カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2017.11.16
※本特集は9月・10月に開催されたNBSビジネスミッションへの同行取材をもとに制作、編集したものです。
ラマ7世にビール醸造許可を申請、取得したプラヤ・ビロムパクディー氏が1933年に設立したブンロートブリュワリーは、サイアム・セメント・グループに次いで歴史のある非華僑財閥です。タイ初のビールブランドSinghaで長く業界最大手でしたが、95年Changビールにその座を奪われました。諦めることなく98年に発売したLEOビールでシェアを奪還。現在ではLEOがSinghaの生産量を超えています。グラスコンテナ製造から飲食、不動産まで、出資と買収による事業多角化を進め、現在では150以上の会社を傘下に収めています。
目次
チャオプラヤー川で渡船業を営んでいた創業者が、橋の建立がきっかけで始めたのがビールの醸造でした。タイで初めて醸造されたビール、Singhaは当初ドイツから輸入した機械とびんを使用していました。1936年にはソーダを発売し、オレンジジュースなどのソフトドリンクも生産販売していましたが、62年、コカ・コーラのタイ参入をきっかけにソフトドリンクの生産を停止。85年からはシンハーウォーターを、2008年からは機能性飲料を販売しています。
これら飲料製造に必要な原料や容器もグループ内で調達しており、ガラスびん製造会社であるBangkokGlassはASEAN最大規模を誇ります。
飲料以外では、87年設立のHESCOがタイ米を原料にしたスナック菓子や、タイ料理の冷凍・レトルト食品などを国内外向けに生産しています。また2009年には飲食事業を開始し、北海道のチーズケーキ店「FarmDesign」をフランチャイズと合わせて26店舗運営しています。店内で醸造するクラフトビールが売りの「EST.33」は国内3店舗に加え、マイアミとモルディブにも出店予定です。
12年から観光施設としてオープンしているチェンライのSinghaParkは、総面積約3千エーカーの殆どが農用地で、14年に合弁会社を設立した日本の丸善製茶のノウハウを活用し、緑茶の栽培と販売を行っています。
同じく14年、不動産開発、エネルギー、物流事業にも参入しました。18年にはバンコクの中心地に複合施設、Singha Complexを開業予定で、アントン県では工業団地と発電所の運営を行っています。物流事業はグループ内だけでも採算が取れたことから始めましたが、今後は国内の他企業と、さらにはタイの地理的優位性を活かして周辺国へのサービスを提供していきたいと考えています。
ビール商品は世界50ヵ国以上に輸出しています。国内市場を見ると、タイのビール消費量は年間約21億リットルで、毎年平均で2~3%成長中です。販売は全国222の代理店を通じて行っており、その内訳は約1万8000が問屋で、小売に関してはTT(トラディショナルトレード)が約20万店、MT(モダントレード)が約1万4000店、飲食店が約3万1000店となっています。
自社ブランドではエコノミー商品に当たるLEOのシェアが断トツで大きく、スタンダードに当たるSingha、プレミアムに当たるAsahiが順に続きます。さらに2016年、口当たりがソフトでフルーティな〝U〟ビールを発売し20~25才の若年層をターゲットにした商品展開をスタートしました。なお、Singhaはターゲット層を30~40才に、LEOは25~30才に設定しています。
タイではエコノミーとスタンダードのシェアが大きいものの、伸びているのはプレミアムです。プレミアム商品の売上を伸ばすための戦略として、エコノミーの消費者をプレミアムにシフトさせるのは困難ですから、スタンダードの消費者からのシフトと、プレミアムの消費者にどれだけ多く飲んでもらえるかに焦点を当てています。タイはアルコール商品の広告規制が厳しく、またプレミアムの層はPRでは増えづらいという課題もあります。
Q.事業を持続、拡大し続けられる理由は?
A.まずは人です。社員教育に注力しているだけでなく、「チャンスを与える」→「プロセスは考えさせる」→「とことんサポートして、面倒を見る」社風がグループ企業の増加につながっています。創業者ファミリーも代々シンハーで働いていて、オーナーと社員の距離も近いです。また、例えば日本から輸入展開したFarm Designでは、日本のレシピをベースにしながらも、タイ人の好みに合うよう少し甘めに調整しています。商品については日本のパートナーにも相談しますが、商品以外の経営についてはタイ現地の判断で成長させてきました。
THAIBIZ編集部
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