ArayZ No.119 2021年11月発行コロナと観光業 in タイランド
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カテゴリー: ASEAN・中国・インド, 会計・法務
連載: ONE ASIA LAWYERS - ASIAビジネス法務
公開日 2021.11.09
2021年5月24日、取引競争委員会より「中小企業が商品販売者またはサービス提供者である場合の与信期間に関するガイドライン(以下、本ガイドライン)」が発布されました。
本ガイドラインは取引競争法第57条の下位規範として、中小企業が取引先に提示される不当な与信期間により被り得る不利益を回避し、中小企業を保護することを目的に制定され、中小企業と取引を行う全ての事業者に対し、施行開始日である21年12月16日により適用されます。
本ガイドラインで保護される中小企業は以下の通りとなっています(本ガイドライン第2条)。
(1) 200人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が5億バーツ以下の製造者
(2) 100人以下の従業員を雇用する、または年間売上高が3億バーツ以下のサービス提供者、卸売業者または小売業者
なお、中小企業は取引先に対し、本ガイドラインが定める中小企業に該当することを従業員数または売上高を証明する書類の提示をもって、証明する必要があります(本ガイドライン第4条2項)。
中小企業と取引を行う企業は定期的(契約締結時または更新時など)に当該書類の提出を求め、本ガイドラインが定める中小企業に該当しているかを確認することが好ましいと考えます。
中小企業が一般的な商品販売者、商品製造者、サービス提供者である場合、与信期間を45日またはそれ以下に設定しなければなりません。
ただし、中小企業が農産物または農産物の加工品(製造工程が複雑でないもの)だけを取り扱う商品販売者、商品製造者、サービス提供者である場合、与信期間を30日以下に設定する必要があります(本ガイドライン第4条(1))。
つまり、既に上記より長い与信期間での合意がなされている場合でも、原則として本ガイドラインの施行開始日前までに改定する必要があります。 なお、ビジネス、マーケティング、または経済的な観点から合理的であるとみなされる場合は、上記の与信期間より長く設定することも可能であると規定されています(本ガイドライン第4条2項)が、例外として認定されるかはケースバイケースで担当官の判断に委ねられると考えます。
取引競争委員会に照会したところ、取引先の親会社の規定で与信期間を60日に設定しなければならない場合でも、例外としては認められないとの回答を得ています。
上述した与信期間の起算日は、中小企業が商品を納品またはサービスを提供し、かつ納品書や請求書等の必要書類を提出した日となります。
商品の納品後、請求書が後日発行されるような場合は、請求書の発行日が起算日となります。また、委託販売の場合は中小企業による商品販売日が起算日となります(本ガイドライン第4条(2))。
本ガイドライン第5条において、違反とみなされうる行為として以下の行為が挙げられています。
• 商品またはサービスの代金支払時期が、正当な理由なく、本ガイドラインで定めた与信期間より遅れること。
• 正当な理由や60日以上前の事前通知なく、契約で定めた与信期間または支払条件を変更すること。
• その他の不当行為。例えば、契約上で与信に関する特別条項を規定し、中小企業に不要な負担を強いること。
本ガイドラインの違反者は、違反を犯した年の売上高の10%を超えない額の罰金を科される恐れがあります(取引競争法第82条)。
One Asia Lawyers 大阪オフィス・タイオフィス兼務
藤原 正樹
知的財産権、ソフトウェア・IT法務を扱う日本の法律特許事務所に13年間在籍し、企業からの相談や訴訟案件に数多く対応してきた実績がある。2020年からはタイのPDPA、IT領域を中心としたタイ国内の企業法務やM&A、債権回収などに関するリーガルサポートを提供している。
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THAIBIZ編集部
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