カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 食品・小売・サービス, イベント
公開日 2024.05.07
TJRIは3月27日、タイと日本の企業間の協業・新規事業の機会創出を目指す「TJRIビジネスミッション」で、ASEAN最大規模の100%プラントベース(植物由来)食品を生産するPlant&Bean(Thailand)社の工場を訪問した。同社はタイのNutra Regenerative Protein Limited(NRPT)社とイギリスのPlant&Bean社との合弁企業で、プラントベース食品をOEM生産し、世界中に輸出している。今回のミッションでは、会社と事業内容の説明会後、工場見学を行い、日本企業とのネットワーキングの時間も設けた。
目次
今回のミッションではまず、Plant&Bean(Thailand)社のサニー・キアトカモン・タンガームジット社長が会社説明を行った。同社はNRPT社と英系Plant&Bean社の合弁企業だ。NRPTはエネルギー分野の最大手であるPTTの子会社「イノビックアジア」と食品大手NRインスタンスプロデュース(NRF)の子会社「ノヴァ・フーズ」の合弁会社だ。川上から川下まで一貫してエネルギー事業を展開するPTTは、ライフサイエンスや未来の食に関する事業を展開している。一方、1991年に設立されたNRFは、エスニック食品やソース、プラントベース食品などのOEM生産を行っている。NRFとPTTは、革新的な未来の食であるプラントベース食品を生産するために提携し、2021年にNRPT社を設立した。
NRPT社は主に以下の3つの事業を行っている。
(1)研究開発とOEMサービス: Plant&Bean工場における、プラントベース食品の研究開発とOEM生産。
(2)製品提供:イギリス発の人気No.1プラントベース消費財ブランド「Wicked Kitchen」のアジア太平洋地域における総代理店として、プラントベースのピザやアイスクリームなど、タイではまだ目新しい商品を輸入。
(3)体験型店舗: タイ人の認知度向上を目的とした、プラントベースの食事が楽しめるレストラン「alt.」(バンコク・トンロー)の運営。
同工場はアユタヤ県内に位置している。バンコク港とレムチャバン港から車で1時間30分という好立地だ。プラントベース食品の生産において25年の経験を持つイギリスのPlant&Bean社からノウハウを取得し、生産技術や機械のほとんどは、プラントベース食品の消費をリードするヨーロッパから取り入れた。本物の肉と同じような食感のプラントベース食品を生産できるさまざまなフォーミュラを持っており、OEM生産した食品の90%は国外に輸出されている。また、ASEAN最大規模を誇り、ASEANで初めてBRCGS認証(安全性と品質を国際的な基準に基づき認証する制度)を取得したプラントベース食品生産工場でもある。
競争力のある原料価格も特徴の一つだ。100%プラントベースの食品工場なので、一度に大量の原材料を発注できることから、生産コストを安く抑えることができる。原材料は現在ほぼ輸入品だが、今後は原材料も自社生産し、川上からカバーできる体制を整える見込みだ。
年間生産量3,000トンで、使用電力の30%はクリーンエネルギーだ。第2フェーズでは年産1万3,000トン、第3フェーズでは年産2万5,000トンを目標としている。
工場内にはカッターミキサーやソーセージ製造機など、さまざまな機械が導入されており、多種多様な製品を生産できる。例えば、豚ひき肉、ハンバーガーのパティ、ミートボールなどの生肉だ。さらに、ソーセージ、ナゲットやヒレ肉などの揚げ物、点心のような蒸し物も生産が可能だ。人気商品はパティ、ナゲット、餃子、ソーセージ、豚ひき肉だ。
原材料について、例えばミートボールは、大豆由来のタンパク質、エンドウ豆から抽出した食物繊維、ココナッツから抽出した脂肪から作られている。着色料はビーツやカラメルパウダーなど自然由来のものを使っている。
BTSトンロー駅付近に位置するレストラン「alt.」は、プラントベース商品の認知度向上に貢献している。店内は飲食ゾーンとミニマートに分かれている。飲食ゾーンでは、Plant&Bean工場で生産された食品を使用したハンバーガーや韓国餃子、人気商品のドーナツなど、さまざまな多国籍料理を楽しめる。自社統計によると、2023年には20万皿以上が売れた。ミニマートでは、冷凍食品やスナック、タイの中小企業のプラントベース商品など、約900SKUsが販売されている。
さらに「alt.」では、タイのプラントベースの中小企業が出店できるイベントも開催。大型小売店の関係者をイベントに招待し、マッチングを促進している。
レストラン来店客の約半分は外国人駐在員で、残りの半分はタイ人だ。タイ人の多くがプラントベースミートを食べない理由として、①価格が高い、②形態が少ない(ナゲットや揚げ物のみ)、③味がおいしくない―という3つが挙げられるとの調査結果がある。サニー社長はこの調査結果を受け、今後はより多様な形態の商品を開発し、消費者がおいしく食べられる味を開発したいと意気込みを見せた。
THAIBIZ編集部
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