ArayZ No.135 2023年3月発行タイ会計・税務・法務〜民法改正・LTRビザ・租税条約改正等もQ&Aで解説〜
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公開日 2023.03.10
みずほ銀行バンコック支店メコン5課が発行する企業向け会報誌 『Mekong 5 Journal』よりメコン川周辺国の最新情報を一部抜粋して紹介
東南アジア各国が「ウィズコロナ」に舵を切ったことで、人の往来が再開されてきていることを日々実感している。筆者が駐在しているタイでも日本やシンガポールから連日ビジネス出張者を迎えている。タイに地域統括会社・マザー工場を保有している企業の中には、コロナ前に検討していた「タイ+1」の方針のもと、改めてタイから近隣諸国のグループ会社へのサポート強化、あるいは現地プロジェクトへの参画等を検討している企業もあるのではないだろうか。
このように海外ビジネスを強化するなか、海外への支払いを行う際に「出張時の経費について地場通貨建てで請求を受けている」「国外プロジェクトにおいて現地ビジネスパートナーから地場通貨建ての支払いを求められている」といった事態が増えることが予想される。本稿では海外への支払いに規制通貨を用いる際の検討すべきポイントを整理してみたい。
本章ではメジャー通貨(米ドル)による送金と相手国通貨での送金の比較を通じて、どのようなケースにおいて相手国通貨で送金をすることにメリットがあるのか考えてみたい(図表1)。
たとえばタイ企業がベトナム企業から米ドル建ての請求を受けるケースを想定する。ベトナム企業の立場では、サプライヤーへの支払いが主にドン建てであるならば、受け取った米ドルをベトナムドンへ両替してベトナムドン口座に入金することがあるだろう。仮にベトナム企業が米ドルとベトナムドンの両替コストを織り込んだ価格提示を行っている場合、タイ企業にとっては、見えないところで価格にコストが上乗せされている可能性がある。
上の事例でタイ企業がベトナム企業からベトナムドン建ての請求を受けるケースを想定した場合、ベトナム企業にとっては両替コストを負担することなく、ベトナムドンを受け取ることができる。タイ企業としてはベトナムドン建ての支払いに切り替えることで、ベトナム企業から有利な取引条件を引き出す交渉をすることも可能となる。一方で、今度はタイ企業がタイバーツとベトナムドンの両替コストを負担することが必要となる。
タイ企業にとっては、不慣れなベトナムドンを取り扱いすることになるが、米ドル建ての支払いを行うケースと比べて、自前で両替コストを決定することができるようになる。
実際に取引相手国の通貨で送金を行う場合、当該通貨の規制に注意が必要である。とりわけアジア各国・地域では非居住者の自国通貨の取り扱いについて、様々な送金や為替の規制を導入している(図表2)。
図表2の内容はあくまで規制の一部である。各銀行では現地支店やパートナー銀行、各国中央銀行からの情報を利用し、各通貨の規制や為替相場動向の情報提供をお客様へ行っている。もし、海外の取引相手との間で支払通貨の条件交渉を検討するのであれば、先ずは取引金融機関へ相談することをおすすめしたい。
規制通貨を送金する際には、ドル・ユーロ・円などを送金するときと比べて予想以上に時間を要する可能性があるため、余裕を持ったタイムラインを想定しておく方がよい。
取り扱いが多い主要な通貨について、金融機関は送金日の2営業日ほど前までに送金依頼をするように案内しているケースがよく見られる。しかしながら、規制通貨の場合、当該通貨の取り扱い有無、前述のような通貨規制の確認、規制対応のための書類チェックなどで通常よりも時間を要することが見込まれる。
加えて、一部の通貨は金融機関で取引されるボリュームが相対的に少なく、現地取引時間外は取引量がより一層減少することから、為替レートが変動しやすい傾向にある。通貨ごとに定められる祝日も考慮しなければならない。したがって、不慣れな通貨を扱う際は、取引金融機関と相場動向をよく見ながら、送金タイミングを決めることをおすすめしている。
企業のグローバル展開、また通貨のニーズの多様化に合わせて、各金融機関も取扱通貨の拡充に努めてきた。先述のベトナムドン建て支払いのケースのように地場通貨建て送金を活用することで、総合的な取引条件良化を実現できる可能性もある。
しかしながら、規制通貨を送金する際には規制や相場、タイムラインなど留意すべき点が多いため、事前に取引金融機関へ確認を行う必要がある。地場通貨建て送金についてお困りの際には、お気軽に取引金融機関の担当者へご連絡ください。
ArayZ No.135 2023年3月発行タイ会計・税務・法務〜民法改正・LTRビザ・租税条約改正等もQ&Aで解説〜
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