「共創」の時代の日タイ関係 - 対等なパートナーとして豊かな社会を構築する -  梨田大使インタビュー

「共創」の時代の日タイ関係 - 対等なパートナーとして豊かな社会を構築する - 梨田大使インタビュー

公開日 2023.06.20

昨年は日タイ修好135周年、そして今年は日ASEAN友好協力50周年を迎えます。これまで日本はタイやASEANの経済成長をリードする形で寄与してきましたが、これからの時代は持続可能な経済社会を発展させていくために、お互いの強みを活かし、共に創っていく(共創)関係が求められています。

そこでTJRIでは、各界の第一線で活躍するリーダーに「日タイ経済共創ビジョン」をテーマにインタビューを敢行。共創時代の今、日本や日本人駐在員に求められるものは何なのか、各リーダーの視点を通して、共に考えていきたいと思います。第1回目は、在タイ日本国大使館の梨田和也特命全権大使にお話をうかがいました。

<聞き手=mediator ガンタトーン、場所=ナイラートパーク、バンコク>

在タイ日本国大使館 梨田和也大使(左)とmediator ガンタトーン(右)

違いを楽しむことで世界は広がる

Q. 海外経験が人生に与えた影響は

梨田大使:最初の海外経験は19歳の時。大学を1年間休学して、アメリカに渡りました。初めて見聞することばかりで、興奮の毎日を送っていました。小学生くらいから外国で働くことに漠然とした憧れがありましたが、異なる世界を目の当たりにすることによって、もっと多くの世界を見てみたいという好奇心が、外務省で働く決断に至りました。

日本では、「出る杭は打たれる」と、目立つことや出過ぎたまねを是としない考えがあります。しかしながら、海外では、自分を認めてもらうためには、あえて「目立つ」ことが必要です。外国人が集う輪の中に飛び込んでいって、自らをアピールする、そうしないと輪の中には入れない。時々自分の行動をピエロか?と思うこともありましたが、そこまで自己PRすることに自分を駆り立てたのは、輪の内側の世界を見てみたいという好奇心であり、それが結果として自己成長にもつながったのではないかと思います。

Q. 自分から飛び込んで得たものは

梨田大使:あたりまえのことですが、外国に行けば、異なる習慣、考え方を持つ人と出会います。そうしたふれあいを通じて、価値観は多様であること、違いを受け入れること、自分や日本の物差しで測ってはいけないことに気づきました。たとえ理不尽だと思うことがあっても、それが彼らのやり方なのだと理解すれば、大抵のことは許容できるようになります。違いを楽しむくらいの余裕が持てればと思っています。

内輪で集まる日本人、グローバル教育を受けたタイ人

Q.タイ駐在で感じるタイ社会の印象は

梨田大使:タイは、島国の日本とは違い、周辺国と陸続きで隣国の人々が多く生活しているため、異質なものに対する許容度が圧倒的に高いと思います。

タイ人ビジネスパーソンもオープンでフレキシブルだと感じています。タイ人の集まりに参加しても、自然に受け入れてくれ、様々な人々との交流を経験している人たちだと感心します。特に30~40代の若手経営者には洗練された人が多いことに驚かされます。将来のグローバルスタンダードな経営者として、海外で教育を受け、外国語も流暢で、社交性に富む人が多いことに感銘をおぼえています。

一方で、タイには日本人社会が確立されています。あえてタイ人社会に飛び込んでいかなくても心地よく暮らせ、仕事も完結するので、日本人だけの「内輪」の集まりばかり参加している人も多いのではないでしょうか。「内輪」文化を否定するつもりはありませんが、それだけではもったいないです。特に若い駐在員には、ぜひ同世代のタイ人と交流してもらいたい。多くの刺激を受け、視野を広げることができるはず。それが海外駐在の財産だと思います。

多様化するニーズに「寄り添う」経営

Q. 日本企業の現地化や国際化をどう見ていますか

梨田大使:国際化を進めている日本企業は増えていますが、これからはタイ人リーダーを育て、任せていくことがますます必要になっていると思います。もちろん、現場だけでなく、本社の国際化も重要です。また、伝統的な縦割り業務を打破する必要もあると思います。現地法人の社長の中には、日本本社が直接コントロールしている各部門の動きを把握できていない人も多いという話を聞きます。ビジネスのニーズが多様化し、パッケージでの提案が求められる今の時代では、サイロ型の仕事のやり方は非効率であり、限界があると感じています。

Q. 在タイ日系企業や日本人駐在員に求められるものとは

梨田大使:上司と部下、日本人スタッフとタイ人スタッフの「対話」が鍵を握ります。経営方針を打ち立てて、それに黙ってついてこい、といったスタイルではもはや下はついていきません。同僚や部下と双方向のコミュニケーションをとる習慣を確立し、風通しのよい職場環境をつくる、特に部下やタイ人スタッフにとって、「言いたいことが言える」組織を目指すことが重要と考えます。そうしたプラクティスを重ねることにより、組織全体に会社の目指す方向性が浸透し、一体感をもって目標に進むことができると思います。最近気に入っている言葉が「リーダーの最大の責務は次のリーダーを育てること」です。時代のニーズを的確に把握しながら、機動力をもって変革を押し進めるリーダーがどんどん輩出されていくことを期待したいと思います。

日タイ関係の未来、若手の交流・互いの強みを活かした共創が鍵

Q. 日タイの関係はどう変化しているか

梨田大使:私の世代のタイ人には、日本にあこがれ、日本から学びたいという思いで手を組んでくれたビジネスリーダーがたくさんいました。日本語を学び、日本に留学し、日本を好きになってくれました。その恩恵で日本人はタイで快適に暮らし、事業を営むことができてきました。しかしながら、今のタイの若い世代は欧米に留学する人が増え、日本はもはやその他の選択肢の一つでしかありません。日本語を操るビジネスリーダーは、間違いなく減っていくでしょう。黙っていても、日本を受け入れてくれた旧世代とは異なり、意図的に若い世代間の交流を創り出していかなければ、これまでのような日タイの蜜月関係は続かないと思います。大使館としては、そのような交流の場を積極的に提供していきたいと考えています。

Q. 今後の理想的な日本とタイ、またはASEANとの関係は

梨田大使:「共創」がキーワード。対等なパートナーとして共創していくことが求められます。ビジネス面での一つの好例がトヨタとCPの連携で、お互いの強みを持ち合って、補完し合いながら最先端のビジネスを作り上げていく。このような連携がこれからの時代に求められる共創のあり方であり、タイが進もうとしている道に寄り添っていると思います。

もう一つの新たな連携がスタートアップと大企業とのマッチングで、新技術、異業種の組み合わせでイノベーションを加速させるのが狙いです。大使館もマッチング・イベントを積極的に企画・支援してきています。

また、急速に高齢化が進む中、タイの豊かな社会づくりに向けて、共に力を合わせていく、そのためのきめ細やかな協力をできることが日本の強みだと思っています。今年は日ASEAN友好協力50周年で、12月にはASEANの首脳を東京に招いて10年に1度の特別首脳会議が開催されます。日本とASEANが、次の50年に向けて、どういった付き合いをしていくのか、そのビジョンを打ち出すことが最大のテーマです。タイに限らず、ASEAN各国に対して、豊かな未来をつくる最も頼りになるパートナーとして日本の存在感を示すことができればと考えています。

TJRI編集部

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