THAIBIZ No.152 2024年8月発行タイ老舗メーカーのブランド再生術の極意
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カテゴリー: 対談・インタビュー
連載: 在タイ日本人駐在員の挑戦
公開日 2024.08.09
駐在員として来タイしたものの、地場企業との関わりが持てないまま、日本人社会だけで仕事が完結してしまっているケースは少なくない。「大手企業駐在員からスタートアップのタイ法人代表へ転身した今、タイ企業との連携に一層力を入れている」と話すのは、ゼロボードタイランドの鈴木慎太郎氏だ。
目次
当社は、2021年に設立された日本のスタートアップです。温室効果ガス(GHG)排出量算定・可視化ソリューション「Zeroboard」の開発・提供および、サステナビリティ経営に関するコンサルティング等を行っています。2023年3月に設立したタイ法人では、在タイ日本企業やタイ企業に対し、脱炭素化を支援しています。
さらには、東南アジアを牽引する脱炭素プラットフォームとなるべく、政府や地場企業とも連携しながらモデルケース構築に向けた準備も進めています。
私は新卒で大手プラントエンジニアリング会社にエンジニアとして入社し、海外駐在も経験しました。その後、大手総合電機メーカーで新規事業の立上げや海外展開に挑み、初めてタイに駐在。家族を含めプライベートでも住みやすい国であること、また豊富な事業機会とビジネスの面白さを理由に、帰任の指令後もタイに残ることを決意し、スタートアップのタイ企業に転職しました。
そしてある時、ゼロボード創業者である渡慶次と出会い、彼や本部長のビジョンに深く共感。スタートアップでありながら日本企業のサプライチェーン競争力向上に貢献ができる可能性に魅力を感じ、次なる挑戦として、タイ法人立上げのタイミングで入社を決めました。
新規顧客の開拓やパートナー探しにおいては、「如何にトップと接点を持てるか」が大切だと実感しています。以前、タイ企業の担当者と根気強く対話を重ね、1年かけてようやく役員を含めた打合せに漕ぎ着けたことがあります。しかし当日、担当者は一言も発せず、役員の意思決定に頷くのみ。「タイではトップダウンの構造が根強い」と痛感してからは、意思決定権のあるトップ層と話せる機会を模索し続けています。
トップ層と繋がる一つの方法として、公的機関などが開催するイベントへの積極的な参加が挙げられます。最近では、ありがたいことに日タイ政府主催の脱炭素イベントにご招待いただけることも増え、共に登壇するタイ企業の経営者などと接点を持てるようになりました。タイ企業と話す中で、日本企業の「信頼性」というアセットはまだ残っていると強く感じます。
スタートアップだからと言って軽く見られることはなく対等な会話が叶うのは、これまで数々の日本企業の先人たちがタイで信頼関係を築いてきてくれたからだと思っています。信頼を裏切らないことと、最速の意思決定スピードにより「日本企業は遅い」という固定概念を覆すことで、日本のスタートアップとしての強みを最大限活かしたビジネスを常に意識しています。
地場企業、特に各業界のリーダーである財閥や大手企業との連携を実現できたことです。タイでビジネスをする以上、やはり日系企業に加え地場企業ともパートナーシップを組み、彼らの取引先も巻き込んで、より広範囲に渡って事業を展開したいと考えています。そのため、各業界のコアとなる大手企業との連携に注力してきました。
例えば、不動産業界では大手上場企業であるSENA社にZeroboardを導入いただくだけでなくパートナーシップを組むことで、同社のみならず、取引先を巻き込んだ業界全体での脱炭素化支援を開始しました。オセロでは4隅を抑えれば有利にゲームを進めることができるように、私たちもGHG排出量の算定・可視化で各サプライチェーンのコアとなるパートナーと共に面を取りに行く戦略で事業を広げています。
パートナー戦略に基づきZeroboardの普及を進めていますが、決して市場を独占することが目的ではありません。サプライチェーン全体でのデータ連携に着手し始めた企業が増えており、データ連携の必要性も高まっているため、Zeroboard以外の類似プラットフォームともシームレスに連携できる仕様を整えることで、ユーザー企業同士の利便性を向上させることが重要であると考えています。
タイ法人の代表に転身してからは、より経営的な目線で物事を考えられるようになりました。社内外から「判断軸が定まっていない」「意思決定が遅い」と思われないよう、信頼性と意思決定スピードは常に意識しています。社内メンバーから承認や助言を求められた際には、その日中に結論を出すと決めており、これは以前の駐在員時代にはなかった信念です。一つ一つのスピード感ある意思決定が、タイ企業との連携強化にも繋がっていると考えています。
アジア発の脱炭素プラットフォーマーとしてサプライチェーン全体や工業団地など、点だけではなく面でも脱炭素化支援をすることで、まずは製造業が集積するタイで脱炭素ユースケースを組成していきます。このような先進的なユースケースの集合体が、今後地域のデファクトスタンダードになっていく可能性があると考えています。日本とタイで連携して、国際ルールを積極的に提案していくことで世界市場でのタイおよび東南アジア、そして日本企業の価値がより高まるはずです。
また、脱炭素化を啓発する人材の育成にも尽力していきます。脱炭素化の取り組みは、取引先の増加ひいては利益向上にも繋がります。なぜ脱炭素化に取り組む必要があるのか、特に中小企業に訴求していく必要があります。今後もビジョンの実現に向け、タイ企業との連携を強化しながらビジネスを広げていきます。
鈴木 慎太郎氏
Managing Director & Head of APAC Regional Business
Zeroboard (Thailand)Co., Ltd.
2014年、日揮株式会社にエンジニアとして入社し、中国とシンガポールの駐在を経験。2017年、日立製作所に入社。新規事業立上げの後、タイ法人へ出向。帰任のタイミングでタイのスタートアップ企業へ転職。2023年3月より現職。タイ駐在歴は4年。
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THAIBIZ編集部
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