続で鈍化したものの、非食品が23ヵ月ぶりに上昇に転じ、全体でもプラスを維持しました。
品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比0.89%の上昇で、前月の同1.47%増から伸びが鈍化しました。米・粉製品以外はプラスで、特に調味料が同1.51%と高騰しました。また、非食品部門は0.02%の上昇となりました。運輸・通信のうち燃料石油が0.34%上昇となるなど、住宅が1.15%下落した以外はおおむねプラスでした。
一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.74%の上昇で、前月から伸びが横ばいとなりました。
米国大統領選後、トランプ次期大統領が会見で大統領にふさわしい発言をしたことが印象付けられ、市場に与える負の見方が弱まりました。その一方で、トランプ次期大統領が打ち出している規制緩和や大幅減税、大規模なインフラ投資拡大などに注目が集まりました。大規模インフラ投資が行われれば米国の景気が活性化するという期待感が高まっています。そして、これらの政策を行うためには国債の発行が必要であり、長期金利が上昇すると期待され、米国に資金流入が進むと予想されます。これがドル高の要因の1つになっています。
円対ドルの変動は、一時1米ドル110円台まで円安に進みました。バーツ対ドルの変動は、継続的に1米ドル35バーツ台となり、バーツ安傾向を見せました。
一方、バーツ対円の変動について、タイの景気回復がバーツを押し上げました。2016年11月14日には100円=32.73バーツの終値をつけ、2016年10月12日の100円=34.23バーツから円安傾向を見せました。
ビジネス投資向けの日本・カンボジア協会(Cambodia-Ja-pan Association for Business and Investment)の情報によると、2016年第1四半期にカンボジアで創業した日系企業の数は、前年同期比40%増の262社となりました。この数字は、日系企業がもう1つの投資先国としてカンボジアを重視していることを反映しています。また、日本からの直接投資は、多くが製造業、とりわけ自動車向け電子部品および自動車部品に集中し、カンボジアの輸出商品の多様化を手助けしています。これは、輸出、雇用、および経済システムにおける衣料工業の役割と経済的依存度を引き下げようとするカンボジア政府当局の政策方針にも合致しています。
カンボジア政府当局は、カンボジア経済を牽引する重要な輸出商品である衣料品の輸出に限界が見えつつある中、輸出商品を多様化し、他の製造業分野、とりわけ電子部品および自動車部品工業分野で日系企業の直接投資を誘致することで製造業のレベルを底上げしようとしています。このことは、繊維・衣料製品の輸出の割合が、2010年の81%から2015年には63%になっていることからも成果が見られます。一方で、同一期間における電子部品と自動車部品の輸出は、2010年時点で輸出額全体の僅か0%と2%だったのが、4%と6%に上昇しました。この2グループの輸出商品には、カメラ・ビデオ組立部品、ワイヤー・ケーブル、電機モーター・発電機、シート部品などがあります。
カンボジアの輸出商品の多様化は、次の要因によります。
「タイ+1戦略」の下、日本からの投資の多くがカンボジアの製造業に集中:ASEAN経済同体(AEC)により、タイとカンボジア間の関税が撤廃されたメリットに加えて、タイよりも安価な人件費を利用できるため、カンボジアはタイの生産拠点とは別にプラスワンの生産拠点として利用されています。その結果、2011〜2015年の日本からの直接投資の総額は、カンボジアが受け入れたすべての直接投資額に占める比率が1994〜2010年の僅か0.7%から5.5%に上昇しました。
カンボジアの生産分野と地域内の生産ネットワークとの結びつき:近隣諸国との運輸網開発や国境地域の特別経済区の設置は、繊維・衣料工業以外の他分野への投資促進を進めるカンボジアの2015〜2025年工業開発計画に基づいたものです。カンボジアは、近隣諸国における生産分野、とりわけタイの自動車工業とつながるための生産拠点として興味を持たれるようになりました。このことは、タイのカンボジアからの輸入額が2011〜2015年に年率平均で41%増加し、輸入商品の多くが川中商品になっていることに見て取れます。
農業分野の余剰労働者:カンボジアでは農業分野の労働者数 が最も多く、2014年時点で国内の全労働者の45.3%(390万人)を占めていました。よって、成長しつつある製造分野を支えるのに十分な数の労働力が確保できます。
カシコンリサーチセンターは、カンボジアにおける2025年の電子部品と自動車部品の輸出が輸出額全体に占める割合は、それぞれ2015年の僅か4%と6%から10%と14%に増えると予測します。一方、繊維・衣料の輸出の割合は、依然としてすべての輸出額の半分 近くを占めると見込まれます。
”カンボジア経済を牽引する重要な輸出商品である衣料品の輸出に限界が見えつつある中、カンボジア政府は輸出商品を多様化し、他の製造業分野、とりわけ電子部品および自動車部品工業分野で日系企業の直接投資を誘致する政策を有している。”
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THAIBIZ編集部
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