THAIBIZ No.148 2024年4月発行タイで成功する日系企業デンソーのWin-Winな協創戦略
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カテゴリー: 会計・法務
公開日 2024.04.10
タイは現在もなお世界でも有数の日系企業の進出先国である上、進出はしていなくても、タイの企業と取引している日本企業も多数存在する。取引先のタイの企業と揉めた場合、どのように対応すれば良いのだろうか。
日本と同様にタイでも、企業間の揉め事が話し合いで解決しない場合、弁護士を雇って交渉するが、商慣習の違いから、弁護士による話合いで迅速に問題が解決することは容易ではない。そこで、裁判(民事訴訟)を起こして法廷で決着をつけることになる。
タイの裁判の流れにおいて、日本と最も大きく異なる点の一つは、訴訟期日の少なさである。日本で裁判を行う場合、訴訟期日の数に決まりはないが、一般的には、第一回期日に訴状を陳述し、その後何度も期日を重ね、和解に至った場合を除き、判決という流れになる。民事第一審訴訟事件における全体の期日回数は平均で5回程度、証人尋問を実施した事件に限れば、平均12回程度とされている(「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)」最高裁判所)。日本では、訴訟期日のたびに、原告・被告双方の当事者が、(通常は交互に)準備書面という形で各自の主張を行うため、事件にもよるが、各当事者は、4回ないし5回、あるいはそれ以上の回数にわたって、主張書面と証拠を提出する。
一方、タイの裁判の場合、基本的な訴訟期日は、判決期日を含め3回のみである。第1回期日、証拠調べ期日、判決期日、というような流れであり、原告・被告の各当事者は、実質的には一度しか主張書面を提出する機会がない。日本での裁判のように、何度も主張を積み重ねることができないため、最初の主張書面、つまり原告にとっては訴状、被告にとっては答弁書において、ほぼすべての主張をし尽くさなければならない。このように、タイの裁判は、期日数が少なく、主張の機会が実質的に一度しか無いという点が日本とは大きく異なる。
上記のように、タイの訴訟期日は原則3回とかなり少ないため、裁判にかかる期間も、日本と比較すると若干短い傾向にある。とはいえ、日本の場合、各期日間の期間は1ヶ月程度であるのが一般的であるのに対し、タイの裁判では、各期日の間が2〜3ヶ月、ときには半年近く空いてしまうこともあるため、判決までにかかる期間は、1年から1年半程度となるケースが多い。ちなみに「日本企業がタイで裁判する場合は、タイ側に有利な判決が出るのではないか?」と聞かれることがしばしばあるが、筆者の経験上、タイの裁判所の判断に国籍によるバイアスはほとんど見られないと言って良い。
裁判にかかるコストは、裁判所に納める訴訟費用に加え、弁護士費用、その他郵送費等の雑費がかかる点は日本とほぼ同様である。裁判所に収める費用は、請求する金額や争いの対象となる物の価値等に応じて変わるが、請求額等が5,000万バーツ以下の部分についてはその2%(ただし、上限20万バーツ)、5,000万バーツを超える部分についてはその0.1%とされている。ただし、タイの裁判では、証拠書類を含め、裁判所に提出するすべての裁判資料をタイ語に翻訳する必要があるため、相応の翻訳費用がかかる可能性がある点に留意してもらいたい。また、証拠調べ期日において証人尋問等を行う場合も、日本人等が証言する場合には別途通訳を雇う必要があるので、その費用も勘案しなければならない。
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GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
代表弁護士
藤江 大輔 氏
2009年、京都大学法学部卒業、2011年に京都大学法科大学院を修了後、司法試験合格。2012年にGVA法律事務所に入所。 2016年より同事務所パートナー弁護士に就任し、2017年にバンコクでGVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.を設立、同代表に就任。2021年より大阪に弁護士法人GVA国際法律事務所を設立し、代表を兼任。
URL : https://gvalaw.jp/global/3361
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