勃興するメコン5 〜期待と注目のCLMVT〜

ArayZ No.105 2020年9月発行

ArayZ No.105 2020年9月発行勃興するメコン5 〜期待と注目のCLMVT〜

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勃興するメコン5 〜期待と注目のCLMVT〜

公開日 2020.09.10

寄稿者プロフィール
  • プロフィール写真
  • みずほ銀行 ヤンゴン支店 営業課 課長
    菊次 亮太

    千葉県生まれ。2005年入社。国内支店勤務を経て、14年よりシンガポールにて日系企業営業を担当。18年2月よりヤンゴン支店に着任。営業課長として日系企業の新規進出や現地銀行取引のサポートを行う。

ミャンマーの経済動向

民政移管後順調な発展
中国の投資も増加傾向

ミャンマーは2011年に民政移管によって誕生したテインセイン大統領(当時)の政権下で規制緩和や外資企業の誘致を進め、以降GDPは6%~8%で成長してきました。

民政移管後、海外からの直接投資も増えました。最近は米中貿易摩擦もあってチャイナ+1のような形で中国からの縫製業の進出も多く、中国企業による大規模な天然ガス発電所の建設計画もあります。

日本からの進出企業は416社(20年7月時点)で、民政移管直後の12年3月の53社から約8倍にまで増えています。業種は建設業が最も多いですが、IT関連や日本への人材派遣などサービス業の進出も多くなっています。

ミャンマーの特色

大国のインド、中国と隣接
豊富な若年層、人口も増加

ミャンマーはインド、中国という大国と接しており、インド、中国、東南アジアを結ぶ地政学的な要衝にあります。

直近でも政府が東部のモン州に新しい経済特区と大型の港を作ると発表しています。モン州は東西経済回廊の西端、インド洋に面した箇所にあります。ここで回廊や港の整備が進めば、船でマラッカ海峡を通っている貨物が陸路で直接運べることになり、ミャンマーの重要性が増します。

また、中国が進める一帯一路構想の中で、ミャンマーはインド洋と中国を結ぶ存在になっています。既に中国から第2の都市マンダレー、西部のチャオピューまで天然ガスのパイプラインが稼働しており、他にも鉄道や高速道路、経済特区として大型港が計画されています。

人口の約7割が生産年齢人口とまだまだ若い国です。国連の統計では30年後には人口がさらに1000万人増え、生産年齢人口比率も現在とほとんど変わらないと言われており、今後も人口ボーナスが続いていく見通しです。

貧しい家庭でも日本の寺子屋のような僧院学校で最低限の教育は受けることができ、そのためか識字率は周辺の新興国と比べて高く、先進国とそん色ありません。ワーカークラスの賃金はタイやベトナムと比べても低い水準にあります。

ミャンマーの企業動向

国内市場向けの投資が増加
ヤンゴンの都市開発も進展

今、ミャンマーの一人当たりGDPは1400米ドル程ですが、ヤンゴンに限れば3000米ドルともされています。2000米ドルを超えると二輪、3000米ドルを超えると自動車の需要が高まると言われています。

トヨタ自動車は昨年、日本とミャンマー政府が共同で開発しているヤンゴン近郊のティラワ経済特区に5260万米ドルを投資してピックアップトラックの工場建設を発表しています。ヤクルトも同経済特区内に工場を開設し、昨年から本格的にヤンゴン近郊で乳酸菌飲料の販売を開始しました。

ティラワ経済特区への進出は順調で、第一期のゾーンAはほぼ完売、第二期のゾーンBの売行きも好調です。2年前に赴任した当初は、ヤンゴン川を越えたティラワ側の道路事情が悪く、車に乗っていると腰が痛くなるほどでしたが、今では日本の支援により道路が整備されて1車線から2車線に増え、渋滞も減り快適になりました。

イオンは品揃えの広いスーパーマーケット業態のイオンオレンジを展開していましたが、今年に入りヤンゴン郊外でミャンマー1号店となるイオンモールの出店を発表しています。開業は23年の予定です。ミャンマーでは初の外資系のショッピングモールとなります。

ヤンゴンでは東京建物とフジタが現地企業と共にオフィスや商業施設、ホテル(オークラ)など1万6000㎡に及ぶ大型複合開発が進行中。三菱商事と三菱地所も現地企業と組んで約4万㎡の大規模再開発事業を進めています。

これまで都市化が進んでいなかったヤンゴン川の対岸側でも様々な都市開発が計画されており、10年後にはヤンゴンの人口が1000万人に達するとの予測もあります。彼らをターゲットにしたビジネスも今後拡大していくと見ています。

ミャンマーの課題

不安定な電力供給
インフラ整備も途上

ミャンマーにとっての大きな課題はまず電力です。ミャンマーの電化率は5割ほどで、地方の農村部ではまだ電気がない生活を送っています。

ミャンマーは水力発電が6割ほどを占めていますが、水力発電はダムの貯水量が少なくなると発電できません。ミャンマーも雨季と乾季があり、雨季に入る直前の5月、6月は一番水量が少なく、停電が多く発生します。去年はヤンゴン市内でも計画停電が何度も行われました。自家発電機のない建物だと、昼間の気温30度を超える中で冷房も使えない状況となります。

交通インフラでは深海港がないため大型船が入港できません。例えば河川港であるヤンゴン港にタイから船で輸送するためには、シンガポールで大型船から積み替えなければなりません。道路や鉄道は軍政時代に整備されたものの、その後十分なメンテナンスが行われておらず、市内の渋滞や物流の遅延の原因となっています。

ミャンマーの新型コロナの影響

観光や縫製業に打撃
来年には回復との予測も

ヤンゴン市内

ヤンゴン市内

新型コロナウイルスの感染者数は586名(保険・スポーツ省、8月27日時点)と他国に比べて低い水準でしたが、直近ラカイン州で多数の国内感染が発生しており第二波に警戒が必要な状況です。

深刻な影響を受けているのは観光業です。ミャンマーは海外からの観光客が一つの外貨獲得源でした。その中で国際線の離発着を完全に止め、国内でも移動を制限したため大きな打撃を受けています。

4月には製造業を対象に政府の査察が行われるまで操業を停止する措置があり、一時的に生産活動がストップしました。また、水際対策を強化する中で縫製の材料となる生地が中国から届かず、操業停止や廃業になった工場も出ています。

これらの結果、世界銀行は20年9月期のGDP成長率に関して、0・5%に落ち込むとの予測を出しています。ただし、21年9月期は世界銀行によると6・8%まで戻るとの見通しで、反転・回復することが見込まれています。

今年11月には総選挙が行われます。アウンサンスーチー国家顧問率いるNLD(国民民主連盟)は前回総選挙で単独過半数を獲得しました。ただ今回は前回のような圧勝は難しいという見方が大勢です。連立政権となる場合は閣僚人事にも関係してくるため、どのような政権が誕生するのか注目されます。

IPP(独立系発電事業者)など民間資本を活かした発電所のプロジェクトが複数あり、海外の資金を活用して道路や橋、鉄道といったインフラの整備も進んでいます。より外資が進出しやすくなる土壌ができあがると見ています。

タイと経済的な結び付きは強く、ヤンゴン市内ではタイ製の食料品、日用品もよく見かけます。新型コロナウイルスが収束した際には、ぜひ現地に来てポテンシャルを肌で感じていただければと思います。

>次ページ:ベトナムの経済動向

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THAIBIZ編集部

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