ArayZ No.144 2023年12月発行メコン5における中国の影響拡大
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カテゴリー: ビジネス・経済
連載: Deloitte Thailand - M&Aの基礎
公開日 2023.12.09
今月はカンボジアの物流市場について取り上げていきたい。カンボジアはタイの隣国であるものの、これまで未成熟なイメージで捉えられがちであった。しかしながら、個人所得の伸び、また今後も人口の増加が見込まれることなどから物流市場として今後魅力度が高まるのではないかと考えられる。
2016年から21年にかけ、世帯年収についてはカンボジアが年平均で+5.3%である一方で、タイは+2.2%であった(図表1)。人口の伸びについてはカンボジアが年平均で+1.4%である一方でタイは+0.4%となっている。カンボジアの出生率は21年現在で2.34であり、人口については今後も安定的に28年にかけて年平均+1.0%程度で伸びていく見込みである。このようにタイと比較すると、カンボジアの成長性というのがよく分かる。
カンボジアの物流市場は28年にかけて今後5%程度で増加していくと見込まれている。貿易相手国でいうと輸出については米国、ベトナム、中国がトップ3であり、輸入であると中国、シンガポール、タイの順番になる。特に中国は近年関係性が高まっており、21年には前年比で輸出は+38.8%、輸入は+36.5%伸びている状況である。タイについても輸入相手国として3番目であることに加え、輸出相手国としても8番目に位置している。
日本も輸出相手国として4番目、輸入相手国として8番目に位置している。JETROによると、カンボジアには日系企業が約1,300社進出しており、サービス業が半数弱程度を占めている。少し古いデータではあるが、2020年8月、9月時点で22年の営業見通しを「改善する」と答えたカンボジア進出の日系企業が66.2%に達しており、ASEAN地域内で最多の数字であった。
「現地市場拡大」「輸出拡大」を理由に挙げるケースが最も多く、カンボジア市場がポジティブに捉えられているケースが多いものと想定される。
日本の物流会社については特に2010年代前半に進出が進んでおり、主要なフォワーダーが進出している状況である。
現在は軽工業品(衣類や革製品など)の製造拠点のイメージとしての強いカンボジアではあるが、前述のような個人所得や人口の伸びなどもあり、日系企業含めて消費市場としての注目が集まっている。
タイ企業においても、隣国ということを生かしCPグループが運営する卸売チェーンのマクロの2つ目の海外進出先がカンボジアであった。また、同様にCPグループは2021年にカンボジアにセブンイレブンの1号店を出店しており、今年度中に100店舗まで増やす計画がある。CPグループの競合である小売のBigCも22年5月にカンボジアのコンビニエンスストアチェーンを買収し、カンボジアの小売市場の成長を取り込もうとしている。
M&Aの観点で行くと、個人消費の拡大を背景にしたモダントレード市場の拡大を取り込んでいくため、倉庫を保有する企業を買収することも一つ有効な手段になり得ると想定される。物流業界は図表2の通り多様なプレーヤーで構成される。フォワーダーの売却案件なども一部はあるものの、物流業界でいえば倉庫を運営している会社の案件が多い印象である。地理的な近さもあってか、タイの企業がカンボジアの倉庫を運営しているようなケースも存在する。実際にカンボジアにおいて物流業界でM&Aを行う際は、物流市場自体を確認するだけでなく、対象会社がどのような顧客をつかんでいるのか、またその顧客の取り扱う商品・サービスの成長余地はどの程度あるのかといったことをよく検討していくことが必要である
一方で、通関手続きが複雑である、物流業界にノウハウがある人材が不足しているなどの懸念点も存在するため、そういった点については買収時に注意していくことが必要になる。
※本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする
出所:CEIC、Statista
ジェトロ「世界貿易投資動向シリーズ カンボジア」
ジェトロ「約1,300社の日系企業が事業を継続、サービス業が最多(カンボジア) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース」
日本経済新聞2021年8月31日「カンボジアにセブンイレブン1号店 タイのCPオール」
経済産業省「海外事業活動基本調査」
NCネットワーク「第19回カンボジア進出目指す小売業界」http://u-machine.net/sp/column/mexico-column/article/934
The Phnom Penh Post – 30 Jun 23 “‘One hundred’ 7-Elevens nationwide by Dec” https://www.phnompenhpost.com/business/one-hundred-7-elevens-nationwide-dec Bangkok Post – 27 May 22 “
Big C bags Cambodia’s Kiwi Mart” https://www.bangkokpost.com/business/2316630/big-c-bags-cambodias-kiwi-mart
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Services / Manager谷口 純平 Jumpei Taniguchi
Deloitte入社以来、一貫してM&A・事業戦略をテーマに活動。特に各関係者の調整やスピード感を持ったプロジェクト推進で高い評価を得ている。主な実績は、大手ファンド向けBDDと事業戦略検討。総合商社のクロスボーダーM&AのPMIリードなど。2020〜22年8月タイ駐在。同年9月〜シンガポールに赴任。
TEL:+65 (0) 8-763-6373
E-mail: [email protected]
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory / Manager
柴 洋平 Yohei Shiba
大手生命保険会社、大手電機メーカーを経てDeloitte入社。M&A関連や事業戦略策定、マーケティング支援などのプロジェクトに従事。入社以来、金融・テクノロジー・ライフサイエンス・消費財・電力など幅広い業種における支援をリード。22年8月からバンコクに赴任、特にPre M&AやPMIに力を入れて活動中。
TEL:+66 (0) 6-3079-4893
E-mail: [email protected]
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.<Financial Advisory>
Deloitteは会計・財務・税務・M&A等のサービスを世界各国で行うプロフェッショナルグループの一つであり、 主にタイの日系企業様向けにM&Aやリストラクチャリング/再編に関わるサービス提供を行っております。
AIA Sathorn Tower, 23rd – 27th, Floor11/1 South Sathorn Rd. Yannawa, Sathron, Bangkok 10120
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Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
Financial Advisory Associate Director
谷口 純平 氏
商社を経て、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に入社。2020年からバンコク及びシンガポール事務所に出向。戦略策定からPMIまで、シームレスに事業成長をサポートできることが強み。
【谷口 純平】
+65 (0) 8-763-6373
[email protected]
Deloitte Touche Tohmatsu Jaiyos Advisory Co., Ltd.
デロイトタイの日系企業サービスグループ(JSG)では、多数の日本人専門家を抱え、タイ人専門家と共に、タイにおけるあらゆるフェーズでの事業活動に対して、監査、税務・法務、リスクアドバイザリー、フィナンシャルアドバイザリー、コンサルティングサービス等を日系企業のマネジメントの皆様に提供しています。
Website : https://www2.deloitte.com/th/en.html
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