ArayZ No.126 2022年6月発行ESG投資を呼び込むカーボンニュートラル
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カテゴリー: 特集
公開日 2022.06.10
タイ大手の商業銀行であり、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の子会社として連携を図るBank of Ayudhya PCL (Krungsri、以下クルンシィ)は近年、タイのESGファイナンス市場のパイオニアとして各所で話題を呼んでいる。
同行と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(以下MURC)が、今年4月に合同で開催したオンラインセミナーには、タイをはじめ日本やシンガポールの製造業、建設業、運輸業、金融業といった幅広い業界から200名を超える参加者が出席した。本稿では、同行でESGファイナンス事業を統括する2名による市場の現状と今後についての解説を紹介したい。
当行は創業78年目を迎えたタイの商業銀行であり、グローバル展開を叶える地域金融機関のリーディングカンパニーを目指し、日々事業に取り組んでいます。世界の潮流に伴い、近年はサステナブルな取り組みに注力しており、喫緊の目標としては「タイで最もサステナビリティを重んじる商業銀行になること」を掲げています。
それは同時に、ソーシャル・ディメンション(社会的側面)において負のインパクトを減らすことにも貢献していくことでもあり、その取り組みが評価され、2020年にはマイクロファイナンス・セグメントにおける商業銀行として初めて、アジア大手金融誌『FinanceAsia』が讃える「Best Sustainable Bank Award in Thailand」に選出していただきました。また19年には、アジア太平洋において初めてジェンダー問題に関わる債権を発行するなど、業界に新たな風を吹き込むべく様々な試みを行っています。
ESGファイナンス市場においては、18年にタイで初めて同商品の取り引きを開始しました。その年の発行総額100億バーツの達成を皮切りに売り上げは右肩上がりとなり、21年には約1740億バーツへと拡大しました(図表9)。
これは株主を筆頭とする多くの投資者が、同市場に高い関心があることが分かります。そして同市場の拡大へと繋がる取り組みの一つが、カーボンニュートラルです。MUFGは21年に、30年までの自社事業におけるネットゼロ・エミッション、50年までのファイナンス事業における同目標の達成を宣言しましたが、当行においても30年までの自社事業におけるカーボンニュートラル、50年までのファイナンシャル事業における脱炭素化を発表しています。
具体的な取り組みを挙げると、たとえば環境面では気候変動対策、エネルギーの効率化、廃棄物管理といった気候変動に関わるマネジメントを、社会面では人権や人材育成を、ガバナンス面ではCG(コーポレート・ガバナンス)やリスクマネジメントといった項目に関わるリスク回避などです。同時に、金融サービスプロバイダとして借入や融資などを含め、お客さまに対して責任ある行動に努める他、タイにおけるリーディングバンクの立ち位置をさらに強調していくために、サステナブルなファイナンス商品をさらに開発していきたいと考えています。
ここ10年ほどの間に、国際社会における気候変動への取り組みが急進しています。タイでは昨年、プラユット首相により65年までのネットゼロが宣言されましたが、この地球規模の目標を達成するために持続可能な取り組み支援として、当行をはじめとする金融セクターの関与が急務であると感じています。その実現に向け、当行ではMUFGが持つネットワークや現地の関係当局と密接に連携し、ESGファイナンス商品(以下ESG商品)を推進してきました。
その一方で、世界と比較するとタイ市場はまだ小規模と言えます(図表10)。
アジアに目を向けると、中国・日本・韓国がトップ3を占め、近年はシンガポールや香港も伸びてきています。タイはそれに追随する形となっていますが、ESGボンド市場においては過去4年間で高成長を遂げており、21年には約1740億バーツへと拡大しています。
当行における基本的なESG商品は、環境に配慮したプロジェクトに資金を提供するグリーンボンド、資金調達や再資金調達のためのサステナビリティボンド、社会的に有益な結果を得るための資金を提供するソーシャルボンドです。加えて、事前に設定したKPIの達成・未達成によって財務・構造も的特性が変化するKPI・SPIサステナビリティ・リンクドボンドも提供しています。これは他の商品と異なり、達成・未達成に対しては国際的な評価指標に則った審査により最終的な判断が下される流れになっています。
タイではすでにトヨタやPTT、SCG、RATCHグループといった大企業がESG市場への参入を目的として各カテゴリーの商品を購入しており、当行では市場投資に向けたアドバイスを含め、サポートさせていただきました。今後も市場の活性化が加速することが予想されますが、当行はその仲介役として皆さまの事業確立に貢献していきたいと思います。
Bank of Ayudhya PCL.
Senior Director , Co-Head of Division Business Solution Division JPC/MNC Banking
森 賢太朗
Tel: 02-352-3843
E-mail: [email protected]
550 Ploenchit Road, Lumphini, Pathumwan, Bangkok 10330
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THAIBIZ編集部
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