カテゴリー: 組織・人事
公開日 2015.05.28
グローバル人材に関して、日系企業では本社で採用した日本人社員を内部登用するケースが大半を占め、国外の現地法人ではリージョナル人材とカントリー人材のみを採用する場合が多い。これに対し欧米系企業では、採用チーム自体がグローバル人材、リージョナル人材、カントリー人材に分かれて活動を行い、社内外を問わず、職責にあった最適な人材の発掘にあたる。採用における基本的な考え方として、その職責を全うさせるための最善の方法は何かを模索するためだ。
「もちろん最もコストをかけずに最適な人材を登用するためには、欧米系企業も日系企業と同じく、最初は内部で人材を発掘できないか検討します。それが有効でない場合に、人材紹介会社などを通じて外部から人を登用することを検討し始めるのが一般的です。また一旦リージョナル人材として採用しても、会社側が有能な人材だと認めた場合は、グローバル人材などの階層に異動するためのキャリアパスを設けています」(西野)。
欧米系、日系、中東系など資本によっても採用方針に違いが見える。
「アメリカ系企業は外部からの人材採用にフレキシブルで、CEOクラスもその職責に最も相応しいと思った人物を大胆に採用します。日系は生え抜きの人材を内部登用で起用する傾向にあり、欧州系はアメリカ系と日系の中間、韓国系も欧州系と同じ傾向があります(図表8)。採用面接に対する姿勢にも違いがみられ、日系では通常、採用するポジションが無い時は採用活動を行いません。しかし、欧米系は採用するポジションが無くても、優秀な人材がいれば積極的に会おうとします。普段からこの人脈を広げておかないと、いざポジションが空いた時に最適な人材を迅速に投入するのが難しくなるからです」(西野)。
優秀な現地社員を採用、雇用を維持するため、日系企業では教育に力を入れ、現地社員を日本国内に出向させたり、日本の商習慣を学ばせるなどの努力を行っているが、必ずしも日系企業が行う人材育成が現地ニーズと合っているとは限らない。
「シンガポールのような新興国ではキャリア育成は自身で行うという意識が強いため、会社が一律に行う研修よりも、企業による柔軟なサポートを好む傾向があります。例えば、社内選抜によるMBA留学制度だけでなく、社員が自主的にMBAを取得するための長期休暇の付与などの施策検討が必要ということです。欧米系企業では雇用維持対策のひとつとして、人材のマッピングをしています(図表9)。
自社の抱える人材層を優秀な順にA人材(全体の10%程度)、B人材(60%程度)、C人材(30%程度)と区分けして、優秀な人材層であるA人材に教育と幅広い経験を与え、集中的に投資。B人材に関しては上位10%のA人材に育て上げるための施策を施し、C人材は定期的に人員の入れ替えを行います。欧米系というと一般的に流動性が激しいという印象を持たれているかもしれませんが、一部の層に関しては社歴20年といった人材も珍しくありません。企業は幹部候補生として認定したA人材に関しては、定期的に新しい職責を与えグローバル経験を深めさせ、また、優秀な人材を明確に定義し的確なトレーニングと機会を与えることで、雇用維持を実現させています」(西野)。
「タイのローカル従業員で多いのは、3年ほど働くと〝ここで勉強することはもう無い〟と、転職活動をはじめるケースです。これは雇用企業側が従業員に対し、キャリアパスを示せていないことが原因のひとつとも考えられます。キャリアアップへのチャンスや、新しいプロジェクトへチャレンジさせるなどの機会を与えたり、営業だった人を購買に転属させるなど、違う仕事を任せてみることも雇用維持対策になります。転職理由について給与の問題だけなのか、それとも給与以外での魅力付けが必要なのかを聞き出すことも重要です」(下川)。
アジア経済の発展が著しい今、欧米でビジネス経験があるアジア出身者のグローバル人材への需要が増えている。彼らが欧米で学んだグローバル企業での意思決定プロセスをアジアの商習慣と融合させ、市場拡大を推し進めることが求められている。
THAIBIZ編集部
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