ArayZ No.136 2023年4月発行ASEAN-EV市場の今〜タイ・インドネシアEV振興策および主要自動車メーカーの戦略〜
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カテゴリー: 会計・法務
連載: New*GVA / TNY法律事務所 – タイビジネス法務
公開日 2023.04.10
前回(本誌2月号)の記事では、海外商標出願に関するマドプロ出願(1通の願書で、複数国に対して同時に商標出願するのと同等の効果を得ることができる制度)について、メリット・デメリットを中心に概略を解説した。
今回は、それを踏まえた上で、マドプロ出願を選択すべき場合・選択すべきでない場合、それぞれについて解説する。
目次
多くの国(例えば4~5ヵ国以上)に同一の商標を出願する場合、マドプロ出願は非常に有用であり、検討する余地がある。
これは、以下のメリットを大きく享受できるためである。
• 各国ごとに必要となる指定商品等の翻訳費用や、現地代理人手数料等を大幅に削減することができる
• 各国の商標権の権利期間が国際登録日を基準に10年間と一律に定まるため、商標権について一括して期限管理ができる
逆に、1~2ヵ国程度しか出願をしない場合、それぞれの国に直接出願するほうが無難である場合が多い。前回、マドプロ出願のデメリットとして述べたが、マドプロ出願を行う場合、国際事務局に手数料を納付する必要があり、その費用が余計に生じる分、出願費用がかさんでしまうためである。
また、審査が比較的厳しい国を中心に出願する場合は、それぞれの国に直接出願するほうが良い場合もある。マドプロ出願のメリットの1つに、「拒絶理由通知を受けることなく登録になった場合、現地代理人費用が不要になる」というものがあるが、拒絶理由通知を受ける可能性が高い場合は、この恩恵を受ける可能性が低くなってしまうためである。
上記を踏まえると、出願する国が少なくても、事前の調査等により拒絶理由通知を受領する可能性が極めて低いと考えられる場合(=拒絶理由を受けることなく登録になることが見込める場合)は、マドプロ出願を検討する余地はある。
その他、マドプロ経由での出願を中国に行う場合、現地代理人を通じて請求しなければ登録証を受領することができない。そのため、中国での権利取得を目指す場合において、登録証が必要な場合は、マドプロ出願をした場合でも別途費用が必要となる点に注意が必要である。
中国に関しては、ECサイトへの出品時等に商標登録証の提示が求められることがあるため、極力、登録証を取得しておいたほうが望ましいという点に留意しておく必要がある。
タイにおける商標審査は、以下の特徴を有する。
他国では「識別力がある」とされる商標であっても、タイでは「識別力を欠く」と判断される場合が多いように思われる。
例えば、出願した商標を構成する単語が「ある国においては指定商品と関連性を有する単語」であるが、出願する国の一般需要者には全く浸透していない場合、日本や他の国においては登録となる余地がある。しかし、タイにおいては、審査官が辞書等を根拠にかなり厳密に審査を行い、拒絶理由通知を発する可能性が高い。
タイにおいては、日本及び他国では認められる「包括表示による指定商品の記載」が認められない。例えば、日本においては指定商品「化粧品」が受け入れられるが、タイにおいてはこのような記載は受け入れられず、「口紅」「洗顔クリーム」「マスカラ」等具体的に記載する必要があるというような形である。タイにおいて商標を出願する場合、指定商品を可能な限り細分化して表記しておく必要がある。
このように、タイは比較的審査が厳しい国に該当する。これはすなわち、予期せぬ拒絶理由を受領する可能性が高いということであり、タイはどちらかというとマドプロ出願向きの国ではないということになる(同様に、アメリカ等も拒絶理由受領の可能性が高い)。
しかしながら、事前の調査や工夫により、登録可能性が高いと思われる願書案を作成できればこの問題は克服可能といえる。例えば、先に述べた通り、指定商品役務を可能な限り細分化する、あるいは、すでに過去に登録となっている表記を採用する等である。
タイにおいてマドプロ経由での出願を行う場合、上記を前提に、基礎出願の段階から指定商品役務を吟味しておく必要があるといえる。
TNY国際法律事務所
日本国弁護士・弁理士
永田 貴久
京都工芸繊維大学物質工学科卒業、2006年より弁理士として永田国際特許事務所を共同経営。その後、大阪、東京にて弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所を設立し代表社員に就任。16年にタイにてTNY Legal Co., Ltd.を共同代表として設立。TNYグループのマレーシア、イスラエル、メキシコ、エストニアの各オフィスの共同代表も務める。
Email : [email protected]
URL : http://www.tny-legal.com/
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THAIBIZ編集部
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