THAIBIZ No.148 2024年4月発行タイで成功する日系企業デンソーのWin-Winな協創戦略
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公開日 2024.04.10
目次
「電動化」「自動化」「コネクテッド」「カーシェアリング」などの技術革新が急速に進み、自動車産業は「100年に一度の大変革期」の渦中にある。売上高の9割以上を自動車関連事業で占めるデンソーも生き残りをかけた変革に挑戦している。タイを含むアジアのデンソーでは「カーボンニュートラル」「将来のモノづくり」「マーケットソリューション」の3本柱の事業成長戦略に取り組んでいるが、先に犬塚社長が述べた通り、この3本柱は「デンソーだけで進めることができるものではなく、パートナーとの共創・協業関係を構築することが必要不可欠で、日タイ双方を熟知し、主体的に働きかけができるタイ人のキーパーソンが肝」となる。
今年タイのカントリーリーダーに就任したサイアム・デンソー・マニュファクチャリングのティーラワット・リムピバンテン社長に在タイ日系企業とタイ社会やタイ人との関わり方の変容について、また日系現地法人の経営者としてどのように事業をドライブしているのか話を聞いた。
ティーラワット社長は、「かつてタイは日本から大きく遅れており、日本企業がタイに進出してからは日本人が全てを決定し、その決定に基づき計画を策定してきた。当時の協力関係は、日本の既存事業をタイに展開するためのパートナーを探すことがメインだった」と当時を振り返る。一方で、「日本の貢献によりタイの産業が発展し、私たちタイ人も日本人と共に提案や意思決定の機会が増えた」という。
デンソーでは、近年「LASI (Lean Automation System Integrators)や電動バス用のエアコン供給などの共創で、タイ独自の新たな事業に挑戦」しているところだ。「変化の激しい今の時代、日本からの技術移転だけに頼ることはできなくなり、同時に各国に適したソリューションやビジネスモデルはデンソーだけで実現することも困難だ」とティーラワット社長は分析した上で、今後の共創戦略では、相互成長のためにデンソーと各方面のパートナーとの強みを活かして「新しい技術と製品を共に創造し、新しいビジネスモデルを探求することがより重要だ」と訴えた。
ティーラワット社長は、さらに「タイは『タイランド4.0』によるデジタル化とイノベーションを中心に、高所得国になることを目指すほか、2050年までの国家目標として、カーボンニュートラルを掲げており、タイ大手企業各社もこの実現を後押しすることを表明している」とした上で、「タイで事業を行う以上は、タイの発展への貢献はマストであり、デンソーの方向性もタイの国家目標とほぼ同様だ」と説明。
そのため、「デンソーの強みを活かして、タイの目標も同時に実現できる『Win-Win』のソリューションを提案することこそが重要であり、最終的にそれが当社の持続的な成長にもつながる」と述べ、「特に今後の事業成長においては、ステークホルダーとの真の相乗効果を生むために、タイ側と日本側双方の技術的な観点と考え方をよく理解したタイ人のキーパーソン(リージョナルタレント)の活躍がますます重要になる」と強調する。
デンソーでは、「将来のモノづくり」の取り組みの一環として、「タイランド4.0」の実現に貢献するために、2018年からタイの工業省(MOI)や日本の経済産業省(METI)と共に「Lean Automation System Integrators(LASI)育成プロジェクト」を推進している。タイの産業における重点課題は「中小企業の生産性向上」だが、「多くの企業では自動化への投資が困難な状況にある」という。
そこで、「デンソーのモノづくりの中で70年間以上培ってきた『ムダ取り』のノウハウを凝縮し、学生や企業の若手を対象にこれまで1,500人以上のシステムインテグレーターを育成」し、タイの産業界の変革に取り組んできた。
これは単なる「人からロボットへの置き換えによる自動化」ではなく、「生産工程のムダを排除し、段階的に自動化システムを導入」することだ。タイのさまざまな企業の状況に適した自動化のステップを教えることで、「生産性向上を低コストで実現すると共に、タイの企業の競争力強化にも貢献できる」とティーラワット社長はいう。
カーボンニュートラルについては、「2020年からさまざまな取り組みを行なってきたが、当初はカーボンニュートラルを理解している人は少なく、この課題に取り組むことの必要性・メリットがタイ社会であまり認知されていなかった」と当時を振り返る。
しかし、これは「ただの環境問題だけでなく、将来的にビジネス要件になる」とタイ工業連盟(FTI)へ提起し、デンソーの「リーン&クリーンなモノづくり」のコンセプトでコスト競争力のあるカーボンニュートラル工場への転換について紹介した。こうした地道な活動により、「RE100クラブ(民間部門の炭素削減を推進する協会)とFTIの気候変動研究所の開設にもつながった」という。
さらに現在は「先進的なカーボンニュートラル技術のタイへの早期導入・共同開発で、カーボンニュートラルとタイランド4.0の目標を加速させるため、タイ政府とのプロジェクトにも取り組んでいる」と明かした。
最後にティーラワット社長は、「日本企業で長く働いてきた身として、タイと日本の相互理解をリードし、両国の新たな価値を築くこと、さらにタイ独自の取り組みを日本に逆輸出し、日本の目標を達成する手助けをすることができれば理想的だ」と日系企業のタイ人経営者としての想いを語った。
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THAIBIZ編集部
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