公開日 2023.12.26
タイ工業連盟(FTI)は11月1日、国内外の企業家を結びつけ、タイ経済への信頼性向上を目指す「海外産業クラブ(FIC)」の設置を発表するとともに、ネットワークキングイベント「FIC2023」を開催した。FICは公的部門、民間部門、起業家、そして海外投資家が産業、貿易、投資分野で連携するための討議や情報交換をする初めてのプラットフォームになるという。この日のイベントには、官民の代表者のほか、各国大使や外交官など約300人が参加し、セター首相が基調講演した。
セター首相は、「過去10年間、タイの国内総生産(GDP)伸び率は年平均で1.8%にとどまる一方で、家計負債は2012年の76%から2023年には91.6%まで増加している。タイ経済はまだ新型コロナウイルス禍から完全には回復していないのが現実だ」と報告。「タイは競争力を再構築する必要があり、タイ政府は景気回復に向け全力で取り組んでいる。短期的政策ではエネルギーコストの削減や、景気刺激策となる1万バーツのデジタル通貨の配布であり、国民の購買力を高め、経済の循環と拡大を加速させることになる」と強調した。また、ビザ免除を通じて観光を活性化するとともに、タイを東南アジアのMICE(報奨旅行、会議、展示会)産業のハブにするとの方針も示した。
そして、中長期対策では、①タイの製品・サービス市場を拡大するためにタイ国内の経済特区(SEZ)と各地の経済回廊の整備促進②自由貿易協定(FTA)交渉の加速③外国企業誘致のための投資奨励策の拡充④研究開発に重点を置いたデジタル経済やハイテク産業などの新産業の育成強化―などを推進していくと表明した。
セター首相はさらに、「タイ政府はタイを低収益の商品・農産物の生産拠点から、高付加価値で技術とイノベーション主導の国に発展させていく方針だ。特に、電気自動車(EV)、電動バイク、電動バス、EV関連部品などのEVの全サプライチェーンを強化していく。そのためにもEV奨励策を拡充するとともに、バッテリー試験センターの設立や労働者のスキル向上、EV用充電ステーションの拡大などを計画している。タイを東南アジア諸国連合(ASEAN)のEVハブにすることが目標だ」と訴えた。
同首相はこのほか、タイを地域と世界の医療センターにする構想や、タイを地域の貿易・物流ハブにするための「ランドブリッジ」プロジェクトも改めて説明。「プラントベースドフード」を含む未来の食品、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済、電気・電子産業、デジタル産業、クリエーティブ産業、高付加価値サービスなどの広範囲のターゲット産業を推進していくと強調した。
続いて登壇したタイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ会長はまず、世界経済は技術トランスフォーメーション、貿易戦争、地政学的紛争、気候変動などさまざまな課題に直面しており、タイの競争力にも影響を与えていると指摘。「次世代産業に合わせたインフラ、ロジスティクス、産業ハブ、高度なスキルを持つ人材を備えた東部経済回廊(EEC)などの巨大サプライチェーンがあるタイは、リロケーションと投資を求める外国企業の主要目的地になっている」などと強調した。その上で、「われわれは『One FTI』政策ビジョンの下で、海外産業クラブ(FIC)を設置したことを誇りに思う」とし、タイの官民と外国企業を結び付けることでタイの産業・貿易・投資を強化するFICの狙いを説明。「このネットワークは経済協力を強化し、新たな投資を呼び込み、タイ産業分野の既存投資の拡大に備えるための重要な役割を果たすと期待されている」と訴えた。
さらに、FTIのウィチャオ・ラクポンパイロート副会長は「地域の経済パワーハウスに向けたタイの挑戦は真に素晴らしい。戦略的な立地、高度人材、ビジョンある政策が、工業化と外国投資にふさわしい環境につながっている」と強調。「われわれはタイ企業、外国企業、政府高官、企業幹部の間のネットワーキングのチャンス拡大に全力を挙げてきた」とした上で、FICの設置はタイ政府と民間部門、外国人投資家の間と対話プラットフォームとなり、産業、貿易、投資の規制制度に焦点を合わせることになると報告した。
TJRI編集部
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