「タイ、米国関税19%で合意、0%関税も提案」「BOI、関税発表も5つの強みで投資誘致に弾み」

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「タイ、米国関税19%で合意、0%関税も提案」「BOI、関税発表も5つの強みで投資誘致に弾み」

公開日 2025.08.15

8月1日付のクルンテープ・トゥラキットによると、タイ政府は米国との関税交渉の結果、今年8月7日以降の輸出品に対する新関税率を19%で合意したと発表した。ASEAN諸国とほぼ同水準であり、長期投資計画を持つ企業にとって見通しを立てやすくなる成果とされる。

一方で、タイで生産されていない積み替え(トランスシップメント)品や現地調達率が低い製品には、最大40%の関税が課されるため、タイ政府は今後、生産拠点としての質の担保を強化していく方針だという。

同時にタイ側は、①豚肉、②大豆・とうもろこし、③航空機、④原油、⑤液化天然ガス(LNG)など、米国産品の一部輸入関税を0%にする提案を提示。豚肉は消費量の1%未満に限定、大豆・とうもろこしは100〜200万トン規模で、航空機は10年かけて80〜90機を導入する計画だ。

(イメージ画像)

さらに、国内産業の競争力を高めるため、政府は100億バーツの予算を承認済み。企業の資金繰り支援や技術改善など、雇用創出を条件にインフラ投資を推進する。財務省は、GDP成長率2.2%と予測するが、上方修正には至っていない。同省は「成長の鍵は構造改革と付加価値の創出」と位置づけている。

ピチャイ副首相兼財務相は「交渉の終了は始まりに過ぎない。今後は競争力をいかに高めるかが本質的な課題だ」と述べ、タイ中小企業(SME)のサプライチェーン参入や地域産業の活性化に向けた取り組みを加速させる意向を示している。


8月1日付のネーションによると、タイ投資委員会(BOI)は19%の米国関税について、投資家への説明を強化している。BOIのナリット事務局長は、当初提示された36%からの引き下げはピチャイ副首相兼財務相率いるタイ外交チームによる成果と評価し、「この税率は周辺地域内で依然として競争力があることを示している」と強調した。

BOIは現在、外国資本誘致に向けて「タイ投資における5つの強み」を掲げている。

(1)質の高いインフラ:工業団地や物流、深海港、国際空港、安定した電力供給(再生可能エネルギー含む)。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)やGoogleもハイパースケールのデータセンターを設置。

(2)統合されたサプライチェーン:自動車、電子機器、電気製品、石油化学、化学品、機械・装置などの産業クラスターが東部に集中。コスト削減と効率化を図る。

(3)労働力の強さなど:エンジニア、技術者、熟練労働者の基盤が厚い。28万人の高度技術人材の育成計画(2028年まで)も。外国人向けスマートビザ・長期滞在ビザも導入。

(4)政府支援:電動自動車(EV)・半導体・バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済分野などへの税優遇や再生エネルギー調達の支援、サプライチェーン連携支援プログラムなどを展開。

(5)市場アクセス:優れたインフラと物流網により周辺地域へのアクセスが良好。現在24ヵ国と17本の自由貿易協定(FTA)を締結済み。欧州連合(EU)、カナダ、韓国とも交渉中。

また、BOIが特に注力する分野は、EV、半導体・先端電子、BCG経済、デジタル・人工知能(AI)産業、国際ビジネスセンターの5つ。これらの分野において高付加価値型の産業構造転換を進め、外国企業に対する優遇措置も拡充していく方針だという。


タイとカンボジアの国境紛争により、陸上輸送や国境貿易に支障が出ている。7月31日付バンコク・ポストが伝えた。タイ商務省によれば、従来カンボジア経由でベトナムなどへ向かっていた物流は、現在海上輸送やラオス経由のルートへと切り替えが進んでいる。

国境閉鎖が長期化すれば、カンボジア市場におけるタイ製品が他国製品に置き換えられる恐れがあるとされ、すでに企業の一部は一時的な取引停止に踏み切っているという。1〜5月のカンボジアとの国境貿易は807億バーツ(+11.2%)に上り、うち輸出は631億バーツ(+9.0%)、輸入は177億バーツ(+20.0%)。ただし6月以降の閉鎖で、年末まで続けば600億バーツ以上の貿易損失が見込まれている。


7月28日付バンコク・ポストによると、ペートンタン首相率いるタイ貢献党(プアタイ党)政権が発足から1年を迎える中、専門家や産業界からは経済政策に対する厳しい評価が相次いでいる。

現政権は現金給付や観光支援などの政策を打ち出してきたが、タイ開発研究所(TDRI)のノナリット・ピソンヤブット研究員は「給付ばかりで、構造的な改革はまったく進んでいない」、タマサート大学のキアットアナン・ルアンゲーオ経済准教授も「経済成長、雇用、格差是正といった基礎的指標に目立った改善は見られない」と指摘する。

観光業界では「国の安全イメージ改善が遅れており、国境問題対応も不十分」、ホテル・レストラン業界からは「政策策定に現場の声が反映されていない」と不満が高まる。また、最低賃金を600バーツへ引き上げる法案の影響で価格上昇が先行し、中小企業(SME)への圧迫要因となっているとの声も上がっているという。

一方、デジタル政策ではAI国家戦略委員会の設置など一定の進展が見られるものの、スキル人材の不足や外国投資の規制、サイバー攻撃への脆弱性といった課題は依然として深刻だ。

タイの政治の不安定さは外国投資の停滞を招く要因ともなっており、タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ会長は「政権運営の信頼性回復が急務」と警鐘を鳴らしている。

THAIBIZ編集部
サラーウット・インタナサック

THAIBIZ編集部
タニダ・アリーガンラート

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和島美緒

THAIBIZ編集部

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