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カテゴリー: ビジネス・経済
公開日 2025.05.23
タイ政府は首都バンコク近郊のスワンナプーム国際空港に統合型の機材整備施設を建設する計画を明らかにした。既に敷地の一画に土地を確保した。多様な整備に対応できる体制を築いて一段の投資誘致につなげる。官民連携(PPP)方式で進め、東南アジア域内の一大拠点にする構想を描く。航空貨物産業の外資規制の緩和も進めていく方針を示した。
政府は現在、航空ハブ(拠点)政策の策定を進めている。整備・修理・分解点検(MRO)施設や人材育成センターの建設、航空貨物産業の規制緩和などが含まれる。機材整備施設は機材や部材、設備、部品の点検・保守を一貫して取り扱う統合型を想定している。
運輸省傘下の民間航空庁(CAAT)のマナト長官は、機材整備施設は航空産業のハブとして競争力を高めるには欠かせないインフラだと説明する。一方でスワンナプーム国際空港の運営は約19年間にわたっているものの統合型の施設はまだ設けられていないと指摘した。
機材整備は現在、航空会社や関連企業が個別に対応していることが多いようだ。自国で対応できる能力が高まれば点検作業などのリードタイムが大幅に短くなり機材繰りの改善も見込まれる。航空便の利便性の向上により一段の外国人観光客の増加につながるほか、外資航空会社からの保守受注も期待できそうだ。
スワンナプーム国際空港で建設する統合型の機材整備施設は、空港内の一画に土地を確保し同空港の基本開発計画にも盛り込まれている。今後は具体的な運営に向けた計画を作成する。
事業は官民連携で進める計画で、タイ企業が主導することを見込む。民間航空庁のマナト氏によると、既に複数の航空関連企業が関心を示している。外資では航空機材製造の世界大手である米ボーイングと欧州エアバスも投資に前向きという。
機材整備で世界大手のシンガポール・テクノロジーズ(ST)エンジニアリングも機材整備の業務をチャンギ空港から移転することに関心を示したようだ。土地のリース費用が上昇しているためコストの低減を模索している。
ドイツ航空大手ルフトハンザの機材整備部門ルフトハンザ・テクニックは拠点を構えるフィリピンからの撤退を検討している。マニラ首都圏のニノイ・アキノ国際空港(NAIA)の運営民営化後に賃料が約10倍に跳ね上がったことが背景にあり、タイに施設ができれば選択肢になる可能性もある。
タイ国内では東部ラヨーン県のウタパオ空港に航空機の整備施設を設置する計画が進んでいる。スワンナプーム国際空港の施設は短期間で中度まで、ウタパオ空港の施設は長期で高度な修理・点検に対応できるよう機能分散を図る。
インド系調査会社モルドール・インテリジェンスによると、東南アジア地域のMRO市場は2030年に75億5,000万米ドル(約1兆1,200億円)と25年比で33.4%拡大する見通し。年平均で5.9%成長が見込まれる。国別ではシンガポールが先行し、インドネシアやマレーシア、タイが追いかけている。
政府は機材整備施設のほか、航空産業の振興に向けて大型の人材育成センターの開設も計画している。日本の大手航空会社の施設を手本にする。
航空貨物部門の投資誘致の拡大にも動いている。外資規制の上限を現在の49%から緩和する方向で検討している。1年以内の調査完了を予定している。
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