カテゴリー: 組織・人事
公開日 2024.09.10
企業経営において、従業員の重要性は誰もが認めるところです。ピーター・ドラッカーは「マネジメントとは人に関わるものである」と述べ、企業経営における従業員管理の重要性や、従業員の活用が企業の成長と成功に直結することを強調しています。また、実際に企業経営を行うマネジメント層からも、「弊社の一番の強みは従業員です」という声を聞くことは少なくありません。
では、従業員の質だけで他社との差別化を図ることはそもそも可能なのでしょうか。この問いを考えるうえで、私はかつて先輩経営者に以下のようなコメントをいただいたことがあります。
ナヴァル・ラヴィカントは、従業員を動かすことがとんでもなく難しいことであるがゆえに、事業を成長させるために必要な要素として考えられるものの中で従業員が生み出す「労働」は最悪の要素であると喝破しています。加えてタイで働く日本人のように、従業員の多くを占めるタイ人との文化・言語の壁がある状況では、さらに従業員管理は難しくなります。
このため、従業員の質に依拠して他社との差別化をしようとすることは、そもそも非常に管理の難しい経営資本を使って他社との差別化を図ろうとしていることになります。
例えば、「弊社は従業員が素晴らしいから、社内の詳細なルールやプロセスは不要だ」という言説があったとして、それがただ単純に経営者がそういったルールやプロセスを作る時間や能力がないだけであるとすれば、実際は従業員はルールやプロセスがない状況で混乱しているかもしれません。
経営者が自分の仕事をすべて遂行したうえで従業員の質で勝負しているなら良いですが、従業員の質という概念を経営者が本来やらなければならない仕事を放棄するための言い訳にしていないか、というのは、経営者の自分の行いに関する戒めという意味でも重要でしょう。
シリコンバレーの有名企業は、従業員が優れているから業績が良いのだ、という言説も見られます。では、仮にこれらの企業が例えば時代遅れの製品を売る会社だったとして、従業員が優れていたら良い業績を上げられるのでしょうか。また、販売している製品は別にして、経営者が選択した事業戦略は実行する価値があるものなのでしょうか。
このように、そもそもビジネスとしてそれはやる意義があるのか、というのは十分に検討する余地のある内容です。仮にそうでない場合、従業員の質はビジネスの成功とは相関しないでしょうし、仮に事業戦略はないが、みんな頑張れ、とやっているようであれば、経営者としての責任逃れですらあるでしょう。
従業員は引き続き重要な資源であり続けますが、経営者は従業員の質以外の要素でも差別化を図り、複数の戦略を組み合わせることで、持続可能な競争優位性を確立することが求められるといえるでしょう。
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Biz Wings
CEO & Founder
倉地 準之輔 氏
監査法人、外資系企業勤務を経て2013年来タイ。2015年にBizWings (Thailand)Co., Ltd.を設立。在タイの複数公的機関でアドバイザーを務める。公認会計士(日本)。経営学博士(DBA)。
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