ArayZ No.101 2020年5月発行タイ 2020年最新版 インフラ計画進捗状況
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カテゴリー: 特集
公開日 2020.05.10
目次
タイの国土面積は日本の1.4倍の51万3,000平方キロメートル、南北は最も長い部分で1,860キロメートルに及ぶ。そこに、約7,000万人が暮らしている。
タイ政府は元来、鉄道より道路の整備を優先してきた。1950年以降、精力的に整備され、49年に760キロしかなかった舗装道路は、69年には7,822キロに急増している。現在、タイの道路総距離は約70万キロに達し、一般市民の移動や貨物の輸送経路として重要なインフラとなっている。一方で、一極集中が進むバンコクなど大都市や、主要都市間を結ぶ幹線道路の渋滞が課題となっている。
官営鉄道は1897年にバンコク(フアランポーン駅)~アユタヤ間が初めて開通した。日本初の鉄道として新橋~横浜間が開業した72年と比べても、大きく遅れているわけではない。ただ、その後は歴代の政権に軽視され、予算不足で新規車両の購入や満足なメンテナンスが出来ず、レール、車両の老朽化が進み、利用者の足が遠退き更に収入が先細るという悪循環に陥った。過去には日本で引退した車両がタイに譲渡されたこともあった。
現在の鉄道総距離はチェンマイに向かう北部線やノーンカーイやウボンラチャタニーに向かう東北部線など約4,600キロだが、全体の8割が単線となっているなど複線化が進んでおらず、ダイヤの遅れが頻繁に発生している。
港湾はチャオプラヤー川沿いに1951年に開港したバンコク(クロントーイ)港、91年に大型船も常時入港できる深海港として開業したチョンブリ県のレムチャバン港、ラヨーン県のマプタプット港をはじめ、南部のタイ湾側、アンダマン海側などに全43ヵ所あり、年間で1億1,000万トン余りの貨物を取り扱い、自動車などタイの輸出産業を支えている。
エアアジアやノックエアーなど格安航空会社(LCC)が普及した空港は、1924年にタイ空軍の飛行場としてオープンした歴史あるドンムアン国際空港や日本も資金援助して2006年に開業したスワンナプーム国際空港など全国各地に計38ヵ所あり、年間延べ1億6,000万人余りが利用。タイの重要な産業である観光業を支えている。
タイ政府は15年~22年間での国内交通インフラ整備に計2.8兆バーツを投資する計画を立てている。バンコク一極集中を緩和させる「東部経済回廊(EEC)」プロジェクトやチェンマイ、プーケットといった地方都市でも交通インフラを整備する議論が高まっている。さらに駅至近での不動産・商業施設開発も活性化され、新たな事業機会が生まれる土壌ができつつある。
タイ政府は2010年に現在建設・計画されている都市鉄道事業の基となるバンコク首都圏都市鉄道マスタープラン(M-MAP)を策定。29年までに首都圏の鉄道網を全長509キロ、312駅に拡張することを目指している。ただ、新規・既存路線が郊外に延伸する中、連結性などの課題が浮き彫りになり、新路線の建設・整備を含む改訂版「マスタープラン(M-MAP2)」の策定を進めている。
BTSグループ・ホールディングスは2月14日、19年4月~12月の利用客数が、路線拡張を背景に前年同期比3.6%増の1億8,650人となったと発表した。スクンビット線は、南部延伸区間のベーリング~ケーハ間が開通。北部延伸のモーチット~カセサート大学間も運転を開始。クーコットまでの全16駅は年内に全路線が開業する見通し。ただ今年に入って、新型コロナウィルス感染拡大による在宅勤務の増加や、商業施設の閉鎖などにより全体の利用者は急減。3月は前年同月比45.2%減の1,170万人とBTS開業以来、最大の減少幅を記録。1月~3月までの利用者も前年同期比17.5%減の5,040万人だった。
地下鉄・高速道路を運営するバンコク・エクスプレス・アンド・メトロ(BEM)は2月、19年の1日当たりの平均乗客数が前年比8.1%増の33万6,849人だったと発表した。延伸区間のフアランポーン~ラクソン間が開業したことが寄与した。3月末にはタオプーン~タープラ間が正式に開業する予定で、1日当たりの乗客数は平均50万人に増えると予測した。
