カテゴリー: 組織・人事
公開日 2015.05.28
アセアンで展開している日系企業にとって、優秀な人材の確保はどの企業においても当てはまる共通の課題だろう。
「〝アセアンでいい人材を獲得する〟という採用競争は激化している」というen world Singaporeの西野雄介氏にシンガポールからみた〝アセアン地域の人材〟について。タイでの人材事情について、en world Recruitment (Thailand) Co., Ltd.の下川ゆう氏に解説してもらった。
アセアン各国にある企業はおおよそ、その国の現地企業、欧米系企業、日系企業3つに大別される。そのほかにも中華系やその他アジア系企業などもあるが、今回はこの3つの企業にスポットを当てて考えてみる。
西野氏によれば、シンガポールにおいて優秀な人材を最も確保できているのは欧米系企業だという。
「シンガポールでも優秀な人材の確保は容易でなく、与えられるポジションと給与の面からも1番強いのは欧米系で、日系は2番手、3番手というのが現況です。それ以外にも、欧米系と日系では育成面での考え方が大きく異なり、一番わかりやすい例で言えば、日系企業は年功序列や終身雇用の組織体系から大きく育ってきた企業が多いため、OJTに見られる3年、5年かけて〝一人前〟とされるマインドが今も残っているのに比べ、欧米系企業は比較的に業務をきちんと分割して明確化し、また、それに必要なスキルセットを明確にして、そこに必要な人を当てトレーニングを与えます。人材は現場でもアカデミックにも学び、スキルを高めていく形式を取るため、人材にとってもキャリアが構築できるのです」(西野雄介氏、以下敬称略)。
シンガポールにアセアンやアジアパシフィックの統括拠点を置き、意思決定できる権限を持った人材を据えている企業は多い。今まで2番手、3番手だったシンガポールの日系企業にも、徐々に変化が見えてきている。教育センターを設置してリーダーシップトレーニングを行ったり、欧米系企業などから優秀な人材をヘッドハンティングする動きなど、少しずつではあるが増加傾向にあるという。このような流れが加速していけば、「日系企業で働くことのバリューが上がり、求職者に魅力付けとなる〝ブランディング力の向上〟が優秀な人材を獲得するためのひとつの鍵となります」(西野)。
同じアセアンでも製造系企業が多いタイと金融系企業が多いシンガポールなど、それぞれの国の状況によって人材の市場は異なる。製造系企業が多く進出する中進国のタイやインドネシア、マレーシアでは技術力のある日系企業の人気は高いが、シンガポールのように経済発展が進み、給与や成長度合いが高まると事情は変わってくることも把握しておきたい。
「多くの在タイ日系企業では日本本社からの日本人駐在員がトップを務め、その下にタイのローカル従業員が、そしてその間を取り持つ人材として現地採用の日本人がいます。日系企業間のビジネスにおいて、日本人同士による日本語での取引が好まれる傾向が強いことも、この構造が多い理由ではないでしょうか。しかしローカル市場に入り込むために優秀なタイ人を採用しようとしても、この構造では給与面において求職者側が満足する額面が提示できず、人材は欧米系企業や現地企業へ流れたり、自身で起業するのが現状です。欧米系は業務分担と責任が明確になっているため、よりシビアですが、権限を持たせてどう成長させるかという考え方があり、重要ポストへの登用の道が開かれていることと、それに見合う給与が提示されています。欧米系ではダイレクタークラスで月給60万バーツ、部門長クラスで月給20~30万バーツを提示している企業もあります。そこまでの給与は用意できないという日系企業は、例えば10万バーツに出来高でコミッションをプラスするなどの提案方法も有効だと思います」(下川ゆう氏、以下敬称略)。
THAIBIZ編集部
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