日本の親会社から駐在員を派遣するとタイで課税される?

ArayZ No.124 2022年4月発行

ArayZ No.124 2022年4月発行タイの労務 -従業員の雇用前から退職まで-

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日本の親会社から駐在員を派遣するとタイで課税される?

公開日 2022.04.10

Q:日本の親会社から駐在員を派遣すると、派遣元である親会社がタイで課税される
可能性があるという話を聞いたのですが、本当でしょうか?

A:残念ながら、可能性はあります。

駐在員の派遣元である親会社は、当該駐在員の人件費相当額について、親会社がタイにおいて行うサービス料として利益を計算し、タイで法人税を納税しなければならない」とするタイ税務当局の公式文書が存在します(※1)。

(※1)タックスルーリング(2015年9月23日付 No.0702/8590)。個別企業からの照会に関するタイ税務当局からの見解が示されている。なお、本文では法人税に加え、源泉徴収税、VATおよび個人所得税についても言及されている。

日本企業がタイに現地法人を設けて事業活動を行う場合、通常タイで親会社が法人税を課せられることはありません。ただし例外として、親会社がタイ国内に事業を行う一定の場所等(税務上「恒久的施設」と呼びます)を持っていると税務当局からみなされた場合、親会社はタイで法人税を納税しなければならない、というルールがあります(※2)。

(※2)日タイ租税条約第七条。あたかも当該企業がタイに存在するかのような課税関係が発生することになるため、現実には法人税だけではなく、VAT等他の税金も発生する。

「恒久的施設」には、支店や工場といった物理的な施設に加え、従業員がサービスの提供を継続的に行っている場合も含まれます(※3)。

(※3)日タイ租税条約第五条。

このため、例えば親会社がタイで従業員を使ってサービスを継続的に(厳密には12ヵ月の間に合計6ヵ月を超える期間)行っているとみなされた場合、タイで法人税を課税される可能性がある、ということになります。

ここで当該公式文書は、日本の親会社とタイ現地法人の間で合意された任務の遂行のために親会社からの従業員をタイに1年以上継続的に派遣する契約があり、派遣期間において当該従業員の親会社社員としての地位が継続されること等により、当該従業員は親会社の「恒久的施設」にあたる(日本の親会社従業員がタイでサービスの提供を継続的に行っている)と判断し、日本の親会社は当該従業員に支払われる金額を基準にしてタイで法人税を納税しなければならない、という結論を導いています(※4)。

 (※4)従業員に支払われる金額なので、最終的に会社が受け取る金額ではない(会社の収益ではない)が、このような結論を導いている。

日本企業の労働慣行を鑑みると、日本の親会社からタイ現地法人に駐在員を派遣する場合、法人間で派遣期間の業務内容等を定めた出向契約を締結し、当該駐在員の親会社社員としての地位を継続させるのが一般的と思われます。

これを考慮すると理論上、駐在員を派遣している日本の親会社は一般的にタイで法人税を納税しなければならない、という結論も導き得ます。そして、タイ税務当局はこの結論を用いて追徴課税を要請してくるかもしれません。

幸い、実務の現況を見る限り、駐在員を派遣している全ての日本企業が追徴課税の要請を受けているわけではありません。他方、要請を受けた日本企業は実際に存在します(※5)。

(※5)弊職業務実績から。経営相談として複数企業から相談を受けたことがある。

追徴課税の要請を受ける可能性を排除するためには、「駐在員の派遣を取り止める」「駐在員の派遣にあたり、全て出向(親会社社員としての地位を維持する)ではなく転籍(親会社社員としての地位を維持しない)にする」といった、現在の日本企業の労働慣行を考えると非常に難しい対応にならざるを得ません。

このため、短期的には駐在員の派遣にはこういった税務リスクが存在することを理解した上で、もし追徴課税の要請をタイ税務当局から受けてしまった場合は、前述の「恒久的施設」には該当しない旨を根気よく説明し、そして長期的には駐在員の派遣そのものの廃止(例:経営の現地化の可否)を検討するのが次善の策ということになりそうです。

 

なんとも歯切れの悪い結論ですが、注意喚起としてご理解いただければ幸いです。


弊社では、タイ会計基準の日本語訳を出版し、解説のための寄稿やセミナーの実施を行っています。また、いくつかタイ会計基準の日本語解説資料も存在します。
・2021年4月号 タイ会計・税務・法務特集
寄稿者プロフィール
  • 倉地 準之輔 プロフィール写真
  • 倉地 準之輔

    日本で大手監査法人、外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、15年10月にBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。公益財団法人東京都中小企業振興公社タイ事務所経営相談員。ジェトロ中小企業海外展開現地支援プラットフォーム・コーディネーター。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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CEO & Founder

倉地 準之輔 氏

日本で監査法人、外資系企業勤務を経て2013年来タイ。外資系会計事務所勤務後、2015年10月にBizWings (Thailand)Co., Ltd.を設立。複数の公的機関にて日系企業のアドバイザーを務める傍ら、経営コンサルティング業務を提供している。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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