高速鉄道を含むと10路線以上が乗り入れることになるバンスー中央駅がオープンする21年には、バンコクとノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカーン3県を跨る都市型鉄道の総延長が、282.24キロになる見通しだ。
ダークレッドライン(バンスー~ランシット間26.3キロ)とライトレッドライン(バンスー~タリンチャン間15.26キロ)は年央から試運転を開始。モノレールのピンクライン(ケーライ~ミンブリ間37.3キロ)とイエローライン(ラップラオ~サムロン間33キロ)は1月末現在で工事進捗率が5割を超えたという。
さらに23年にはオレンジライン(タイ文化センター~ミンブリ)が開通。グレーライン(ワチャラポン~トンロー、ルンピニー~タープラ)、ゴールドライン(クルントンブリ~クロンサン区役所~タクシン病院)に加え、バンナーとスワンナプーム国際空港(クリック大学)を結ぶモノレールが検討されている。
地方では鉄道の開発・整備が不十分で、遅延発生の原因となっている。このため、政府は物流コスト削減や交通渋滞の緩和のため、旅客・貨物ともに鉄道による輸送に力を入れている。各都市を結ぶ高速鉄道や複線鉄道で国内約6,000キロの鉄道網を整備するほか、東北部のナコンラチャシマなど主要都市に公共交通システムを導入する考えだ。
運輸省は21年度(20年10月~21年9月)予算案の鉄道インフラ整備事業に、バンコク首都圏のダークレッドライン(ランシット~タマサート大学間)に加えて、東北部コーンケン県バーンパイ~ナコンパノム間の複線鉄道などを盛り込むことを計画している。
タイが抱える問題の一つに深刻な地域格差がある。バンコク首都圏と地方との経済規模の違いは日本より大きい。そこで東部経済回廊(EEC)に続いて政府が掲げた地域開発計画が、南部のチュムポーン県、スラタニ県、ラノーン県、ナコンシータマラート県の4県による南部経済回廊(SEC)だ。
同地域は東はタイ湾、西はアンダマン海に挟まれ、ゴムなどの天然資源やサムイ島などの観光地を擁している。政府としては観光やヘルスケア、農業の振興やベンガル湾他分野技術経済協力イニシアチブ(BIMSTEC)諸国向けの貿易拠点として構想しており、ラノーン港の拡張や鉄道の新設なども計画。19年1月には116事業に計1,086億バーツの予算が付与されている。
中国が建設資金などで協力するバンコクとナコンラチャシマを結ぶ高速鉄道(第一期)計画だが、車両、線路の調達や電気系統機器・システムの導入などで両政府は契約の締結に至っていない。5月を目途に調整を続けていたが、新型コロナウィルスの感染拡大による混乱で10月に延期される見通しだ。将来はナコンラチャシマからノンカイ、ラオスのビエンチャン、中国の雲南省まで延伸する予定。また、日本とのバンコク~チェンマイ間の高速鉄道計画も頓挫している。
15年時点で4,034キロあった全国の鉄道網のうち、複線の総距離は359キロのみで、残りの3,675キロは単線。利用者と貨物の輸送が非効率に行われてきた。物流コストの削減や道路の渋滞緩和には複線化は避けられず、22年までに839キロを追加し、35年までに2,992キロと、全長の81%を複線化にする計画だ。
現在複線化の工事が行われているのは、中部サラブリ県マーブカバオ駅~東北部ナコンラチャシマ県タノンジラ・ジャンクション駅間(全長132キロで22年開通予定)など。タイ国鉄(SRT)の利用者は18年、3,500万人だったが、計画通りに複線化が進めば、8,000万人に増加すると試算される。
タイは人口6億人を超えるASEAN経済圏の中心に位置する。
1997年~98年のアジア通貨危機や、2004年のインド洋津波、06年と14年の軍事クーデター、11年の大洪水など数々の困難を克服し、成長を続けてきた。同時に日系企業を筆頭に積極的な外資誘致政策が功を奏し、自動車を中心とした産業の集積が進んだ。
16年6月には、産業構造の高度化を図る新たな国家プロジェクト「タイランド4.0」を策定。この戦略の中核となるのが、東部経済回廊(EEC)で、成長著しいアジア諸国への主要な玄関口と期待されている。東部臨海工業地域(イースタンシーボード)の3県(チャチュンサオ、チョンブリ、ラヨーン)の再開発を含むインフラ基盤の整備に5年間で5兆円超の投資を行い、電気自動車やロボットといった先端技術産業・企業の誘致を目指している。
