勃興するメコン5 〜期待と注目のCLMVT〜

ArayZ No.105 2020年9月発行

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勃興するメコン5 〜期待と注目のCLMVT〜

公開日 2020.09.10

寄稿者プロフィール
  • プロフィール写真
  • みずほ銀行 バンコック支店 メコン5課 調査役
    菅野 祐太

    2015年に来タイ。バンコック支店イースタンシーボード出張所にてEEC地域の日系企業の営業担当を経て、17年よりメコン5課でアドバイザリー業務に従事。18年からEEC地域における日系企業の進出支援も行う。

タイの経済動向

製造業支える自動車産業
バーツ高などで輸出減速

東南アジア最大の自動車生産台数を誇り、EEC(東部経済回廊)と呼ばれる東部地域を中心に自動車産業をはじめとする日本企業が多数進出。レムチャバン港近くのシラチャーには1万人近くの日本人が住むなど、日系企業がタイに根付き経済発展を支えてきました。

2011年には政府が初回自動車購入者への税優遇制度を実施。需要が大幅に伸びて、さらなる市場の拡大を見越した日系企業の進出が相次ぎました。その後、生産台数が伸び悩むと日系製造業の大型投資は少なくなり、サービス業が投資の中心になっていきました。

昨年は米中貿易摩擦による中国向けの輸出減やバーツ高で輸出産業が痛手を被り、個人消費も伸び悩んでGDP成長率は2・4%となりました。

タイの特色

東部に大型インフラ投資
農業分野の高度化途上

タイ政府は東部の臨海工業地帯の産業を高度化する「EEC政策」を推し進め、対象業種などには法人税減税などの恩典を与えています。

他にも東部では総事業費2245億バーツの3空港連結高速鉄道や、同2900億バーツのウタパオ国際空港拡張などの大型インフラ投資が見込まれており、サプライヤーとして日系企業も参画余地があると見込まれます。

これらが完成すれば、バンコクと東部地域がより身近になり、人とモノの流れが活性化します。また、メコン5の中では人件費が高く、ロボットの導入など生産工程の自動化は拡大余地があります。

タイは農作物が豊富で国際的にも競争力を持っています。輸出量で米、粗糖は世界2位、キャッサバは世界1位となっており(いずれも18年、OECより)、各種果物も各国に輸出されています。

そういった農作物を原料とした製造業も今後、可能性があると見ています。製糖大手のミットポンは既にサトウキビを用いたバイオマス発電やバイオエタノールの製造に力を入れています。持続可能な発展を目指すグリーンエコノミーは世界で注目され、タイ政府も産業高度化政策「タイランド4・0」のターゲット産業の一つに農業・バイオを挙げています。

政府がバイオエコノミー、サーキュラーエコノミー、グリーンエコノミーからなる「BCGモデル」を推進しており、農業の高度化に力を入れています。タイの投資誘致機関であるBOI(タイ投資委員会)は今年6月に農業の高度化を支えるビジネスに関して追加の投資恩典供与を発表しており、具体的には植物工場などの新しい農業テクノロジーの浸透を後押ししています。

タイの企業動向

中国企業による大型投資
地場企業は周辺国を模索

米中貿易摩擦により、中国からの生産移管を考えている企業は多いです。中国の家電大手、美的集団はチョンブリ県に130ライの土地を買い、エアコン工場の建設をすると見られています。

また、タイからの撤退を発表したGMのラヨーン県の工場は中国の自動車大手長城汽車が買収しました。そのように中国企業の投資が増えており、昨年はタイへの海外直接投資の1位は中国でした。

人工合成クモ糸素材を作る日本のベンチャー企業スパイバーが初の量産工場をラヨーン県に建設しています。タイの農産物については既に触れましたが、同社はタイを選んだ理由として、生産に際して発酵の原料となるバイオマス資源が豊富なことを挙げています。日本で培った技術を基に、日本ではなく海外でスケールアップを図るモデルになる可能性があると見ています。

再生可能エネルギーを手掛けるタイ企業のエナジーアブソルートは台湾のリチウムイオン電池メーカーを買収し、現在はEV(電気自動車)の生産に挑んでいます。タイ企業は周辺国への進出も図っており、タイでコンビニエンスストアのセブンイレブンを展開するCPグループは来年、カンボジアに出店することを発表しています。

高齢化社会に入って市場が頭打ちになり、タイ企業もいかに海外で稼ぐかの時代に入っています。これからはタイ企業が国内だけでなく周辺国で何をするかも注目点です。

 

タイの課題

進む少子高齢化
人材育成が急務

少子高齢化が進み、労働人口は減少していきます。周辺国と比べると労働コストは上昇しており、人材の質が追いついているのかという課題もあります。

タイ政府も人材育成に力を入れようとしていますが、具体的な教育政策に落とし込まれているわけではありません。人材育成は数年で効果が出るものではなく、長期的な取り組みが必要です。

スイスのビジネススクールIMDが発表した「2019 World Talent Ranking」によると、タイの人材魅力度ランキングは対象63国中43位であり、アジアでも下位に位置します。特に教育に対する政府支出が低いことや、生徒一人当たりの教師数が少ないことが低評価に繋がっています。

国内市場も成熟してきており、日系企業の多くはこれまでの事業に限界を感じています。いかにタイ企業とビジネスをするか、現地化をするかという考えにシフトしています。

タイの新型コロナの影響

産業の柱の観光業に打撃
需要減で自動車生産も痛手

新型コロナウイルスの影響で自働車の販売が減少

新型コロナウイルスの影響で自働車の販売が減少

感染者は3404人(WHO、8月27日時点)ですが、約3ヵ月市中感染はなく、海外からの帰国者で確認されているのみです。ただ、タイは東南アジアの中でも経済へのダメージが大きかった国の一つです。

元々、GDPに占める観光業の割合が他国に比べて高く、タイのGDPの15%程を観光業が担っています。近年は特に中国人旅行者が激増して観光業を支えていましたが、感染拡大防止のため国際線旅客機の乗り入れ禁止などが行われると旅行者が激減し、大きな影響を及ぼしています。

タイの製造業を支える自動車産業も、国内外で需要が減少して生産台数が落ち込んでいます。今年上半期の生産台数は前年同期比約40%減、通年でも30%減と見られており、タイの製造業に打撃を与えています。

在宅勤務の浸透により自炊率が上がり、調理器具が売れるなどの側面もありました。近年、タイでも健康志向が高まっており、今後個人消費に変化が起きていく可能性があります。機能性食品などにノウハウを持つ日系企業にビジネスチャンスはあると見られます。タイの介護分野に注目している企業も多いです。

市場の伸び悩みなどはありますが、5000社の日系企業や3000店を超える日本食レストランがあり、製造業が外資100%で設立できるなど、日本企業にとってこれほど進出しやすい国はあまりありません。

世界銀行によるビジネス環境ランキングでもタイは年々順位を上げています。私たちはタイ政府のEEC事務局と提携して、進出を検討する企業らに対して様々な情報提供を行っています。今後もEECの進展に注目していただきたいと思います。

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THAIBIZ編集部

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