行って、見て、知る タイ企業 ~食品ビジネスとマーケティングの今~

行って、見て、知る タイ企業 ~食品ビジネスとマーケティングの今~

公開日 2017.11.16

Ichitan Group PCL



Tan Passakornnatee氏
President

タイ⼈で知らない⼈はいない緑茶飲料メーカー⼤⼿Ichitan Group PCL.。創業者のタン氏は⾃ら広告塔となり最前線でプロモーションを行い、タイ国民から“タンさん”と呼ばれ親しまれています。

タン⽒は、もともと⽇本⾷レストランの運営や製造・販売を⼿がけるOISHIの創業者兼オーナーでしたが、2010年OISHIの株を売却し退任。その後新しく⽴ち上げたのが同社です。緑茶飲料業界に参⼊してわずか3年でOISHIのシェアを抜き、業界NO.1の緑茶飲料メーカーに登りつめました。

先陣を切って持続するブランディング戦略

7年前にOISHIを去り次の事業を検討した際、私には緑茶という資産しかないと気づきました。そこで今ある資源を最大限に活かそうと創業したのがIchitanです。

緑茶は日本の飲み物ですね。日本のイメージを確立させるため、「Ichitanの緑茶を買うと日本旅行にいける!」「緑茶購入者に50日間毎日1台ベンツが当たる!」などのキャンペーンを持続的に展開しました。当時、タイの緑茶のイメージはぼやけたもので、誰よりも先に自らが発信していきました。すると「緑茶→日本→タン」から「緑茶⇔日本⇔タン」の関係が出来上がり、「タンさん=日本」のイメージが定着しました。ブランドイメージを確立させるには、一番先に行動することと継続が重要と考えます。

現在、Ichitanの緑茶はタイの茶葉を大量に使用していますが、イメージが定着しているので「日本ブランド」というプレミアムなイメージは維持しています。タイ産の茶葉を使用するのは品質管理が行き届きやすいからです。契約農家からオーガニックの茶葉を仕入れているので品質管理は日本レベルと自負しています。

もちろん、静岡県産の茶葉も使用していますし、工場の機械は8割が日本製と、日本との接点を必ず持つようにしています。日本製の機械のおかげで無菌充填法が可能となり、ペットボトルの使用量を削減、環境負荷を低減させました。これも日本ブランドにつながると思います。

日本人は、緑茶に砂糖を入れるのは許せないと言いますね。タイをはじめアセアンの消費者はもともと緑茶の存在を知らないため、砂糖が入っていようがなかろうが関係ありません。また東南アジアは、低賃金で生活している肉体労働者が多数存在します。彼らは労働に見合ったカロリーを満足に摂取できていません。肉体労働者のためにも糖質、甘い飲み物は必要なのです。本当に消費者が求めているものを、自分の資産である緑茶を通して実現していると考えます。


5Sが徹底された工場内

CLMVに進出する

タイで緑茶飲料のトップに立った今、既に販売を行っているインドネシアに加え、CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)での販売にも力を入れています。周辺諸国はタイよりも労働力が安く、工場を操業しやすい環境にありますが、今はそれらの国で生産したいとは思いません。同じ製品の場合、CLMVで生産されたものとタイで作られたものでは、値段が高くてもタイの製品を選ぶ傾向にあるからです。

CLMVの消費者はタイの経済発展、品質の高さを間近にし、タイをお兄さんのように感じているようです。 今後も消費者ニーズを発想の最初に置き、成長を続けていきます。

Index Creative Village PCL.



Kreingkrai Mek Kanjanapokin氏
Founder & Group CEO

タイでNo.1のイベントオーガナイザーであり、⽶国のイベント雑誌で世界第7位のイベント会社に選ばれたIndexCreative Village PCL.の年商は約60億円。

⽇本を含む多くの海外企業を顧客に持ち、そのクリエイティブな発想と⾼いイベントマネージメント⼒を強みに、魅せ⽅の総合プロデューサーとして活躍しています。顧客が海外に出る前に⾃ら率先して新境地に 赴き、現地の市場調査や設備投資を⾏い顧客が安⼼してその地に進出できるよう⼟台を作る、「顧客を追いかけるのではなく、先に待って迎える」のが同社のスタンスです。

ネバーストップ、トライ&エラー

就職する時、「クリエイティブなコトがしたい」と仕事を探しましたが、ビジネスマンになりたかった訳ではありません。こんな私に就職先があるはずもなく、この会社を起業しました。イベント企業の寿命は10年といわれる中、28年間続いています。創業当初、タイではクリエイティブなイベントもなければ、顧客側にクリエイティブの重要性を訴える人もいませんでした。

このような環境下とイベントという単発での発注が多い特性上、毎回が失敗できない本気の勝負です。私の毎日は常に競争で、来る日も来る日もアイデアを出さなければなりません。すべてが勉強のチャンスであり、トライ&エラーの繰り返し。生き抜くためには発注主よりスマートでなければなりませんし、自然と「ネバーストップ」になります。これは会社のスローガンでもあります。24時間、休日も関係なく頭の中は仕事のことを考えています。すべての源はクリエイティブを求める情熱なんです。

私は過去の話をするのが嫌いで、常にこれがベストではないという考えです。

価値観を創出する

アジア各国でイベントを仕掛けていますが、それぞれのお国柄が出て面白いですね。ミャンマーでは蔓延する賄賂体質を切り抜け、イベント内容のみで受注することに成功しました。ベトナムでは、ポーランドのアウシュビッツのようにベトナム戦争を後世に伝える観光施策を提案しましたが受け入れられませんでした。

思い出深いのはミャンマーで初めてとなった「西暦の新年カウントダウンイベント」です。ミャンマーは1月1日に向けたカウントダウンの習慣はありませんでしたが、民間のスポンサーを募り20万人を集めるイベントになりました。ただ人を集めることに意味があると思っていません。この日は地球の自転に合わせて世界中でカウントダウンが行われます。その時間軸の一つにミャンマーを乗せ、世界にミャンマーをアピールできた瞬間でした。世界のスタンダードに参加することで、この国の国際化に少しは寄与できたと自負しています。

プレゼンルーム(同社オフィス内)もクリエイティブ

質疑応答では、こんな質問が・・・

Q.日本の大手企業とも仕事をした経験から、日本企業の印象を聞かせてください。
A.保守的ですね(笑)。各国のパビリオンを請け負った経験からですが、日本のクリエイティビティは低かったように感じます。日本は一つの組織に長く帰属しているせいで変化に慣れていません。世界は常に変化していますが、日本は停滞しているように感じます。心を開いて速い変化を受け入れてみてはどうでしょう。

日本は品質を大切にするため、自分たちで作ることにこだわり、完璧な製品になってから世に送り出しますが、市場は本当にそれを求めているのでしょうか。
Just keep looking for better!

THAIBIZ編集部

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