手厚い税恩典などの投資促進策を背景に、19年のEEC域内向けの投資申請件数は506件で、金額は全体の6割を占める4,448億8,000万バーツに達した。業種別では、自動車・同部品や電気・電子製品などが上位を占め、BOIのドゥアンジャイ長官は、20年も恩典の拡充などで、投資申請件数・額が増加する見通しを当初は示した。
商業省企業振興局によると、20年1月の新規企業登録数は前年同月比4.4%増の719社で、業種別では不動産(115社)、建設(40社)、不動産ブローカー(39社)が上位を占めた。
1月末時点で事業活動を行っていた企業数は7万2,385社だった。外資比率は40.3%。このうち日本資本が最も多く全体の48.6%を占め、次いで中国10.3%、シンガポール5.5%、米国3.7%、韓国3.0%と続いた
工業用地の販売・貸し付けも堅調だ。直接運営と民間企業との提携を含めて全国60ヵ所の工業団地で事業を展開するタイ工業団地公社(IEAT)によると、19年度(18年10月~19年9月)においてEEC域内での販売・貸し付けが1,964ライ(1ライ=1,600平方メートル)と全体の約9割を占めた。
また、昨年の工業団地外への工場新設・増設の許可申請件数は、前年比11%減の計550件だったが、総額は同65%増の1,110億2,100万バーツだった(工業省工場局集計)。業種別では、石油化学製品がトップで、電気機器、プラスチック製品が続いた。米国との貿易摩擦を背景に、中国系企業によるEEC域内への生産拠点移転の増加などが、需要を高めている。
それでは巨大なEECプロジェクトの概要や進捗状況を見ていこう。
東部経済回廊(EEC)政策委員会によると、2022年〜25年にかけて完工・利用開始が見込まれている主なインフラ整備計画は以下で、東南アジアおよびアジア太平洋地域への玄関口としての役割が期待される。
タイ国鉄(SRT)のマッカサン駅がターミナルとなり、北郊ドンムアン国際空港とスワンナプーム国際空港、東部ウタパオ国際空港を結ぶ高速鉄道で、24年の開通・開業を目指している。最速250キロで9駅(上記4駅に加えて、バンスー~チャチュンサオ~チョンブリ~シラチャー~パタヤ)を結ぶ。マッカサン駅(約140ライ)とシラチャー駅(25ライ)は公共交通志向型都市開発(TOD)の対象に指定されている。
さらに、実現可能性調査を完了したシラチャーからカンボジアと国境を接するタイ南東端に位置するトラート県クロンヤイまでの複線鉄道整備と並行して、延伸する案が浮上。延伸区間を「東部フルーツ回廊」として整備し、観光促進を図る考えだ。
新たに第2滑走路と第3旅客ターミナル、商業施設、自由貿易ゾーン(FTZ)を23年までに増設。中国やロシア、インドからの団体客を見込んで、旅客収容能力を15年間で2,200万人に引き上げる見通し。また、需要が見込まれる航空機整備(保守・修理・分解:MRO)施設と同産業向けの人材研修センターが22年までに同空港近くに確保している500ライの土地に新設される。
最先端の自動システムなどを導入し、コンテナ取扱量を年間700万TEUから1,800万TEU(Twenty-foot Equivalent Unit、20フィートコンテナ換算)へ増強。「アジアのデトロイト」からの自動車輸出能力を年間100万台から300万台に25年までに増加させる目標を設定している。
天然ガス・液体材料用(それぞれ年間約2,000万トン、1,100万トンの運送能力)と発電所・倉庫関連開発用のターミナルで構成される。25年までに1,000ライ(1ライ=1,600平方メートル)の敷地に、液化天然ガス(LNG)のタンカー接岸港2ヵ所、ガス積替え桟橋3ヵ所の増設、貨物倉庫、天然ガス関連事務所、沈泥溜め、サービス施設、砂防石堤防、防波堤の建造などを行う予定。
EEC域内の鉄道を複線化。レムチャバン港、マプタプット工業団地港、国内に点在する工業地区、内陸のコンテナ倉庫など、需要な工業団地・物流センターを連結、物流コストの削減による費用対効果の高い運送を実現する。SRTは2月にシラチャーからトラード県クロンヤイまでの複線鉄道整備の実現可能性調査を完了したことを明らかにした。
EECの重要拠点を結ぶ高速道路の建設。7号線などを延長することで、運送・移動時間を短縮。また、都市間を結ぶ道路網により、未開発地域への交通の利便性が向上する。
