カテゴリー: 自動車・製造業
公開日 2023.07.09
繊維産業から出発し、日本を代表する大手化学メーカーへと成長を遂げた東洋紡。1950年代の東洋紡グループ会社のタイ市場進出を皮切りに、エンジニアリングプラスチックのペレット生産・販売のほか、不織布、フィルター、フィルムなどによりタイ国内及びASEAN地区向けでの販路拡大を進めている。用途としては、タイの基幹産業である自動車生産や家電などはもちろんのこと、食品加工、包装容器など多岐にわたる。あらゆるモノづくりの根幹を支える基幹産業だ。コロナ前の規模に戻ったManufacturing Expo 2023には、昨年に続き2度目の出展。販路の拡大を目指した戦略的選択だった。アフター・コロナの市場をどう見るのか話を聞いた。
INTERVIEWEE
TOYOBO (THAILAND) CO., LTD.
Engineering Plastics Department Manager
太田 恵 氏
日系企業のポテンシャルが極めて高いタイ市場ではありますが、更なる販路拡大のためには、タイローカルを含めた非日系サプライチェーンにどのように食い込んでいくかが鍵となります。そのための営業を展開し、どこかに新規事業の糸口がないかを絶えず探していく努力を続けています。出展の第一の目的はその点にありました。
会場のブースには、昨年から「コンセプトバイク」を展示し、新しい提案を試みました。フィルター、クッション材など既存用途の他に、昨今注目を集める非接触充電部品の開発に、熱伝導素材や耐衝撃スタンパブルシートなどの当社素材がお役に立てるのではないかというコンセプトです。感触はよく、手応えを感じることができました。
出展企業の中で特に勢いを感じたのが、中国企業の存在です。今年のManufacturing Expoの最大の特徴と言ってもよいかもしれません。政府も後押しするタイ電気自動車(EV)市場の急速な拡大。中国メーカーは我を先にとタイ進出を続けています。
他の諸外国と異なるのは、中国勢はいったん進出を決断すると動きが速く、しかも大挙してタイを目指すという点です。サプライチェーンが丸ごと大陸から移転してくるといった印象です。こうした機動的で急速な動きに対し、ともすれば我々は傍観しがちです。そのような一角にも食い込んでいけるような地道な努力を続けていなければならないことを実感しました。
国際競争が激しくなる中で、しっかりと自社製品の特性をアピールしていきたいと考えています。台頭をしてきた新興国の競業メーカーの中には、何割も安い価格で当社の市場を脅かす存在も散見されるようになりました。こうした新興勢力にも真っ向から勝負しながら、単なる価格競争に陥らないための戦略が必要と考えています。
その一つが「機能」で勝負するという考え方です。例えば、当社は、その他エンプラ材料メーカーと比べて、強度及び剛性が高く、且つ良外観を保持できるグレードを数多くラインナップしています。こういった素材をお客様の設計される部品に提案する事で、金属代替及び部品点数削減による軽量化・コスト低減で貢献できると考えております。市場の拡大や所得の向上は、安さ以上に質を求めるようになります。品質の差別化で勝負に挑みたいと考えています。
前任は、栃木県の宇都宮営業所で国内営業を担当していました。当社のような素材メーカーは、自動車産業などモノづくりに携わる企業のすぐ近くで製品やサービスを提供しなければなりません。宇都宮にも著名な自動車メーカーの研究所があり、それに関わる様々な部品メーカーと商談を続けてきました。こうした営業活動の中で、提案力の必要性を身に付けることができました。
海外勤務については希望していましたが、タイ赴任は予想外でした。部品メーカーの材料決定権が日本にあり、タイで提案した内容がすぐに実にならないなど、仕事のうえではもどかしさを感じることもありますが、これまで知る機会のなかった取引先と出会えるというダイナミズムも感じています。
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