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公開日 2024.09.02
在タイ日本企業に、採用の課題は常に付きまとう。「優秀なタイ人が集まらない」「せっかく採用しても、定着しない」などの悩みに頭を抱える企業が多い中、Jobsdb by SEEKが8月9日に公開した「Decoding Global Talent Survey 2024」では、タイ人の転職希望者の6割以上が海外での就業を希望していることが明らかになった。少子高齢化に加え、海外志向のタイ人の増加は、在タイ日本企業にとっても将来的な人材不足の懸念材料だろう。THAIBIZ編集部は、同リポートの結果を基に、SEEK in Thailandのマネージングダイレクター(MD)であるドゥアンポーン・プロムオーン氏にインタビューを実施。グローバル人材の確保のために日本企業が取り組むべき施策等について考えた。

目次
求職者と企業を繋ぐオンライン雇用プラットフォームであるJobsdb by SEEKとJobstreet by SEEKは、グローバルパートナーであるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)およびThe Networkと共同で「Decoding Global Talent Survey 2024」を実施。8月9日に、Jobsdb by SEEKが調査結果を公開した。同サーベイでは180ヵ国、約15万人の労働者から収集した情報を基に、グローバルおよびタイの労働市場に関するデータが示されている。
同リポートによれば、タイの人材の66%が海外への転職を検討しており、うち79%が若手のプロフェッショナル(専門性の高い人材)であり、特に法律、経営、IT分野などの人材における「頭脳流出」の傾向が見られる。彼らは海外への転職希望理由として「キャリアアップ」、「高い給料」、「グローバル経験の獲得」などを挙げている。
海外での勤務を望むタイ人にとって、在タイ日本企業を含むタイ国内の外資系企業への就職は、代替選択肢となりうるのだろうか。ドゥアンポーン氏は、「このリポートの文脈では、在タイ日本企業で働くことは、海外勤務の代わりとみなされるものではない。同リポートは、海外での勤務を、『移住』または『別の国での就職』と関連付けている」と回答。在タイ日本企業が、単に「外資系だから」という理由でグローバル志向の人材を惹きつけることは難しそうだ。
一方でタイは、グローバル求職者の人気目的地の一つだ。2018年の世界ランキングでは39位だったタイは、2020年に33位、2023年に31位と、年々順位を上げている。同リポートによれば、タイを目的地に選んだ理由として、「生活の質」、「フレンドリーで包容的な文化」、および「手頃な生活費」などが挙げられる。なお、2023年3月時点で、タイは270万人以上の外国人労働者を有しており、タイの労働力の7%を占めている。

ちなみに、目的地に関するタイ人の回答を見ると、シンガポール、オーストラリア、米国、中国などが人気だったが、気になる日本の順位についてドゥアンポーン氏に聞いたところ、「タイのプロフェッショナル人材の21%が日本を目的地として選び、日本はトップ5にランクインした」という。
グローバル転職を求めるタイ人が増える中、在タイ日本企業も将来の人材不足に備えなければならない。同リポートでは、タイ国内の企業は「タイでの就業に高い関心を持つ、シンガポールやマレーシアなどの近隣諸国の労働人口をターゲットにすることを検討する必要がある」と指摘している。
では、在タイ日本企業が、タイでの就業を目指して海外からやってくるグローバル人材に選ばれるには、どのような努力が必要なのだろうか。ドゥアンポーン氏は「Jobsdb by SEEKがタイの雇用主に一般的に推奨しているように、望ましい人材のプロフィール、スキル、能力を明確に設定した人材戦略計画の準備と実施をお勧めする。また、従業員価値提案(企業が従業員へ提供する価値)を見直し、刷新するとともに、生活の質、ウェルカムな文化、給料、生活費など、グローバル人材が重視する側面に重点を置くことが必要だ」とした上で、「ビザ、住宅、移住、オンボーディングなどのサポートは、企業がグローバル人材を大切に考えていることを示すためにも重要だ」と、グローバル人材を含めた求職者のニーズに沿った従業員価値提案の重要性を強調した。

さらに同氏は、「インクルーシブでウェルカムな文化の構築は、一体感の醸成と定着の鍵だ。具体的には、業務言語の一つとして英語を使用する、マネージャー向けの無意識バイアスに関するトレーニングプログラムを実施する、などの施策が挙げられる」と説明した。結局、在タイ日本企業に求められることも、明確な人材戦略計画や、国籍を問わず人材のニーズを踏まえた従業員価値提案、そして「ここで働きたい」と思ってもらえるようなカルチャー作りなのだろう。同リポートでも、「急速に変化する労働市場のトレンドを押さえ、常に人材獲得と定着のための調整に取り組むことが必要不可欠だ」と総括しており、継続的な組織努力の必要性を訴求している。
(執筆:白井 恵里子)

THAIBIZ編集部

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