「タイランド4.0」やイノベーションの奨励に加えて、EEC域内に住む人々の生活をあらゆる面から支える地域づくりを目指す。質の高い教育・医療サービス、インターネット環境など最先端のインフラ整備を進める。
東部経済回廊(EEC)では21ヵ所の「ターゲット産業投資奨励ゾーン(工業団地)」が設置され、12のターゲット産業への投資なら追加の恩典を受けることが可能だ。さらに5ヵ所の「特定産業投資奨励地区」も設けられている。
アマタシティチョンブリ工業団地など3県で21ヵ所の工業団地が12のターゲット産業のための場所として指定されている。「タイランド4.0」では、12分野がターゲット分野として定められており、追加恩典が与えられる。既存の有望分野「Sカーブ産業」である「次世代自動車」「スマート電子機器」などの5分野と、次世代の有望分野「新Sカーブ産業」である「自動化・ロボット」や「航空関連およびロジスティクス」といった5分野に、「防衛」と「教育および人材開発」が19年に追加された。
さらなる企業の誘致を図るために、タイ投資委員会(BOI)は昨年12月19日、EEC域内のプロジェクトに対する投資恩典を拡充・改定することを明らかにした。20年1月2日から21年末まで申請を受け付ける考えだ。
恩典の対象となる地域と事業分野が拡大されたが、投資が域内の人材育成プログラム(科学技術分野)向けか、もしくは特定地域向けかによって、恩典内容が異なる。
特定産業においてEECイノベーション(EECi)、デジタルパーク(EECd)、東部航空都市(EECa)、メディカル・ハブ(EECmd)内に立地する投資案件に追加恩典が与えられる。
EECiは、イノベーションを促進し、将来拡大する事業の機会に応える技術の高度化を図る。ラヨーン県ワンチャンヴァレー地区(面積3,000ライ)に、①先端農業および食品(FOOD INNOPOLIS)②バイオ燃料およびバイオ科学(BIOPOLIS)③人工知能(AI)および自動化・ロボット(ARIPOLIS)といった産業都市を開発する。
デジタル経済社会省傘下の法人が運営するEECd(チョンブリ県シラチャー地区の708ライ)は、デジタル産業の革新と投資に焦点を当てた特区。AI・IoT(モノのインターネット)の研究施設やインターネット・データセンターに加えて、人材育成の教育機関や居住地区を含むデジタルコミュニティーを目指す。
ラヨーン県ウタパオ国際空港周辺の特区(6,500ライ)で、第3ターミナルの建設や航空機整備センターの設立などが計画されている。
チョンブリ県バンラムン地区(566ライ)。総合的な医療サービスやヘルスケアを提供するタイ初の医療ハブ。国の高齢化に備えることも目的としている。
北郊ドンムアン国際空港とスワンナプーム国際空港、東部ウタパオ国際空港を結ぶ高速鉄道沿線地域と公共交通志向型開発地域(TOD)であるマッカサン駅とシラチャー駅を対象に開発する。
タイ工業団地公社(IEAT)は月、複合企業のアジアン・クリーン・インダストリアル・パークと連携してチョンブリ県バンブン地区に新たに工業団地「Asia Clean Chon Buri Industrial Estate(敷地面積1,300ライ)」を開発することを明らかにした。
タイ国内で61番目の工業団地となる。入居を見込むのは投資恩典の対象となるターゲット産業の企業で、環境に配慮する「エコ産業コンセプト」が売りとなる。
投資額は400億バーツで、8,000人以上の雇用を創出すると期待される。
懸念材料は工業用水の確保となりそうだ。ここ10年で最悪といわれる干ばつの影響で、貯水量不足は深刻化。新たな水資源を見つけないと、6月には工業用水を供給できなくなると工業省は警鐘を鳴らした。乾期の雨量は少なく域内にある一部では40%を下回る貯水池がある。工場で水を大量に使用する製造現場は雨期に降る雨に依存しており、安定した水供給に向けて新たな対策が求められている。
3月4日には、工業省、IEATと同域内で給水事業を行うイースタン・ウオーターが協議。EEC事務局によると、近隣のチャンタブリ県とサーケオ県に貯水池を建設している。
チョンブリ県とラヨーン県にある工業団地の1日当たりの需要量は、それぞれ10万立方メートル、37万立方メートルで、各工業団地もそれぞれ対策を練っているようだ。
