名義貸し規制に関する告示の発出について

THAIBIZ No.174 2026年6月発行

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名義貸し規制に関する告示の発出について

公開日 2026.06.10

タイにおいて、外国企業の多くは株式の過半数をタイ人が保有するタイ法人という形態で設立・運営されている。しかしそのような企業の中には、タイ人による実際の出資を伴わず、彼らに名目的に株主になってもらっているだけ(名義貸し:ノミニー)という企業も存在する。

このような名義貸しは外国人事業法を潜脱するものとして違法とされるが、2025年11月号でも触れているとおり、近年、当局がその監視を強化しており、今年に入ってから複数の命令を発出している。本稿では、これらのうち主要なものを解説する。

外国人役員の就任時に「確認書」が必須に(命令1/2569号)

まず、役員変更手続きが厳格化された。株式会社の取締役や合名会社・合資会社(Partnership)の業務執行社員は、以下の登記申請をする際、商務省事業開発局(DBD)に対し、確認書を提出しなければならない。

株式会社:もともと署名権を有する取締役がタイ人のみであった場合において、外国人が単独または共同の署名権を有する取締役となる場合。

合名会社・合資会社:もともと社員全員がタイ人であった会社が、タイ法人という状態を維持したまま外国人が社員となる場合(つまり、外国人の出資割合が50%未満)、または、もともと外国法人であった会社がタイ法人となる場合(つまり、外国人の出資割合が50%未満となる場合)。

ただし、いずれの場合も、外国人が業務執行社員である場合を除く。また、この確認書では、以下の2点を宣誓しなければならない。

・全株主または全社員が実際に出資していること

・名義貸しを利用した事業運営ではないこと

設立時の「タイ人株主の資金証明」義務化(命令2/2568号)

新たにタイ法人を設立する場合、以下のいずれかに該当するときには、タイ人株主全員の過去3ヶ月分の銀行口座明細の提出が求められる。

・外国人の出資比率が50%未満である場合。

・外国人株主がいなくても、外国人が単独または共同の署名権を有する場合。

これにより、タイ人株主が実際に自らの資産で出資しているか(外国側からの資金提供ではないか)が厳格にチェックされる。

その他の監視の強化

その他の命令(3〜5/2568号)でも、監視の網が広げられている。

特定のリスクがある場合:マネーロンダリング対策事務局(AMLO)の監視対象者や、政府の福祉的支援が必要な低所得者が株主、役員、または取締役となる場合、本人がDBDに出頭することや資金に関する証明書類の提出が求められる。

登録住所の確認:同一住所に5社以上の法人が登記されている場合、賃貸借契約書等の使用権原を証明する書類の提出が必要となる。

警察等との連携と刑事罰

今回の監視強化においては、DBDは警察等とも連携し、不審な案件を刑事事件として追跡する体制を整えている。また、虚偽報告があった場合などには、刑法や外国人事業法に基づき、罰則が適用される恐れもある。

最後に

以上のとおり、タイ当局はこれまで以上に実態を重視し、名義貸しの問題に対応することが予想される。また、今後はさらなる命令や告示が発出される可能性もあるため、引き続き動向を見守る必要がある。

>>本連載「知らなきゃ損する!タイビジネス法務」の記事一覧はこちら

GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
弁護士

靏 拓剛 氏

2009年に福岡市内の法律事務所に入所し、様々な業種の企業に対し、企業間取引への指導助言、法務監査、紛争処理等の法務サービスを提供。2020年より自身の活動をアジアへ拡大すべく、GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.に移籍(日本国内ではGVA国際法律事務所に弁護士として所属)。現在は、GVAグループの一員として、タイにおける紛争対応を中心に、事業展開を法務面から支える。

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