第7回 アカデミックな知見を活かして海外展開

ArayZ No.104 2020年8月発行

ArayZ No.104 2020年8月発行タイ現地化4.0 - コロナ禍とその後を生き残る、生産性高い組織の作り方

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第7回 アカデミックな知見を活かして海外展開

公開日 2020.08.10

 日本発のアニメ産業を国際的に発展させていくKadokawa Contents Academy(以下、KCA)。7月号に引き続き、教育コンテンツのパッケージ化、テキストの標準化、現地の高等教育機関との連携など、KCAの古賀社長にアカデミックな知見を活かした独自の海外展開方法についてお話を聞いた(聞き手:藤岡資正)。

東大とのユニークなコラボを世界が注目

 今後世界へ向けて日本のコンテンツビジネスを情報発信していく上で、その知識を学者によってある程度体系的にまとめていくことが大切です。これまでのコンテンツ産業を対象にした文献は実務家によるものが多く、すごく面白いものもあるのですが、アカデミックの視点から論じられることが少なかったです。

 2014年に角川文化振興財団は東京大学の大学院に寄附講座を提供し、海外十数ヵ国からコンテンツビジネスを学びたい学生が集まりました。このプログラムでは、メディアミックス、ヴァーチャルアイドル、2.5次元ミュージカルなどが、どのようにしてビジネスになり得るのかについて学びます。

 講師陣も大変充実しており、日本の有名コンテンツプロデューサーやマサチューセッツ工科大学などの海外有名大学からも招聘しました。東大大学院に来る外国人留学生の中には、「アキバが好き」「ヴィジュアル系バンドが見たい」など、学術以前に日本のコンテンツファンがたくさんいます。

 純粋にコンテンツビジネスそのものを学びたいのであれば、コロンビア大学など世界には多くの選択肢がありますが、実体験をしながら学術的に学んでいくプログラムはなかなかありませんでした。

 最終的には、実践と講義を織り交ぜながらコンテンツビジネスをより学術的なものにして、世界中の大学に広めたいと思っています。日本語だと、どんなに良いものでも海外の人たちに届かないので、英語で世界の方々に発信するということが重要です。すでに各国の有力大学が関心を示しており海外からの期待を感じています。タイであればチュラロンコン大学(サシン経営大学院)などとも、色々と連携していきたいと思っています。

コミットメントを引き出し組織の力を高める

 コンテンツを創ることには長けている日本ですが、日本人経営者の多くは現場に近い方が多く、それを広め・儲けることが苦手のように思います。プレイヤーとしては優秀でも、経営者としてはうまく能力を発揮できない。これをどのように変えていくのかは長期的な課題です。「良いものを創ったから100点」で終わらず、「それを広めて儲けたら100点」にしないと経営ではないと思います。

 そういう意味でコミットメントと権限が重要です。アジアの若い経営者たちは結果(儲け)だけに偏りがちですが、やはり結果は重要です。高度成長時代の日本は「家、奥さん、株」を持たせて社員のやる気を喚起しましたが、アジアの企業が今それをやっています。奥さんはないと思いますが(笑)。

 確かに会社は株主のものです。しかし、社員に対して「君は株主だ。権限も与える」「成長したら、これだけ与える」などの動機付けは必要だと思います。それをやる会社が少なくなっているのもあり、最近は日本でも若くて優秀な方ほど起業を選ぶ傾向にあります。通常は、権限とコミットメントは対であるべきですが、日本はそうなっていないのです。

対談を終えて by 藤岡 資正 氏

 どれほど良いコンテンツでも、そこにビジネスモデルがなくては永続性を保つことはできない。実は、タイで大人気のBNK48のプロデュースチームにいるのは、東大に留学してKCAのコースを受講したタイ人女性であるという。今後、チュラロンコン大学においても、KCAのコースの導入を検討し、日本のコンテンツビジネスを体系化するお手伝いをしていきたい。

古賀鉄也
写真撮影:村井友樹氏

略歴

古賀鉄也
大学卒業後、総合商社、総合人材サービス会社を経て、テンプスタッフ・クリエイティブを設立。2009~12年、デジタルハリウッドの代表取締役兼CEO。10年から東京ヴェルディ1969の取締役を経て、現在は共同オーナー。13年にKadokawa Contents Academy株式会社を設立して、現在は同社社長兼CEO。

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THAIBIZ編集部

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