東部経済回廊(EEC)で加速するインフラ整備を背景に、リゾート地のパタヤ(チョンブリ県)のコンドミニアム販売が堅調な動きを見せている。19年の販売戸数は1万5,545戸と5年ぶりの高水準となった。不動産サービス大手コリアーズ・インターナショナル(タイランド)によると、特に下半期は上半期の2倍以上増加し、活況を取り戻した。
首都圏では今後開業するオレンジライン(タイ文化センター~ミンブリ23年開通)、ピンクライン(ミンブリ~ケーライ21年開通)、イエローライン(ラップラオ~サムロン21年開通)沿線でコンドミニアムの供給が今年増えそうだ。都市中心と比較して土地価格が割安で不動産開発会社にとって旨味のあるロケーションになっている。
タイ政府系住宅銀行の不動産情報センターによると、19年10月~12月の首都圏6都県(バンコク、パトゥムタニ、サムットプラカーン、サムットサコン、ナコンパトム、ノンタブリー)の未利用地の価格指数は12年を100として約3倍の284.7と前年同期比で27.6%上昇した。
建設中もしくは予定されている路線の周辺での上昇幅が大きく、グリーンラインの延伸予定区間のクーコット~ラムルッカー、建設中のピンクラインのケーライ~ミンブリ区間、グリーンラインの開通・延伸予定区間のベーリング~ケーハ~バンプーといった郊外で大きな伸びを見せた。
特にオレンジライン沿い(ラマ9世通り~ラムカムヘン~ラムサリ)では、プルクサー、アナンダ、オリジンプロパティなど5社が、少なくても6プロジェクト(総戸数4,000~5,000戸)を開発中。北郊のラムイントラ地区でも5プロジェクト(総戸数3,000戸)が進行中だ。
コリアーズによると、開発大手は今後発表される新たな「バンコク都市計画」を注視している。建築基準法が改訂され、ラップラオ地区などでの建築許可が下りやすくなると期待されている。一方で、景気後退を背景に、住宅需要が落ち込んでおり、開発業者は建設場所の選定に慎重な姿勢を見せている。さらに、新型コロナウィルスの影響を受けて、タイの住宅開発会社の第一四半期における景況感指数の悪化も判明している。
アジア開発銀行はかつて、16年~30年までに東南アジアで約3兆1,000億ドルのインフラ需要が発生し、タイだけでも2,340億ドルのインフラ整備需要が生まれるという予測を立てた。
4月には財務省が20年~27年までに1兆900億バーツの官民連携(PPP)投資を計画し、大型インフラ整備事業などにあてることなどが明らかになっている。また、運輸省は18年〜37年までの20年計画を立てている。新型コロナウィルス拡大による経済への影響が見通せない中、政府による公共事業への投資は景気対策としてもさらに重要になる。
ただ、タイは2月26日に当初の予定より5ヵ月遅れて20年度(19年10月~20年9月)の予算案が承認された。ただでさえ予算案の審議が遅れていた中、採決での代理投票が発覚し、憲法裁判所からやり直しが命じられたのだ。予算の執行が遅れたことにより、スワンナプーム国際空港の新ターミナルやオレンジラインの建設開始にも遅れが出る見通しだ。
将来、タイは東南アジアのハブとして近代的なインフラを全土に張り巡らせることができるのか。官民が一体となったプロジェクトの進行が望まれる。
次号ではバンコク首都圏で進められているBTS、MRTの延伸・新設プロジェクトの進捗状況および注目開発エリアを紹介する。
タイ投資委員会(BOI)は新型コロナウィルスの影響に伴う景気停滞を抑えるため、医療機器製造への新たな優遇策を打ち出した。
マスクや防護服に使われる不織布などの医療機器、薬品、薬品の有効成分の生産投資案件に対して、既存の3年~5年の優遇税制に加え、法人税を3年間、50%減免する。条件は今年1月から6月30日までに申請され、12月31日までに生産し、売上が発生したプロジェクト。さらに来年末までに生産した分の50%以上は、タイ国内で販売または寄付しなければならない。
医療機器、部品製造のための既存製造ラインの転換に対して、年内に限って機械の輸入関税を免除する。申請は9月中に行わなければならない。
その他、医療用アルコールの生産に8年間の法人税免除を付与する。マスクなどに使われる不織布生産の追加恩典として、法人税の免除期間を3年から5年に延長する。
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THAIBIZ編集部
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