THAIBIZ No.148 2024年4月発行タイで成功する日系企業デンソーのWin-Winな協創戦略
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公開日 2024.04.10
1949年にトヨタ自動車の電装部門が分離独立してスタートし、今や独ボッシュに次ぐ世界第2位の自動車部品メーカーにまで躍進したデンソーは、35ヵ国・地域に190拠点、従業員数16万4,000人、売上高6兆円超えのグローバル企業だ。タイにおいては、1972年に海外初の生産会社としてデンソー・タイランドの設立を皮切りに、現在10の事業会社と約1万1,000人の従業員を抱えるまでに成長。今回は、タイで成長を続ける日系企業デンソーの強さの秘訣に迫る。
目次
「1990年代後半のアジア通貨危機や、2011年の洪水などの危機を乗り越え、タイで52年間、比較的順調に成長できたのは、完成車メーカーやタイ政府関係、お客様、日系や地場のサプライヤー、従業員、大学などの多くのステークホルダーの皆様に支えによるもの」と語るのは、豪亜地域を統括するデンソー・インターナショナル・アジアの犬塚直人社長だ。
現在デンソーでは、タイを含めたアジアの中長期的な取り組みとして、「完成車メーカーへの部品供給にとどまらず、貢献分野をさらに拡大して持続的な成長につなげるべく事業ポートフォリオの変革にチャレンジしている」という。
具体的には、安全・品質・コンプライアンスなどの「経営基盤強化」と、アジアの事業成長の3本柱と位置付けている「カーボンニュートラル」「将来のモノづくり」「マーケットソリューション」だ。
経営基盤強化については、「ステークホルダーの信頼・共感を得て事業を継続するための大前提であり、デンソーが74年の歴史の中で磨き続けてきた『安全・品質』という基盤を人の力だけではなく、『仕組み化』と『DX化』でさらなる強化を図ること。また近年、事業環境の変化が非常に激しくなる中で、原点回帰の重要性をグローバル社員に浸透させながら、デンソーの企業文化の次世代への継承にも積極的に取り組んでいる」という。
一方で、「事業成長の3本柱は、デンソーだけで進めることはできないと考えており、タイの産官学のパートナーの皆様に、当社の考えや取り組みに共感いただき、共創・協業関係を構築することが不可欠で、既存のパートナーだけではなく、これまでパートナーになっていなかった皆様にも働きかけて、連携していくことが鍵」と強調する。
デンソーは設立当初から「モノづくりはヒトづくり」の精神を継承しているが、最近は特に「人的資本経営」を重視し、グローバルで取り組んでいる。
タイのデンソーグループでは、新規事業におけるステークホルダーとの連携には、「デンソーのスピリットや強みを理解し、かつタイ社会の成長を本気で願うタイ人リーダーの活躍が欠かせない」として、「社内でリージョナルタレントと呼ぶタイ人メンバーがイニシアチブを持って事業に取り組んでいる」という。
また、グローバルでの画一的な人事制度ではなかなか取り組めないことをタイでいち早く取り組み、新たな人財の獲得や活躍を後押しする育成施策を強化することで、「タイ人の心に響くか検証しているところ」だという。そこには、「日本の本社でやっていることをそのまま持ち込んでも経営基盤強化は根付かないし、事業成長も実現できない。日本人出向者がリードするのではなく、リージョナルタレントがタイ社会の発展や成長への貢献をリードする企業であり続けたい」という犬塚社長の強い意志も感じられる。
日系企業の課題や悩みでよく聞かれるのが本社とのコミュニケーションの難しさだ。デンソーでも同様の課題はあるという。では、タイのデンソーグループはどのように本社を納得させ、タイ独自の新規事業に取り組んでいるのだろうか。その突破口として、犬塚社長は、「アジアやタイの特有の戦略を本社にコンセプトだけを説明しても納得してもらえない。日本にはそのマーケットがないからだ」とした上で、「では、どうすれば自分自身や地域の権限で意思決定できるかを考えた時に、まず既存の事業で本社の信頼を得ることだ。その上で新しいチャレンジの成功確度を高め、リスクマネジメントもした上でコミットしていく」と語る。
具体的には、「タイのマーケットを熟知するタイ人社員、タイの政府、企業などの考えをよく聴いて、国がやろうとしていることに合うビジネスモデルかどうかを見極めること。例えば、国の施策の実現を担っている政府・財閥系などのタイ大手企業、それを後押ししているタイ工業連盟(FTI)などがやりたいことと、当社がやりたいことを整合させることで実現性を高めることができる」と説明。また、「新しいことをやるので、失敗するのは当たり前。ただ、失敗した時にいかにグローバルデンソーにとって致命的な失敗にならないようにするかだ。例えば1つの施策として、デンソーというブランドを使わずに地域のオリジナルブランドを作ってチャレンジすることがある」とタイでの独自戦略の挑戦方法を明かした。
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THAIBIZ編集部
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