在タイ日系企業に必要なマインドセット

THAIBIZ No.154 2024年10月発行

THAIBIZ No.154 2024年10月発行なぜタイ人は日系企業を選ぶのか

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在タイ日系企業に必要なマインドセット

公開日 2024.10.10

私はこれまで7年以上にわたり、在タイ日系企業の日本人およびタイ人従業員向けに研修を実施してきた。研修目的は、両国の文化や価値観、コミュニケーションの違いを体系的に学ぶことで相互理解を深め、企業活動を円滑にすることだ。今回は、9月に実施した「日本人を知る」研修に参加したタイ人従業員へのアンケート結果(有効回答者数:107人)をもとに、在タイ日系企業に求められるマインドセットを読み解く。

ハイコンテクスト文化の落とし穴

今回のアンケート回答者の属性は、61.7%が日系企業で6年以上勤務するタイ人であり、その多くが日本人駐在員の交代を経験している。長年日系企業で働くタイ人は、日本人の働き方や特性を理解しているにも関わらず、49.5%が日本人駐在員に対して「タイ人の仕事に対する価値観や考え方を理解して欲しい」と考えている。

この課題は、研修開始当初から変わらず上位に挙がっている。一方日本人向けのアンケートでは「タイ人の仕事に対する価値観、ものの考え方の違いについて課題や悩みを感じている」が常に上位に挙がっており、日系企業におけるタイ人と日本人の相互理解の不足は、依然として解決すべき重要な課題だ。

欧米諸国と異なり、タイは日本と同じ「ハイコンテクスト文化」であるため、率直な意見交換をより困難にさせているが、そのギャップを認知し、「溝を埋める」取り組みが行われていないことが原因の一つといえる。

ボトムアップVSトップダウン

さらにタイ人従業員の日本人駐在員に対する要望として「仕事の指示をより具体的に、明確にして欲しい」(37.4%)、「タイ人の価値観に合った職場の雰囲気作りをして欲しい」(30.8%)も上位だった。日本では「合意思考」を重視し、ボトムアップでの意思決定が一般的だが、タイではトップダウンが主流で、この違いが仕事の進め方や職場環境におけるギャップを生んでいる。

欧米の経営学を主体としたタイの経済メディアでは、「組織(Organization)の語源は臓器(Organ)である」とした上で、「臓器(Organ)は脳の指令で動くからこそ、頭脳である経営者・上司は、臓器(組織メンバー)を正常に活動させるために指示を明確にし、職場の雰囲気作りに積極的に関与することが、組織運営において重要である」と指摘している。

タイ人が学びたいこと

同アンケートの「タイ人が、より効率的に働くために自身が学ぶべきだと考えること」という設問に対する回答の1位は「日本企業の考え方や日本式経営について学びたい」(46%)、2位が「自分の意見を伝えることや、提案することについて学びたい」(45%)だった。

日本人駐在員から「タイ人は自分の意見を言わない」という悩みをよく聞くが、同アンケート結果からタイ人従業員も実は改善したいと考えているということが読み取れ、両者とも課題は理解しているものの相互理解が十分にできていないまま、共に働いているということになる。日本人とタイ人の「溝を埋める」活動は、特集「なぜタイ人は日系企業を選ぶのか」もぜひ参考にしてほしい。

成長機会としての海外駐在

海外駐在は日本人にとって「グローバル人材」として成長する絶好の機会である。しかし、その機会を十分に活用しきれていない日本企業や日本人が多いのではないか。それは、駐在員のキャリア形成を意識したカリキュラム不足も原因の一つとして考えられる。駐在生活を有意義なものにするためには、「パフォーマンスを上げる立ち上げ期間を短縮することや、目的と目標意識を持つ」ことが重要であり、そのための知識やノウハウをTHAIBIZは今後も積極的に発信していきたい。

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Mediator Co., Ltd.
Chief Executive Officer

ガンタトーン・ワンナワス

在日経験通算10年。埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ帰国後の2009年にMediatorを設立。政府機関や日系企業などのプロジェクトを多数手掛けるほか、在タイ日系企業の日本人・タイ人向けに異文化をテーマとしたセミナーを実施(延べ12,000人以上)。2021年6月にタイ日プラットフォームTJRIを立ち上げた。

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